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[ 本格/新本格 ] 日本扇の謎 作家アリス&火村シリーズ |
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有栖川有栖 | 出版月: 2024年08月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
講談社 2024年08月 |
講談社 2024年08月 |
No.1 | 7点 | HORNET | 2024/09/10 20:59 |
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記憶をなくした青年が京都の海岸で発見された。身元を示す手がかりとなるのは持っていた扇だけ。そこから「武光颯一」という名が分かり、実家に帰った青年だったが、その後しばらくしてその家で密室殺人事件が起こる。いったい事件の背景には何があるのか―臨床犯罪学者・火村英生と助手の有栖川有栖は、いつものコンビネーションで謎の解明に向かうが……
息つく間もなく次々と殺人が起こったり、物語が急展開したり、なんていう凝った仕掛けもなく、起きた事件を淡々と、地道に捜査する至ってオーソドックスな基本形のフーダニットなのに…なぜこんなに読ませる?この作家を私がイチオシで好きなのも、変化球だらけの昨今のミステリ界で、構えずに落ち着いてストレートな「本格」を楽しめるからなのだろうと思う。 <ネタバレ> 密室の謎は、現実的であると同時に拍子抜け。とはいえ、物語の核はあまりそこになく、記憶喪失の青年・颯一の真実や、武光家の内実にあるため、そのことによる失望は特にない。最後の真相まで読んで、やはり出色のトリックや仕掛けがあるわけではないのだが…優れた筆者の文章と、物語全体を覆う謎めいた雰囲気に満足できる。 冒頭で颯一を発見した女性教師が、もう少し物語に絡んでくるのかとも思ったのだが…そこがやや肩透かしを食った点。 とはいえ、3,500円の「愛蔵版」を買ったものの、(ファンだからというのが大きいが)満足できた。 |