皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] アリバイ崩し承ります 「美谷時計店」店主・美谷時乃 |
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大山誠一郎 | 出版月: 2018年09月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 13件 |
実業之日本社 2018年09月 |
実業之日本社 2019年11月 |
No.13 | 6点 | nukkam | 2024/09/09 02:16 |
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(ネタバレなしです) 2018年発表の美谷時乃シリーズ第1短編集で、7作のアリバイ崩し本格派推理小説を収めています。「アリバイ崩し承ります」という貼り紙のある時計店の女性主人がアリバイを崩せずに困っている刑事から話を聞いて事件を解決するという安楽椅子探偵ものです。アリバイ崩しは難解で読みにくいという印象がありますが本書の作品はどれも読み易いです。トリックは大掛かりなものはなく、「時計屋探偵とダウンロードのアリバイ」の珍しいアリバイもトリックは結構アナログです。ちょっとした不自然な言動が手掛かりになる「時計屋探偵と死者のアリバイ」と犯人当て要素もある「時計屋探偵と山荘のアリバイ」が個人的には印象に残りましたが、犯罪のない「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」のゲーム的な雰囲気も悪くありません。 |
No.12 | 4点 | いいちこ | 2022/12/22 15:16 |
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そもそもアリバイトリックは、言わばネタが出尽くしている状況にあり、ジャンルそのものが行き詰っているとはいうものの、既視感の強い既存トリックの応用や、他のミステリジャンルとのあわせ技ばかりで、独創性が感じられない。
そして何より、示された真相に合理性やフィージビリティがまるで感じられない。 各話ともに探偵が瞬殺で真相に到達するのだが、その解明プロセスは論理性が皆無で、「このように考えることもできる」というインスピレーションでしかないにもかかわらず、それを指摘された犯人が例外なく自白して事件が解決するという枠組みそのものにも納得性がない。 本作をライトノベルと位置付けるなら、そうしたありようもある程度是認できるのだが、探偵を筆頭に、各登場人物の造形もまるで掘り下げがない。 本作の本質は「アリバイトリック問題集」とでもいうべきものであるが、そのように位置付けても凡庸なデキと言わざるを得ない 4点の下位 |
No.11 | 6点 | パメル | 2022/08/06 08:17 |
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県警本部捜査一課の「僕」は、腕時計の電池が切れていることに気づき、美谷時計店に入る。そこで「僕」は、店内に「アリバイ崩しを承ります」という張り紙を見つける。「時計にまつわる依頼はなんでも受ける」という祖父の遺志を受け継ぎ、孫娘の美谷時乃が、「時を戻すことができました」という決め台詞のあと、推理を披露する7編からなる連作短編集。
「時計屋探偵とストーカーのアリバイ」大学教授が殺害された事件の容疑者は、被害者の胃の内容物から特定された時刻にはアリバイがあった。 「時計屋探偵と凶器のアリバイ」死体よりも先に凶器の拳銃がポストから発見された殺人事件。現場で発見された銃弾から凶器はこの拳銃と判明。被害者の上司が容疑者として浮上するがアリバイがあった。 「時計屋探偵と死者のアリバイ」交通事故に遭ったミステリ作家が、自分は殺人を犯したと告白して死んでしまう。しかし死亡時刻を考えると、アリバイが成立してしまう。 「時計屋探偵と失われたアリバイ」ピアノ教師が殺害され、バーに勤める妹が殺人の容疑者となる。しかし「僕」は妹が犯人とは思えない。 「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」時乃は小学四年生の時に、祖父から出題されたアリバイ崩しの問題を「僕」に出す。 「時計屋探偵と山荘のアリバイ」「僕」が訪れた山荘で殺人事件が起こる。