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モグラの対義語はモゲラさん
平均点: 5.55点 書評数: 11件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.11 7点 妖魔の森の家- ジョン・ディクスン・カー 2021/06/20 19:34
どれも上手くミスリードして心地よく裏切ってくれた。特に表題作は脱出トリックのことばかり考えていたので、最終的に全然違う結末に持っていかれて度肝抜かれた。こういう作品を知らないわけではないのだが、既に一回起こっている密室からの脱出および侵入の事件にうまく誘導されて完全に油断してしまった。他の作品も、特に「第三の銃弾」や「軽率だった夜盗」は「こういうトリック、構成を書きたい」という明確なテーマが感じられつつ綺麗なミスリードがあって面白かった。

非常にどうでもいいことだが、どの作品も志向は違うのに何故か統一感が感じられたのが不思議だった。なんでだろう。奇妙で複雑な事件ばかりなのは勿論、「誰かの想定している前提条件が事件時変わっていた」という点が共通しているんだろうか。特に表題作以外は、計画と現実のすり合わせの結果奇妙で複雑な事件になっているというものばかりだった。そういえばここまでハプニング尽くしな短編集読んだのは初めてかも。

No.10 7点 黒い仏- 殊能将之 2021/06/05 19:08
読んだのはノベルス版。事前にコズミックや夏と冬の奏鳴曲とある意味並ぶと聞いていたのが良かったのだろう、普通に楽しめた。

禁じ手が繰り出されるだろうと言う予想は、二章の最後で早々に分かるものだし、そのためにミステリとしての面白さが無くなったと言う事も個人的には無かった。「探偵がどういう論理で犯人やトリックを推理するのか」と言う事にしか興味がない人間は、普通に楽しめるのではないだろうか。むしろその推理によって事象がゆがめられていく感じは真っ当なアンチミステリ、メタミステリ的で面白かった。そんなのに真っ当も糞もあるのかはともかく。逆に真実がどうであるか拘りたい人がこれを読むと本をひっ割いてしまうだろう。

キャラも、設定面はともかく性格的には程よく立っていて丁度よかった。文章も読みやすい。この手のはキャラの味が濃すぎて読みづらかったりすることがあるので、そういう意味でも自分の中ではこの作品はポイントが高い。ふざけた作品なのに澄まして欲しいところは澄ましている。
あと微妙にセカイ系っぽい味付けなのも、自分の嗜好にマッチしていたのかもしれない。全てが詳細に語られること無く終わる感じが特に。

本当ならコズミックと同じく5点ぐらいがいいのかもしれないが、まあでも、真っ当なミステリ作品として楽しめないことも無いような気がしないでもないので7点で。
ああでも、もっと低い点数のがいいかなあ……。地雷ではあるもんなぁ……。まあいいか。踏み抜け踏み抜け。

No.9 7点 涙香迷宮- 竹本健治 2021/05/31 06:40
読んだのは文庫版。
黒岩涙香、いろは歌、連珠、その他の完全情報ゲームなど、さまざまなジャンルの蘊蓄がこれでもかとつまっていて、非常に面白かった一方、疲れた。
ストーリーそのものはそこまで入り組んでおらず、軽快な会話の中で蘊蓄が続くので、読むのが苦痛になるというほどではなかったが、人によってはダレてしまうかもしれない。ミステリ小説らしいテンションになってくるのは、主観ではページ全体の3分の2ぐらいを読んだあたりからで、ここもダレる要因かも。

だがそこはこの作品の醍醐味ではなく、作者が作り上げた圧倒される量のいろは歌と、それに仕込まれた難解な暗号がメインディッシュであろう。帯に書いてあった「日本語の新たな可能性まで切り拓く小説である」という文に偽りなかった。ミステリ小説としてどうかはともかく、その凄まじい言葉遊びは存分に楽しめた。

No.8 2点 増加博士の事件簿- 二階堂黎人 2021/05/28 01:01
ショートショート集なので多くを求めるのは間違いなのかもしれないのだが、あまり人に薦められる作品では無かった。

