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[ 本格/新本格 ]
アルファベット・パズラーズ
大山誠一郎 出版月: 2004年10月 平均: 6.20点 書評数: 15件

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東京創元社
2004年10月

東京創元社
2013年06月

No.15 6点 パメル 2021/03/12 10:17
3つの短編と1つの中編からなる連作短編集。
いずれもロジックで攻めるタイプの作品で、奇抜な謎や起伏の激しい展開はほとんどない。良くも悪くも俗悪なエンターテインメント性に媚びることをよしとしない、純粋なパズラー。
なかでも、目まぐるしく推理の方向性を変えながら、意外な犯人と意外な動機を判じ出す「Yの誘拐」の結末は圧巻。その悪魔的な価値の転倒に驚く人が多いのではないだろうか。ただ、前3編のトリックがロジック的瑕疵が多いのが本書の大きなウイークポイント。ツッコミどころが多すぎる。極小が極大を映し出すアイデアは確かに面白いし、洗練されている。しかし、あまりにも大胆すぎるし、現実的では無さすぎる。不自然なアイデアを、不自然に見えないようにするとか、不自然なまま説得させてしまうという工夫が足りないように思う。それでも「Yの誘拐」が傑作であることは間違いない。
「Pの妄想」5点「Fの告発」5点「Cの遺言」6点「Yの誘拐」8点でトータルで6点としました。

No.14 6点 makomako 2020/11/29 16:36
 この作品に関しては好き嫌いで、かなり評価が分かれるのでしょう。
 本格物が好きなら、こんなに凝ったお話で意外性もあり素晴らしいということとなりそうですが、現実性を重視したり、物語に文学性や情緒などを求めようとするとひどい評価となるのだと思います。
 このサイトはミステリーのサイトですので、評価が高い方が多いのでしょう。
 私は本格物の凝った内容や練り上げたお話が好きなので、結構面白かったです。
 ただ評価が高いYの誘拐はちょっと悲惨すぎて私には読みにくい。卑劣な誘拐のお話は基本的に好きではない。

No.13 8点 Kingscorss 2020/10/25 22:02
文庫版(短編『Cの遺言』追加、全体的な改稿あり)で読了。先に同著者の『アリバイ崩し承ります』と『赤い博物館』を読了済み。

いや、デビュー作らしいですが、他の既に読んだ新し目のやつ二冊より面白かったです。もちろん本格ミステリーゆえの細かい整合性のなさとかトリックや動機等に強引なこじつけとかはあるんですが、まぁ許せる範囲だと思いますし、何より全体的にうまくまとまっているのが良かったです。この著者の特徴?でもあるキャラクター性は相変わらず弱目なんですが、『アリバイ』、『赤い博物館』よりは気になりませんでした。

今回は3つの短編、一つの中編で構成されているんですが、どれもおもしろく、特に最後の中編『Yの誘拐』が素晴らしかったです。おおまかなあらすじの構成は多分すでにある有名な古典とかが骨子なんでしょうが、それをふまえても出来がよく、グイグイ最後まで読めました。最後のオチも素晴らしい。

また、文章自体も全体的に改稿したためか、とても読みやすく素晴らしい筆致で大変おすすめの一冊です。特に『Yの誘拐』での絶筆手記の文章がとてもよく被害者の心情が出ていてよかったです。

まだ未読ですが密室蒐集家も楽しみです。

No.12 7点 名探偵ジャパン 2019/07/08 11:10
序盤は作者得意の「トリックを中心に回る世界」的な話が連続しますが(缶のままお茶会って……)、最終話「Yの誘拐」で様相は一変します。
ここに書かれた子どもを誘拐された父親の手記が非常に読み応えがあり、作者がいつも書いている無味乾燥に近い文体は、トリックを際立たせるためにわざとしていることだったのか? と疑ってしまいました。
ミステリ的にも多重推理による反転が効いていて、中編という分量もほどよく、終始緊張感を孕んだまま読み終えました。とはいえ、「Yの誘拐」を十分堪能するには、それまでの三作の短編を読んでいることが必須ですので、これから読むという方は、「Yの誘拐」だけ読めばいいのかな、とは思わずに、飛ばさずに最初から順番に読んでくれるようお願いします。

No.11 8点 まさむね 2018/05/27 22:43
 これは、面白かった。私は好きです。
 何といっても、この連作短編の約半分を占める、最終話「Yの誘拐」が印象的です。賛否両論あるのだと思うのですが、誘拐サスペンスからの、終盤の怒涛の展開は純粋に楽しめましたねぇ。隠れた(?)名作と言ってもいいのでは?
 (文庫版の)前半3短編も、個人的には、パスラーとして実は好きなタイプ。「いやいや、気づくだろ!」的な突っ込みも楽しみの一つということで…ダメですか?
 総合的に、この採点としましょう。

