海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ 短編集(分類不能) ]
おかしなことを聞くね
ローレンス・ブロック 出版月: 1992年12月 平均: 8.00点 書評数: 2件

書評を見る | 採点するジャンル投票


早川書房
1992年12月

No.2 7点 kanamori 2014/07/12 11:06
"ローレンス・ブロック傑作集”の1巻目。古書店の均一棚で拾ってから、ポツリポツリと読んでいるうちに数編を残したまま忘れ置かれていた一冊。Tetchyさんの投稿を見てあわてて読了しましたw

マット・スカダーが登場する「窓から外へ」は、馴染みの”アームストロングの店”のウェイトレスが墜死した事件をスカダーが追う(エドワード・ホックなら不可能犯罪モノにしそうな設定の)私立探偵小説。くせもの揃いの本書の収録作品群のなかでは、真っ当すぎてそれほど印象に残らないが、ファンならもちろん見逃せない。
泥棒探偵バーニイが登場する「夜の泥棒のように」は、長編とは趣向を変えた第三者の視点によるプロットが、ラストのオチをより効果的にしている。
悪徳弁護士マーティン・エイレングラフのシリーズは、短編で散発的に発表されているだけなので、ブロックのレギュラーキャラクターの中ではメジャーではないが、初登場の「成功報酬」で強烈な印象を残す。”目的のためには手段を選ばず”とはいっても、これは”悪徳”どころの次元ではないねw(当シリーズの作品は、続く2、3巻目にも2作づつ収録されているらしい)
以上はシリーズものですが、本書の真髄はノン・シリーズ作品群のほうにあると思う。
そのなかでは、絶妙な語り口と先の読めないヒネッた展開、後に残りそうなブラック過ぎるラストなどで、「食いついた魚」「あいつが死んだら」「おかしなことを聞くね」の3編を推します。

No.1 9点 Tetchy 2014/07/11 23:53
今や短編集ではジェフリー・ディーヴァーが挙げられるが、それまではブロックのこの短編集が非常に完成度の高い短編集として挙げられており、今なお本書を読むべき作品として挙げる作家もいるほどだ。

ジェフリー・ディーヴァーの短編集がどんでん返しに重きを置いているものとすれば、ローレンス・ブロックのそれはどんでん返しにホラーにサイコ、クライム、悪徳弁護士、対話物、連続殺人鬼、ファンタジー、ネオ・ハードボイルドと実にヴァラエティに富んでいるのが特徴的だ。

個人的ベストは「あいつが死んだら」、「アッカーマン狩り」、「保険殺人の相談」、表題作、「夜の泥棒のように」。
「あいつは死んだら」はその着想の妙を買う。「アッカーマン狩り」は最後3行目の台詞に、そして表題作は古着のジーンズ卸し会社の本当の社名が秀逸。それらが暗示する恐ろしさといったら…。「夜の泥棒のように」はバーニイが登場する作品だが、他人の目から見たバーニイが新鮮で、しかもストーリーもきちんとオチが付いているという絶妙な作品。

とにかく精選された単語、言葉遣いを短いセンテンスで入れるため、一言に凝縮されたその意味が実に濃厚。表題作の会社名、「アッカーマン狩り」の犯人がふと漏らす一言など実に効果的。しばらくこれらは私の脳裏から離れられないだろう。
短編と云うのはこういうことを云うのだと云わんばかりの名品揃い。ブロックと云う作家の全ての要素を出し切った作品集と云えよう。特に作家たちはこの本をお手本にすべきだろう。ストーリーの語り口に運び方、言葉選びなど多く学ぶべきエッセンスに満ちている。

しかしどうして本書も絶版なのだろう。実に勿体ない。


キーワードから探す
ローレンス・ブロック
2020年11月
石を放つとき
平均:5.00 / 書評数:1
2018年09月
泥棒はスプーンを数える
平均:7.00 / 書評数:1
2014年10月
殺し屋ケラーの帰郷
平均:5.33 / 書評数:3
2012年09月
償いの報酬
平均:5.50 / 書評数:4
2011年09月
殺し屋 最後の仕事
平均:6.33 / 書評数:3
2009年12月
やさしい小さな手
平均:8.00 / 書評数:1
2008年09月
タナーと謎のナチ老人
平均:7.00 / 書評数:1
2007年11月
殺しのパレード
平均:7.00 / 書評数:2
2007年07月
泥棒は深夜に徘徊する
平均:5.50 / 書評数:2
2007年06月
快盗タナーは眠らない
平均:5.25 / 書評数:4
2006年12月
すべては死にゆく
平均:6.50 / 書評数:2
2004年07月
砕かれた街
平均:7.00 / 書評数:1
2002年10月
死への祈り
平均:6.67 / 書評数:3
2002年05月
殺しのリスト
平均:7.00 / 書評数:1
2001年08月
泥棒はライ麦畑で追いかける
平均:7.00 / 書評数:1
2000年08月
泥棒は図書室で推理する
平均:7.00 / 書評数:1
1999年10月
皆殺し
平均:8.00 / 書評数:2
1999年05月
頭痛と悪夢
平均:5.00 / 書評数:1
1998年12月
泥棒はボガートを夢見る
1998年09月
殺し屋
平均:6.25 / 書評数:4
1996年12月
処刑宣告
平均:6.75 / 書評数:4
1996年09月
泥棒は野球カードを集める
平均:7.00 / 書評数:1
1995年10月
死者の長い列
平均:7.00 / 書評数:5
1995年01月
死者との誓い
平均:6.60 / 書評数:5
1994年01月
夜明けの光の中に
平均:7.00 / 書評数:1
1993年11月
獣たちの墓
平均:7.60 / 書評数:5
1993年07月
バランスが肝心
平均:10.00 / 書評数:1
1992年12月
おかしなことを聞くね
平均:8.00 / 書評数:2
1992年10月
倒錯の舞踏
平均:8.00 / 書評数:6
1991年12月
墓場への切符
平均:8.00 / 書評数:4
1990年12月
緑のハートをもつ女
平均:7.00 / 書評数:1
1990年07月
慈悲深い死
平均:6.50 / 書評数:2
1988年12月
一ドル銀貨の遺言
平均:6.00 / 書評数:3
1987年11月
冬を怖れた女
平均:6.00 / 書評数:3
1987年04月
過去からの弔鐘
平均:7.33 / 書評数:3
1986年11月
聖なる酒場の挽歌
平均:7.25 / 書評数:4
1985年07月
暗闇にひと突き
平均:6.67 / 書評数:3
1984年11月
泥棒は抽象画を描く
平均:7.00 / 書評数:1
1984年04月
八百万の死にざま
平均:6.91 / 書評数:11
1983年01月
泥棒は哲学で解決する
平均:6.50 / 書評数:2
1981年04月
泥棒は詩を口ずさむ
平均:7.00 / 書評数:1
1980年07月
泥棒はクロゼットのなか
平均:7.00 / 書評数:1
1980年04月
泥棒は選べない
平均:6.50 / 書評数:2