ダイイングメッセージ系が多く、それも結構強引なものが大半であまり面白くなかったし、しかしダイイングメッセージで統一されているわけではなかったので、「次のを当てよう」というモチベーションも湧かなかった。そしてダイイングメッセージ以外のもすぐ看破できるものであったり強引な物であったりと、ミステリとして楽しんで読めるものではなかった。

せめてキャラ以外にもう一つ統一感が欲しいなあ。

No.7 8点 模倣の殺意- 中町信 2021/05/20 18:39
読んだのは文庫本版。所々引っかかる点がちゃんと回収されて心地よかった。今となっては割とベタなタイプの作品なのだが、それでもフーダニットが読み切れなかったので最後まで楽しめた。分かる人はちゃんと推測っていうか推理できるんだろうけどなあ。自分もまだまだ。

割と複雑な構成なので、断続的に読むと頭の中でぐちゃぐちゃになるかもしれない。というかなった。そこは人によってはウィークポイントに映るだろうか。まあそもそもそういう不自然さとその昇華が醍醐味の作品なので当たり前っちゃあ当たり前か。

細やかなトリックから大胆なアイデアまでふんだんに盛り込みながらこの短さ、もっと知名度があっても良い、隠れた良作だと思う。

No.6 4点 眼球堂の殺人~The Book~- 周木律 2021/05/10 05:39
トリックや真相、展開を読みやすい作品だったのでずっと楽しめたわけではないが、全部が完全に分かってしまってつまらないと言う事も無かった。
あまりミステリーを読んだことが無い人は度肝を抜かれてかなり面白がれると思う。逆にメフィスト賞作品をよく読んでいる人は、良くも悪くもメフィスト賞らしい作品なので結構退屈するんじゃないかなあ。100点回答を出来る人もかなりいると思われる。

個人的にこれを読むにあたって大いにネックだったのが、文章である。胡乱な言い回しが多いというか、書きたいキャラクター性に引っ張られ過ぎてるというか、文体の標準が合わないというか。この作者と全く合わないというわけではなく、処女作らしい文章と言う事なのかもしれない。
キャラクターも合わなかった。特に、主人公の探偵役には、はっきり言って最後まで魅力を感じなかった。どこが、と指摘は出来ないのだが、何となく書きたい展開に合わせた結果言動に一貫性が無いように思われた。

大きいトリックの作品は結構好きなのだが、解決編が始まってちょっと経ったぐらいまで作品に没入できなかったのと、もっと予想外のことをして欲しかったりもっと鮮やかな論理を見せて欲しかったという不満もあるので、点数としてはこれくらいかなあ。

No.5 5点 パノラマ島奇談- 江戸川乱歩 2021/04/19 16:05
ミステリとして面白い作品ではなく、幻想小説というか、パノラマ島の非現実的な描写を楽しむ作品だったなという印象。その辺りが一番惹きこまれた。描写に明らかに熱がこもっており、またその世界を実現させるために使った技術がぶっ飛んだ物でないのが良い。今こういう作品を書くとすると、CGだのAR技術だのが入ってきてしまいそうで、それらを使ってしまうとこの小説程の浪漫は出せない気がする。
一応、ミステリらしい謎と解決的な要素はあるのだが、まあそれは別に巧みな推理というわけではない。
単純に読み物として面白く、恐らく人を選ばない文章で、オチが個人的に好きな一方、先述の通りミステリとして楽しめるわけではないので5点。

No.4 5点 木曜の男- G・K・チェスタトン 2021/04/16 18:13
これは……何というか凄かったな。今の私では理解できないというか。
チェスタトンは童心しか知らなかったのでその印象で読んだのだが、イメージを裏切られたなというのが読後最初に思った感想である。
とりあえず強烈で心地よい熱量は感じられるし、序盤の無政府主義者の団体に潜り込む件なんかはポップにエンタメをやっていて面白い。ただまあ、個人的には微妙に人に薦めづらいかなあ。いや、こういうの結構好きなんだが。

