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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
快盗タナーは眠らない
エヴァン・タナー
ローレンス・ブロック 出版月: 2007年06月 平均: 5.25点 書評数: 4件

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東京創元社
2007年06月

No.4 5点 E-BANKER 2017/08/27 19:33
個人的にはマッド・スカダーシリーズを読みあさっている状況のなか、なぜか手にした本作。
全八作が発表された“快盗タナー”シリーズの記念すべき第一作目。
1966年の発表。原題は“The thief who couldn't sleep”(まさに邦題どおり!)

~脳に銃弾を受けて眠りを失ってしまったが、その代わりに語学力と万巻の書からの知識を得たエヴァン・タナー。ギリシア・トルコ戦争時のアルメニア金貨が今もまだトルコ領内に埋もれているとの情報を得た彼は、金貨を手中にすべく旅立つが、スパイ容疑で逮捕された! 決死の脱出から始まるヨーロッパ大活劇。異能のヒーローが活躍するブロック初期の痛快シリーズ、ここに開幕!~

確かに、他の皆さんの書評どおり!
ということで終わってもいいくらいなんだけど、折角なのでもう少し。

いくら職人ブロックといえども、若い頃はあったんだなぁーという感想。
マッド・スカダーシリーズの痺れるような緊張感や、読んでるだけで目に浮かんでくるようなNYの街の描写力・・・
などなど、読むほどに痛感する“旨さ”は本作からは感じられない。
プロットもなぁー
読者としては、ただひたすら、タナーの動きを追っていくしかないというのがねぇ・・・
どこかで捻ってくるかと思いきや、最後までスーッて行ってしまった感が強い。

もちろんそれはあくまで「ブロックなら絶対面白いはず!」っていう先入観のなせる業だし、他の作家に比べれば楽しめる要素は満載だと思う。
タナーがヨーロッパを股にかけ、あらゆる国々で事件に巻き込まれる珍道中!
会話も洒落てるし、ラストのまとめ方も手馴れている。
それから・・・って、これ以上は褒められない!(褒め言葉が浮かばない)
全八作のシリーズ。果たして次作以降はどうなのか?
やっぱり、スカダーに会いたくなった・・・

No.3 6点 Tetchy 2013/04/07 13:25
快盗タナーが狙うのは女友達(恋人未満かな)の祖先がトルコのある家に隠した大量のソブリン金貨。しかしトルコで国外追放の目にあったタナーはアメリカへの強制送還の途中で立ち寄ったアイルランドで逃げ出し、一路トルコへ向かうというのが粗筋だが、その道中にはある謎の人物から機密文書を託されたり、ユーゴスラビアの属国の革命に参加させられたりと内容はスパイ小説のそれ。

つまりこれは快盗物と見せかけて実はエスピオナージュだったというのがブロックの狙いだったのだが、先入観というのは恐ろしく、題名にある「快盗」の文字が作品世界への没頭を妨げてしまった。「何か想像していたのと違うなぁ」と終始思いながら、最後に唐突に現れる謎の組織とタナーのやり取りに面食らってしまい、なんとも消化不良な読後感となった。

題名というのは全く諸刃の剣だ。題名がミスディレクションとなって「ああ、そうだったのか!」と見事に騙された思いにさせられるのもあれば、最後に題名のもう一つの意味が解ってカタルシスを感じたりもする。しかし今回は全く逆に働いた(原題にも“Thief”とあり、実に忠実な題名だから訳者のせいではないのだが)。

しかし個人的には現在忙しい日々を送っていて、読書の時間を取れるのでさえ困難な今、24時間全く眠らないエヴァン・タナーが実に羨ましく思った。

No.2 5点 mini 2010/10/15 09:38
kanamoriさんの御指摘で気が付いた、そうか”怪盗”ではなくて”快盗”なのか、いくら最終的に宝物を盗むのが目的とは言えどうも題名が合わないと思ったが、”快”なら納得
ローレンス・ブロックは名が売れるまでに時間がかかった作家だが、マット・スカダーと泥棒シリーズ以前の最初期に書かれたシリーズだ
しかしそこは流石の天才小説職人ブロック、抑揚を抑えた流れるような筆運びはベテラン作家かと思うほど
職人肌の作家と言えば、E・S・ガードナーがメイスンものを書く以前の初期に、怪盗レスター・リースを書いていたのを思わせる
特異な人物造形だが、類推だけど先にプロットありきで、このプロットの為には数ヶ国語が話せる必要上、このような現実離れした人物を創造したのではあるまいか
スパイ小説全盛期の1960年代の作なので、もしかしたら出版エージェントからスパイものの執筆を依頼され、でも一筋縄ではいかないブロックだけに、こんなの書いちゃいました、って感じ
目的は宝探しのインディ・ジョーンズ風、展開は起承転結など有って無しがごときの起転転転、政治思想などのテーマ性が有る様で実はそんなの関係無く、読んでる間だけ面白けりゃ良いだろうって割り切り感
6点以上付けられる名作では無いが、4点以下を付けるほどつまらないかってぇーと面白いっちゃぁ面白い
kanamoriさんも私も5点を付けたけど、他の誰が読んでも5点位になりそうだなこりゃ

No.1 5点 kanamori 2010/10/14 18:02
主人公は頭部に銃弾を受け眠りを必要としなくなった語学の天才という設定、スカダーや泥棒バーニィよりも10年以上前に書かれた初期シリーズの第1作です。
巻き込まれ型のスパイ冒険小説で、舞台のヨーロッパ各地をめまぐるしく変転させながら、テンポよく読ませます。これ1作だけでは判断が難しいですが、後の作品群と比べると、しゃれた会話や文章にブロックらしさが見られなかったのは残念。


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