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[ 本格/新本格 ]
紅蓮館の殺人
館四重奏
阿津川辰海 出版月: 2019年09月 平均: 6.60点 書評数: 15件

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講談社
2019年09月

No.15 6点 mozart 2023/07/28 07:05
続編があるとのことなので(順番を間違えると痛い目に遭うかも知れないので)まずはこちらから読みました。でも時系列的に後の続編があると言うことは主人公周りの人物は「無事」だったということで、タイムリミットのあるサスペンスだというのに今ひとつ緊迫感が……。
とは言っても、明らかに問題がありそうな登場人物とか仕掛けのある館とかロジックをもとに謎を解明していく過程とかはそれなりに楽しめました。ただ最後の「探偵とは」をテーマにしたくだりはちょっとどうかな、と。色々(死亡)フラグを立てながら謎を解いていくのも名探偵の「お約束」だと思うのですが。

No.14 7点 みりん 2023/04/05 04:40
「名探偵とはどうあるべきか」みたいな会話が少しクサくて恥ずかしいのは減点。小手さんがカッコよすぎるのは加点。

No.13 7点 虫暮部 2022/12/22 16:27
 高校生二人の憧れの作家が松本清張フォロワーとの設定は意外。EQ系じゃないんだ。
 吊り天井の部屋と隠し部屋。事故防止を考えるなら、後者から前者の中を見られるきちんとした窓があって然るべきでは。と言うか、吊り天井に関する安全装置が皆無で、それこそ “殺人の為の部屋” って感じ。
 “塔の中のエレベーター” が、ミステリ的ガジェットとしては全然生かされていない。
 たいした根拠もなく “金庫=50キロ以上” と推定して、そのまま推理を進めている。極論、ハリボテかもしれないのに。

 推理に没頭する葛城は鼻に付いた。いっそ “謎は解けたが、それに時間を浪費したせいで炎に巻かれて全員死亡” なんて結末はどうだろう? 実はエピローグは死に際に見た幻覚であった……。

 ※吊り天井の前例としては、江戸川乱歩『白髪鬼』、更にそれをネタとして借用した米澤穂信『インシテミル』がありますね。

No.12 6点 suzuka 2022/10/09 22:07
燃える館、ロマンですね。
推理小説としては、緻密なロジックに基づいている良い作品だと思います。私には難しすぎて全く解けませんでした。
あと、「探偵の生き方とはなんぞや」みたいなことに言及があるのですが、ちょっと浮いてる気がしました。

No.11 6点 ボナンザ 2022/06/16 23:13
ギミックは文句なく面白い。
やや風呂敷を広げすぎた感はあるか。

No.10 6点 E-BANKER 2022/04/15 22:36
またしても東京大学卒のミステリー作家が登場。しかも、これぞ「ド本格」という作風で。
しかし、ミステリー作家は好きだよねぇ「~館」というタイトルが・・・(版元が好きなだけ?)
2019年の発表。

~山中に隠棲した文豪に会うために、高校の合宿を抜け出した僕と友人の葛城は、落雷による山火事に遭遇。救助を待つうち、館に住むつばさと仲良くなる。だが翌朝、吊り天井で圧死した彼女が発見された。これは事故か殺人か? 葛城は真相を推理しようとするが、住人と他の避難者は脱出を優先すべきだと語り・・・。タイムリミットは35時間。生存と真実。選ぶべきはどっちだ~

うーん。これは・・・ミステリー的なガジェットを除いた部分だけだと「随分と若書きだなぁー」という感想。
「若書き」というより、「青い」という表現がしっくりくるかな。
「探偵とは生き方だ」なんて、コナン君でもないと言わないような台詞だしな・・・
特に終章のふたりの名探偵の対決シーンは、「いる?」って思う人が多そうだな。