No.10 8点 蟷螂の斧 2018/05/08 21:00
「Pの妄想」と「Fの告発」が前振りで、「Yの誘拐」が本命という構成(文庫版では「Cの遺言」が追加されています)。「P」と「F」はあまりピンときませんでした(苦笑)。本評価は「Y」のみの評価ということで。「Y」は手記形式です。よって、当然注意深く読みました(笑)。結果は案の定か?と思ったら気持ち良く、うっちゃられました。評価は結構割れているようですが、なかなかの傑作であると思います。

No.9 8点 メルカトル 2018/04/23 22:29
かなり以前から、おそらく10年位前から気になっていた作品。いやあ、読んでよかったですよ。Amazonでは賛否両論のようですが、あらあらこちらでも似たような現象が起こっているとは。

確かに文章はお世辞にも上手とは言えません。無味乾燥な感じで、翻訳物にも近いようなやや取っ付きにくい面はあります。さらに言えば個性や魅力がほぼ感じられないキャラ達も感心しませんね。しかしながら、いずれ劣らぬトリッキーなパズラー作品は、短編3作を読み終えた時点で7点は堅いなと思いました。
この連作短編集にはリアリティを求めてはいけないということは、タイトルからも分かりますよね。作者もこんなふうに思っているのでは?そんなものはクソ喰らえなんだと、こっちはパズルを解いて欲しいからミステリを書いているんじゃ、と。そうした意気込みや情熱を感じ取れるかどうかで、評価は分かれるのではないでしょうかね。ミステリはこんなものではないんだという意見も分からないではないですが、そこを大目に見てこの点数です。

というか、一にも二にも本作をこの点数に押し上げたのは最後の中編『Yの誘拐』ですね。本作のみで長編だったら9点を献上しても吝かではないくらいの傑作だと私は思います。
誘拐物の本質はサスペンスにあると個人的には考えますが、この作品はそこを飛び越えて本格ミステリとして堂々と屹立しております。面白いです。他の方の指摘するような瑕疵も少なからずありますが、それを加味しても十分鑑賞に堪えうる逸品ですよ。今までなぜ読まなかったのかと自分を責めたくなる程の衝撃でした。

No.8 4点 青い車 2016/03/01 23:33
読んだ当時はなかなか面白いと思ったのですが、後から思い返してみると奇抜な発想のみに頼った作品が多い印象で、話の肉付けのぎこちなさが目立ちます。レギュラーのキャラクター達も魅力に乏しいというか没個性的で、読み物としての面白さも高ランクとは言えません。抜群の発想力を整合性と両立させ得た『密室蒐集家』あたりと比べると、この時点ではまだまだ作者の筆力は発展途上だと思います。

以下、各話の感想です。
①『Pの妄想』 缶紅茶のロジックがユニークなのは確か。ただし相当強引でもあり、カーペットを使ったトリックも大疑問です。
②『Fの告発』 土台となるトリックは古すぎますし、それ以前に現実味がなさすぎます。これで周りの人間を騙し通せるとは思えません。
③『Cの遺言』 メッセージのトリックは4作中一番です。警察を必要以上に無能に描いているという難はあるもののベストだと思います。
④『Yの誘拐』 最初読んだときは衝撃の結末でしたが、後になって実はありがちの手法だとわかると魅力が半減してしまいました。身代金のアイディアは面白いものの、犯人がこの行動をとった説得力が弱いような。

No.7 6点 yoneppi 2014/11/15 19:44
以前から読んでみたかった本。ちょっとハードルを上げすぎたけれど、最後は驚かされたし満足はしている。

No.6 6点 ボナンザ 2014/08/30 14:58
昔ならもう少し高得点を付けたかも知れないが、つっこみどころが多すぎるので・・・。
P そもそも紅茶が傾くレベルなら誰か気づく。つか、缶入りの紅茶で茶会って無理があるだろ・・・。
F 一人二役をここまで日常的にするなら周りの職員は事情明かしておkな奴にするだろ。
C いくら鼻炎でも焼けてたら気づくだろ。
Y よくできてるけど、あれが彼であることを示す手がかりはない。
全体として意欲・アイディア・構築に力を入れたのはわかるが、話を盛り上げるための要素で無理が生じているのが残念。

No.5 7点 いいちこ 2014/07/14 17:52
シーマスターさんの感想に極めて近い。
冒頭の3作はパズラーに徹するため、読物としての装飾を徹底的に廃し、敢えて推理クイズのような作りにしたと思われる。ただ、解決に至るプロセスは一見ロジカルに見えて、「状況証拠からこのような解釈としても一応反証はなさそう」という程度の強引なもの。このテの趣向が相当に好きな人でないと付いていけないレベル。
「Yの誘拐」は一変してサスペンス色の強い読物になっており、真相の意外性は秀逸で、誘拐モノでこの手が残されていたかという衝撃的な着眼点。連作短編集らしい趣向も凝らされているが、正直この点は蛇足に映った。
毀誉褒貶の激しい作品だが、オリジナリティを評価してこの点数