雪上に残された足跡から、中学生の少年以外のアリバイが成立してしまう。 「時計屋探偵とダウンロードのアリバイ」元会社経営者の男性が、自宅で死体となって発見される。犯行当日のみダウンロードすることが出来た楽曲を容疑者は、友人の前でダウンロードしていた。 たったそれだけの情報でアリバイを崩すなんてありえない、ロジックよりインスピレーションで解決するタイプの安楽椅子探偵もの。犯行そのものも、現実的ではないもの、ご都合主義的なものも確かにあるが、アリバイ崩しに特化した作品集なので、そこには目を瞑れば、盲点を突き、固定観念を覆すアイデア溢れた、奇想なアリバイ工作に驚くことができるのではないか。 |
No.10 | 7点 | モグラの対義語はモゲラ | 2022/02/17 03:02 |
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読んだのは単行本版。
普通にそこそこ面白い本格系の短編集だった。本格ものの短編の常として、かなり無理のある行動や極端な行動原理、ガバい警察の捜査などはあったが、それはもう「アリバイ崩し」という題名から構えていたことなので、特に気にならなかった。人によっては1本目の奴とか動機の説得力に欠けるように感じられるかもしれないし、3本目や最後のも納得するか否か人を選ぶような気もした。自分はまあフェアと感じられた。 真実やトリックの肝となる部分は既視感のあるものも無くはないが、どれも新鮮な気持ちで楽しめた。切り口というか見せ方というか、内在してるテーマが珍しいのかもしれない。そもそもここまで「どういう推理をするのか」を揃えた短編集も珍しい、と思う。キャラクター性や社会性みたなの他の要素を、無理やりねじ込もうとしてないのも好きだ。文章もこれくらい軽くて素っ気ない方がいい。ストレスフリーに読めたという点で、結構自分の中では点が高い。 でもやっぱり既視感はぬぐえない。かも。 |
No.9 | 5点 | ボナンザ | 2021/06/18 00:48 |
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現実的にはかなり無理のあるトリック揃いだとは思うが(一作目は特に)、今どきここまでアリバイ崩しに凝った短編集も珍しく、パズルものとしては中々。 |
No.8 | 6点 | Kingscorss | 2020/10/15 23:25 |
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はっきり言ってミステリー部分に関して言えば短編7つ中、第5話のおじいさんのアリバイと最後のダウンロードの話以外はかなりご都合主義&現実的に無理過ぎ感満載なので怒り狂う人が多いのもうなずける。二番煎じのトリックまで。
それだけならまだいいのだが、この作品が本格ミステリー・ベスト10で1位を取ったり、ドラマ化されたりしてるので余計腹が立って低評価してしまう人が多いのではないかと邪推してしまう。 ミステリー部分以外にも目を向けると、とにかくキャラクターが弱い。ヒロインの時乃や主役の刑事のキャラがとにかく薄い。特にヒロインの時乃は問題を入力してリターンキーを押したらすぐ答えの出てくるコンピューターのAIみたいな感じで全く共感や愛着がわかない。メディアやコミカライズ、ドラマ化などを狙ったためか、寒い決め台詞『時を戻すことが出来ました。犯人(または〇〇さん)のアリバイは、崩れました』と、機械的に毎回言うだけのマシンだ。いつ行ってもそこにいて、どんな事件も嫌な顔せず、たった5千円(警視庁の人権費、捜査費を考えると、はっきり行って桁が2つは足りないと思う)で天下の警視庁のエリートたちが解決出来ない難事件を0.1秒で解いてしまう、とても”都合のいい女”なのだ。 多くの人が感じるように、この本は”本格ミステリー入門クイズ集”という位置づけがぴったりである。悪いところばかり目が行くが、良いところも羅列するならラノベっぽいが、時計屋の若い女主人が毎回”アリバイ崩し”を請け負うというキャラ設定等は好感が持てる。ドラマ化や漫画化に向いている。ただ掘り下げ方が甘いせいで活かしきれてないだけなのだ。 そして、小説としてとても読みやすい。かと言ってラノベ等と違い筆致はしっかりしている。この辺を考慮して+1点加点で6点つけました。確かに本格ミステリー・ベスト10で1位になるような作品ではないと思いますが、そもそもああいうランキングは実力とか関係なく、ランキングをつける会社が”売りたい順位”なので(本屋大賞とか芥川賞とか露骨…)、あまりあてにはしないほうが良いかと思います。 |