まぁ、そもそも作者自身がお若いんだから、「若書き」なのも「青い」のも仕方のないことだし、最初から老獪な文章を書くよりは好感が持てる(のかもしれない)。
で、ミステリーとしての本作の評価としては・・・確かに本格ファンの心をくすぐる出来にはあると思う。
「偶然」(特にこんなに濃厚な関係者たちが一堂に会すること)の要素が強すぎるのは誰もが思うことだろうし、ここは工夫の仕様があったのではと感じる。
ロジックについてはどうだろう・・・。消去法を通じて多くの真犯人たる要素をふるいにかけて限定するというよりも、ほぼ1つの要素のみで真犯人を限定していた点がかなり弱い。
といった点が気になりはしたが、総合的にはランキング上位に輝いた水準にはあるだろうと思う。

「館焼失まで〇〇時間」という表記でタイムリミットサスペンスをハイブリッドさせた狙いはあまり効いてなかったように思うが、その辺のちぐはぐさが解消していけば、面白いミステリーが読めるのではという期待は大。
なにせ最高学府出身の頭脳だしね。
でも、葛城と田所の関係性はちょっとキモイと思う。(単なるジェネレーションギャップか?)

No.9 7点 モグラの対義語はモゲラ 2021/09/27 20:46
これ文庫本書下ろしなんですってね。
とにかく後半の息もつかせぬ解決編が面白かった。次々と前振りを拾っていき登場人物たちの不自然なふるまいを解き明かしつつ、館脱出に当たっての件も隠し通路の看破やその過程で伏線を回収、さらに意外な人物の登場が示唆され、そしてちゃんと最後には殺人事件の犯人も解決しつつ最後に苦いものが残る、と全く飽きさせないものになっている。展開だけなら非常に私好みで、1章終盤からは夢中になって読んでいた。
特に釣り天井の部屋の秘密と被害者の具体的な死に方については、もしかしたら私が寡聞にして知らないだけかもしれないが、なかなか斬新な騙し方だなと思った。
ただ文章、というか作品全体の雰囲気がよく引っかかった。メディアミックスを意識しているかのような、というより映像や漫画をそのまま文章に落とし込もうとしたような過剰な演出が目立ち、またキャラも台詞も心象風景もクサかった。のっけから主人公勢が合宿を抜け出すという私としては若干引くシーンで、以降もどの人物に対しても感情移入しにくい描写が続き、作者の操り人形感が否めなかった。まあこの作品、設定のどこをとってもリアリティとはかけ離れたもので、だからこそ描ける面白さを持つ作品であるので、キャラ描写云々という指摘は野暮かもしれない。探偵についての哲学のぶつけ合いも、キャラ描写のせいか正直退屈だった。どこかで見たような議論や主張の、焼き直しにさえなっていないように思えた。総じて小説としてはかなり低得点である。
作中の推理も、幾つかは決定的な突き付けというより、やや爪の甘いものを連打して積み上げているような感じで、快刀乱麻というほどでもなかった。良くも悪くも数で勝負する作品と言える。
館ものやクローズドサークルものの王道を行かず(そもそも多分、厳密にはクローズドじゃないし)、独自のテンポで話が進んでいくので、タイトルに悪い意味で騙されたという気分も無くはない。
が、それだけたくさんのマイナス点があっても、なお高く評価できるくらいのパワーと勢いと謎解きの快感のある作品だった。

No.8 6点 蟷螂の斧 2021/08/17 16:27
登場人物の秘密を解くロジック、犯人特定のロジックは高評価です。
マイナスポイント
①吊り天井の構造を平面図ではなく立体図で挿入して欲しかった。後で構造図は挿入されましたが・・・
②探偵の生き方には興味はありません(ごめんなさい)
③クローズドサークルによるサスペンス感が不足気味。「館焼失まで○○時間○○分」は不要でしたね。どうしてもウィリアム・アイリッシュ氏のタイムリミットものと比較してしまうので・・・
④うーん、犯人像が・・・・・・・次作「蒼海館の殺人」に期待