No.4 7点 シーマスター 2013/10/02 23:46
かなり以前からこの中短篇集の文庫化を待っていたが、忘れた頃に・・・で、今年の6月に文庫化された様子。(刊行から9年目)

しかし最終作を除いた3作は・・決しておかしな日本語が使われているわけではないが・・とにかく魅力がない文章で、どうにも引き込まれない。内容も様々なミステリー要素が詰め込まれているが、「小説らしさ」がまるで感じられず殆ど推理クイズの「問題編+解答編」の世界。その解答編の推理もとてもロジックとは言えない思いつきの連続で正解に至っていたりで、要するに色々なアイデアを授かったミステリーマニアの中学生が一生懸命、辻褄が合うようにアレコレ取って付けながら書いたパズラーという感じ。

各作品に触れると
『Pの妄想』・・なぜクビにしない?ていうか正にツッコミどころ満載。
『Fの告発』・・これは驚いた。しかし「絶対ムリ」としか思えない。
『Cの遺言』・・凝り凝りだが古~い海外短編の類似ネタに理屈コネコネ。
しかし・・・・
『Yの誘拐』・・170ページ程の(本書で唯一の)中編だが、この数年間に読んだミステリーの中で最も衝撃を受けた作品のような気がする。それは前3作に依存するところも非常に大きい。
まず前半の「手記」のリーダビリティの高さ。前3作のトツトツとした推理クイズがいきなり切々と引っ張る誘拐サスペンスに変貌。私は手記の筆者にかなり感情移入してしまい、その焦燥、悲愴、絶望に浸り入ってしまったが、まぁこの辺は読者の環境により大きく異るところだろう。手記が終わって後半に入ると「例によって」トーンダウンするが事件の真相は・・私は手記での情動が大きかった分・・エモーショナルな乱高下とともに犯人の悪魔性に慄然とするショッキングなものであった。
そして前3作では「こんなもの(帯に書いてある)推理合戦じゃねぇよ」と思わせられるが最後にその意味が実感される。

本書を評価できるかどうかは作者の「読者を驚かすためなら多少の無理筋でも構わない」という意気込み、創作スタイルに共感できるかどうかだろう。

No.3 6点 E-BANKER 2013/09/23 16:53
「密室蒐集家」で第13回本格ミステリー大賞を受賞した作者が贈る連作短編集。
京大ミステリ研出身という現代ミステリー作家としては一流(?)の経歴を持つ作者らしいパズラー短編集。

①「Pの妄想」=本連作のレギュラーメンバーとなる四人の男女が登場。女性二人は精神科医と翻訳家。男性二人は警視庁の刑事と名探偵役のマンションオーナー。この四人が安楽椅子よろしく遭遇した事件を探究、解明していく・・・なんて浮世離れした設定! 本作のトリックはいかにも大学のミステリ研当たりで出てきそうなもの。そんなにうまくいくかなぁ(?)
②「Fの告発」=とある私立博物館内で起こった殺人事件、しかも指紋認証で電子的にロックされた密室で・・・。探偵役である峰原が解明した真相はサプライズといえばサプライズだけど・・・この○れ○○りトリックは相当無理がある。アリバイトリックはまずまず面白いとは思うが・・・
③「Cの遺言」=東京湾をめぐるクルーズ船の中で発生した女性経営者殺人事件。そして偶然にも事件に遭遇するレギュラーメンバーの女性二人。今回は船内というおきまりのCC設定というわけで、いかにフーダニットに工夫を凝らせるかが作者の腕の見せ所なのだが・・・。まぁパズラーらしいと言えばそうだけど。
④「Yの誘拐」=本作のみ二部構成の中編という分量の作品。とある過去の誘拐事件を例の四人が再調査するという展開なのだが、一旦峰原の慧眼で解決を見た後、驚愕のドンでん返しが待ち受ける・・・。ただ、このドンでん返しは賛否両論じゃないかな。「連作短編集」という観点からすれば確かにこういうオチもありかもとは思うけど。

以上4編。
これは「好きな人には応えられない」というタイプの作品。
①~③は作者らしい凝ったパズラーが並んでいる。(④は別)
ただ、「若書き」という感は拭えないかな。
ミステリ研の「犯人当てクイズ」なら文句ないところだけど、ここまでパズラーに拘るのなら、もうワンパンチ欲しかったなというのが本音。

まっ次作に期待というところでしょう。
(④はかなり強引。①~③のなかでは②かな。因みに本作はもともと2004年に上梓されたものに、今回③を新たに加えて文庫版として新たに発表された作品)

No.2 5点 江守森江 2009/05/22 16:53
タイトルから受ける期待感ほどの作品ではないが無難に纏めている。
この出版社の連作らしい構成。

No.1 1点 なの 2008/04/15 21:07
コレは酷い!
新本格の世界ってのは、
「関係者の指紋採取を行なわない警察」なんつーのがアリですかい!
こんなのが持て囃されてるのに正直怒りすら覚えます。


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