No.7 | 4点 | makomako | 2020/05/01 18:03 |
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ほかの方も書いておられるようにクイズの出題と答えといった感じを強く受けるお話でした。
登場人物が全然現実感がなく機械のような感じがします。作者ならもっと膨らませて魅力的な女性に描けそうに思うのです。わざとこんな風にしたのでしょうか。 作者の新しいトリックを追及するという姿勢は大いに買っているのですが、こんな風にしてしまうと面白くも何ともありません。 以下ちょっとネタバレ 第1話は絶対成立しません。事件があった時間をずらす画期的方法のようにみえますが、人間の生理機能を無視した話です。つまり成り立たない。さらに末期すい臓がんなら解剖を行って見逃すなんてことはあり得ませんね。 第2話もパクリとのことですが、これもちょっと無理がありすぎます。 それ以後の話は無理やりのところはありますが、まあ全体成り立たないというわけではないので許せる範囲ではあります。 |
No.6 | 5点 | E-BANKER | 2020/04/19 18:19 |
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~美谷時計店には「時計修理承ります」とともに「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある。難事件に頭を悩ます新米刑事はアリバイ崩しを依頼する。7つの事件や謎を店主の美谷時乃は解決できるのか?~
早くも地上波ドラマ化された連作短編集。2018年発表。 ①「時計屋探偵とストーカーのアリバイ」=まずは設定の紹介を兼ねての初っ端の作品なのだが、このトリックはかなりキツイ、というか無理筋ではないか。夫婦間のやり取りはいかにも・・・という雰囲気だった。 ②「時計屋探偵と凶器のアリバイ」=これはタイトルどおり(?)、凶器=拳銃のアリバイが問題になる一編。美谷が看破した真相は、まぁ確かにそういう風にも考えられるけど、かなり綱渡りだろう・・・ ③「時計屋探偵と死者のアリバイ」=これもタイトルが示すとおり、「死者のアリバイ」が事件の鍵となる。これもまぁ、こう考えればアリバイも崩せるかな・・・という感じ。でも必要十分条件ではなくて、単に十分条件のような気がする。 ④「時計屋探偵と失われたアリバイ」=これはいつも気になる、〇れ〇わりがトリックの鍵となる作品。いくら姉妹でも気が付くと思うんだけどねぇー。古典ならやむなしだけど、2020年の今、これを読むとうーんという気になる。 ⑤「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」=これこそ推理クイズのような作品なんだけど、個人的には一番好きかもしれない。実に単純なんけど、アリバイはこう作るというエッセンスが入っていて興味深い。 ⑥「時計屋探偵と山荘のアリバイ」=これはミステリーの王道。「雪の上の足跡」を絡めたアリバイ崩し。崩しっていうか、まぁこれしかないだろっていう解法なのだが、短絡的に誤逮捕した警察は大丈夫か? ⑦「時計屋探偵とダウンロードのアリバイ」=誤認を使ったアリバイトリックなんだけど、関係者の記憶が薄らぐことを前提にするというのが相当リスキー。 以上7編。 『・・・時を戻そう!』(byぺこぱ)じゃなくて・・・『時を戻すことができました!』だった。 (もしかして作者はブレイク前にぺこぱを意識していたのか?) 皆さんかなり辛口の書評ですねぇ。まぁ分かる気もします。 これはクイズとして楽しむべきものであって、「小説」として楽しむものではないということだと思います。 クイズとして捉えるなら、作者の工夫や企みがいろいろと伺えて、割と楽しめる。 クイズなのに「本格ミステリベスト10」第一位かぁ・・・。それについては違和感たっぷり。 |
No.5 | 4点 | mediocrity | 2020/01/13 06:06 |
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まず、主役の時計屋の娘に魅力が感じられない。ビブリア風の設定なんて通常の推理小説以上に登場人物に魅力が求められるだろうに。決まり文句もなんだか寒い。似たようなセリフどこかで見たな・・・。