No.7 6点 ミステリ初心者 2021/04/15 19:39
ネタバレをしています。

 クローズドサークルであり、探偵vs元探偵の対決がみられ、元探偵の過去~現在の事件の決着など、本格推理小説的ようそがてんこ盛りです(笑)。
 物語主観の主人公はワトソン役で、友達が名探偵。それだけでも話は成立しますが、主人公の幼少の頃のあこがれであった元探偵の物語が濃く、もう半分以上主人公です。探偵という言葉が飛び交い、やや現実離れしていますが、本格ファンからしたらなんの違和感もないでしょう(笑)。
 登場人物もカタギじゃない人たちばかりで癖が強いです。詐欺師、盗賊、殺人犯。すべての登場人物に物語があり、狙いがあります。この役割配分は、ラストの探偵vs元探偵の決着にもかかわってくる要素でした。

 推理小説的要素もなかなか細かい論理で犯人断定をしています。
 はじめは推理小説的要素が薄く、読者に考えさせてくれることを与えてもらえない感じがしましたが、あらためて読み返すとところどころにヒントがあり、いい感じです。
 最も大きい要素は、やはり美登里の絵を飾る際の煤のロジックです。かなり難易度が高いとは思うのですが、しっかりと消去法できているのが素晴らしいです。もちろん私はわかりませんでした。

 以下、難癖部分。
 クローズドサークル特有のサスペンス感とテンポはありませんでした。これは探偵vs元探偵の物語を描きたいがために、元探偵の物語をしっかりと書いた結果だと思います。されに、それにページを割くあまり、連続殺人も起こりませんでしたし、"真実を暴くことで危険が起こる"要素を入れると登場人物も絞らざるをえません。少々中途半端だったかもしれません。
 吊り天井を下げたのが犯人ではなく、共犯者でもない元探偵だということは、読者にとって真相を見抜くのにかなり難しくなってしまったと思います。私の知能が低いだけかもしれませんが。解決編での元探偵の行動の心理と、それを論理的に暴く匂い袋と消臭剤のロジックは見事なのですが、消臭剤がまかれていたことを完全に失念していました(笑)。もうちょっと大々的に書いてほしいです。再読はしていませんが(笑)。

 全体的に、推理小説好き作者が書く漫画のような作品でした。本格への愛を強く感じるため、このままこの路線を続けてほしいと思います。

No.6 7点 まさむね 2021/02/13 19:10
 本格愛を感じる作品です。前半、多少冗長な印象もあったのですが、中盤以降の展開はお見事で、楽しく読ませていただきました。感心した点も多いです。
 一方で、新旧の探偵を登場させたうえで「探偵の生き方」をテーマの一つとし、相当のページ数を割いている点には、消極的な評価。勿論、全体のストーリーに不可欠な部分はあるものの、個人的にはちょっとクドく感じたかな。なお、この点に関しては、既に複数の方が挙げられているとおり、私も市川哲也氏の鮎川哲也賞受賞作「名探偵の証明」を思い起こしましたね。

No.5 8点 sophia 2020/07/04 20:04
「紅蓮館の殺人」というよりも「吊り天井の館の殺人」という感じです。絵の論理、額の論理が細かくて通好みでしょう。人物関係等でちょっと偶然が過ぎるのが難点ではあります。犯人の意外性はあまりありません。ラストは苦く切ないです。

以下ネタバレ

葛城が死体に振りまかれた消臭剤に気付いた描写がないように思われるのですが、必要ありませんかね?見落としかと思って必死に探してるんですが見つかりません。序盤につばさのフルネームを何気なくはっきりと書いちゃうところがこの作者の度胸があるところですね。何の引っ掛かりも感じず流しちゃいましたよ。新旧名探偵対決は痛み分けといったところですが、シリーズ化もありそうな、そしてなさそうな終わり方でした。最後に、この作品のあの展開はどうしても西澤保彦の某山荘ものが頭をよぎりますね(笑)読後にいっぱい語りたくなった作品でした。