No.3 3点 名探偵に薔薇を- 城平京 2021/04/13 15:44
文章といい話の展開といい、どうにも受け入れ難いタイプの作品だった。私の性格が悪いと言えばそれまでなのだが、作者の陶酔を感じるというか、狙いが頭にチラついてダメだった。作品に結末へ前のめりに突き進みすぎていて作品に入り込めず、物語に対し穿った姿勢でしか臨むことができなかった。第一部の毒の設定なども好かない。キャラクターもなんかクサいんだよなあ。

リアリティの無いキャラクターや設定はむしろ好みなはずなのだが、恐らく私の中にある基準に届いていない、振り切れていないものだったのだろう。また、バッドエンド作品は設定はともかくセリフや振る舞いにはリアリティがあった方が、私は面白がれるのだろう。この作品は台詞が妙に芝居がかっている、わざとらしいものが多かったと思う。ドラマとか好きな人はこういうの好きなのかな?

ボロクソ書いてしまったが、人によっては驚かされまた胸を打つ作品だと思う。胸を打ちに行ってる感じがする作品がダメな人は多分楽しめないだろう。

No.2 5点 コズミック- 清涼院流水 2021/04/10 23:46
むしろ10点つけたいぐらいなのだが、果たしてそれが「ミステリの評価」として10点なのか甚だ疑問だったので、煩悶の末この点数に落ち着いた。いや実際には10点なのよ、ほんとよ? 

余りに遠大で非常識なトリックだが、実は個人的には荒唐無稽すぎて推理不可能って程でもないというか、ちゃんと個々の死に方を追い、濁暑院の小説周りを踏まえて考えれば、そんなにトンデモでもないと思ったので、ミステリとしては5点よりもうちょっと上でも構わないかなと思っている。真犯人はともかく。

恐らく当時としては濃すぎるキャラクター設定に、少年漫画のような格付けとインフレ、のっけの予告上から常軌を逸している事件など、人によってはとても受け入れられない要素がこれでもかというほど詰め込まれているが、私はむしろその熱量がすごく良かった。やりすぎな描写や世界観に振り回される心地よさ、読めばきっとその感覚が、この作品に込められたその魅力が分かるはず。まあ、それが魅力として機能しうると理解できることと、実際魅力的に感じられるかは別問題なのだが。

点数のモードが5点のミステリではなく、誰かにとっては10点になりうる1点のミステリ、という理解が正しいだろう。間を取って私は5点にした。
この作品やこれの作者の作品に影響を受けた作家や、これらをリスペクトしている作家が活躍しているのも事実である。
一読の価値はあると私は思う。

No.1 8点 不連続殺人事件- 坂口安吾 2021/04/10 22:15
文庫のあらすじでは「独創的なトリック」と書いてあったが、個人的には割と普通な小説だったと思った。当時としては非常に斬新だったのだろうなあ。最近の作品になれているからか、色々な面で古いと感じてしまった。特に文体。あと非常に多い登場人物や、殺人が起こる場所なども、単なる私の偏見なのだが、割と古さを醸し出していると思う。
しかし古くて普通だからといって、イコールつまらないというわけではなく、古さを感じさせない面白さがあったのは確かだ。
作中で探偵役の巨勢博士がちょっとそれっぽいことを述べていたが(述べてなかったかも)、ここまで手がかりの無い、残さないという意思を感じる事件は、私が寡聞にして知らないだけかもしれないが、かなり珍しいと思う。
しかもこれに読者への挑戦状があるのだ。どっから手を付けろと。にもかかわらず推理披露を読んでみて、ちゃんと「心理の足あと」が残っていたことに気付かされ、驚かされてしまった。わかんねえよこんなん。
独創的と聞いてメタミステリすれすれの手口かと思ったが、全然そんなことは無かったので安心して読んで欲しい。

モグラの対義語はモゲラさん
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採点傾向
平均点: 5.55点   採点数: 11件
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