謎を解くスピードが速すぎるのも人間味を感じられない一因だろう。まるでコンピューターのようにアリバイを解いてしまうから。いいトリックでも、こんなに簡単に解いてしまうと大したことがないように思えてしまう。6話などなかなか良かったのに。 <以下少しネタバレあり> 細かいことで1点だけ言うと、第1話、司法解剖で3時間のズレが見抜けなかったのか不思議。次の話以降は死亡推定時刻が大体1時間に限定されているから余計そう感じた。 |
No.4 | 3点 | yoshi | 2019/12/29 20:20 |
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二作目のトリックに既視感があったのですが、ここに来てダムコップさんのレビューを見て深く納得。でも私、鮎川哲也の「扉を叩く」は読んだ記憶がないので、ひょっとしたら二番煎じではなく三番煎じなのかも知れません。
素人の私が既視感があるトリックが、堂々と使われてる作品が本ミス一位になってしまうとは。ひょっとして投票者の見識は大したことないのかな? と思ってしまいます。 会話の魅力の無さは青い車さんの仰る通り。それだけに一層決め台詞「時を戻すことができました」が浮いていて、うすら寒ささえ感じます。 |
No.3 | 5点 | HORNET | 2019/12/28 11:40 |
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時計屋の娘が、「アリバイ崩し」も副業(?)として謳い、そこに現職刑事がアリバイがらみの事件を持ち込むという設定の連作。謎解き以外の描写はほとんどなく、ラノベ的な設定ではあるが扱う事件は殺人など本格的で、純粋なパズラーを手軽に楽しめる短編集。
ただ披露されるトリックは手が込み過ぎていたり、都合のいい偶然が絡んでいたりして、非常に線の細いトリックにあとから物語を付け足していった印象を受けるものが多い。何というか、捜査側の思考経路を犯行側があまりに限定的に想定していて、そしてそのとおりの思考を捜査側が辿って壁にぶつかる、みたいな……「そんなに犯人の思惑通りに捜査側が動く?」と感じてしまう。 とはいえ、1冊読むのにほとんど時間もかからないので、割り切って読めばそれなりに楽しむことはできた。 |
No.2 | 4点 | 青い車 | 2019/06/27 08:05 |
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本ミス1位にしてはイマイチな印象が拭えません。どう考えても無茶というか犯人の心理的にやらないだろうというトリックが目立ちます。(例えば、被害者の体内を調べられることを期待してそれだけで偽装などできるでしょうか?そのために○○に見える○○というのも何だかヘンテコです)かといって最終話のダウンロードのアリバイは一番無理がない分面白味に欠けていて、どっちに行っても中途半端に感じます。『赤い博物館』などはもうちょっと面白く読めたのですが。
そして会話の魅力の無さも気になります。キャラクターの発言が上滑りしていて人が血が通っている気がしないのです。作者の目指すべきところはトリックの改善以上に文章をもっと向上させることかもしれません。 |
No.1 | 6点 | まさむね | 2018/10/06 09:29 |
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タイトルどおり、アリバイ崩しに特化した短編集。「時計修理承ります」のほか「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある時計店店主の美谷時乃が、新米刑事の持ち込む謎を解き明かす…という設定。
結構人によって評価が大きく異なるような気がしますねぇ。アリバイ特化といってもバラエティに富んでいるし、純粋にパズラーとして面白いという意見もあろうし、トリックのためのトリックといった感じで現実感がないとか、クイズ短編集みたいとか、アリバイ崩しだけ読まされるのも辛いといった意見もありましょう。この作者さんの短編集って、総じてそういった両方向からの評価傾向がありますよね。 ちなみに、私は肯定的に捉えていて、「いや、無理だろ」といった突っ込み自体も含めて楽しめました。最も印象に残ったのが「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」かな。 |