No.4 6点 名探偵ジャパン 2020/01/06 09:27
こんなタイトルを見せられたら、コテコテのド本格を期待してしまうじゃないですか。まあ、事件内容自体は「ド本格」なんですけれど、そこに「名探偵としての宿命」みたいなテーマが絡んでくるものですから、ちょっと注目ポイントがあやふやになってしまった感があります。他の評者の方のご指摘にもありましたが、市川哲也の『名探偵の証明』みたいで、このテーマに関してだけなら、そちらのほうが上手く描けていたように思います。
とはいえ、実在する職業ならまだしも、架空の存在である「名探偵」について、「かくあるべし」みたいな定義をしたり、「こんなにつらいんです」という業を語られても、そんなの書き手の胸三寸でどうとでも定義できるでしょと思って白けてしまい、個人的にはこういうテーマはそんなに響いてきません。
もう一方の「ド本格」としての内容は、かなりいいものが書けていただけに(特に、死体が濡れていた理由は秀逸)、余計なテーマを添付しなくてもよかったのに、と思ってしまいました(こういうのが好きな人もいるとは思いますが)。

No.3 7点 nukkam 2020/01/05 12:52
(ネタバレなしです) 阿津川辰海(1994年生まれ)の2019年発表の長編第3作で館四重奏第1作の本格派推理小説です。過去2作は転生ありとか未来予知ありとか特殊な設定の世界(何でもありになってしまいがちなので個人的には好きではないです)での謎解きらしいので敬遠してましたが、本書はそういうのがないので読んでみました。山火事に囲まれた館を舞台にしているところがエラリー・クイーンの「シャム双生児の秘密」(1933年)を、探偵役が容疑者全員の秘密を暴いていく展開がアガサ・クリスティーの「アクロイド殺し」(1926年)を、そして探偵と元探偵を対峙させて探偵の存在意義を見つめ直しているところが市川哲也の「名探偵の証明」(2013年)を連想させます。吊り天井の下敷きになった死体は前例があったかな(時代劇のからくり城ならありそうですが)?本格派推理小説として凝りに凝った作品ですので本格派好き(それも大がつくほどの)読者にはお薦めしますが、幅広いジャンルのミステリーを楽しむタイプの読者にはリアリティーを度外視して謎解きを突き詰めている本書は少し息苦しく感じるかもしれません。

No.2 8点 HORNET 2019/11/23 21:23
 高校2年生の田所は、友人の葛城と共に学校の勉強合宿を抜け出して山中に隠棲した憧れの推理作家・財田雄山の屋敷を探しに。しかしその途中で落雷による山火事に遭遇、結果として雄山の館にたどり着いたものの、救助を待つはめに。なんとか館の人たちとも打ち解け、救助が来るまで滞在することになった2人だったが、翌朝、仕掛けのある部屋の吊り天井で雄山の孫・つばさが圧死しているのが発見された。
 これは事故か、殺人か。葛城は真相を推理しようとするが、タイムリミットは35時間。生存と真実、選ぶべきはどっちだ―

 閉ざされた空間に居合わせたのはいずれもいわくつきの人々。典型的な吹雪の山荘モノである。居合わせた内の一人、保険会社調査員・飛鳥井光流の過去も事件に関係してくるなど、偶然が過ぎるとも言えるが物語としては面白い。
 奇妙な仕掛けがしてある館、山火事により迫るタイムリミット、過去の事件の因縁と盛りだくさんだが、それらを上手く絡めて王道ミステリに仕立てられている。

No.1 6点 makomako 2019/10/14 09:07
山火事に追い詰められてたどり着いた館での猟奇的殺人事件。怪しげな人たちが集合する。なんだか以前にも読んだことのあるようなシチュエーションです。 面白そうなのですが、それほどでもない。
 まず作者が探偵という生き方をへんてこに定義してこれに合わせた会話が結構多い。お話としてはほとんど事件が解決したと思われるのにまだ終わりまで大分ある。ここからどんでん返しのつもりなのであろうが(実際どんでん返しなのだが)グダグダと切れの悪い会話が続くため、鮮やかというより無駄に長くてくどい感じがしてしまいました。
 本格物としては私の好みでとても良い感じなのにもう一つ何か足りない。
 新人に期待を込めての点数です。
 次回頑張ってね。


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