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[ 本格/新本格 ]
死の絆 赤い博物館
緋色冴子
大山誠一郎 出版月: 2025年12月 平均: 6.75点 書評数: 4件

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文藝春秋
2025年12月

No.4 7点 まさむね 2026/04/18 19:44
 シリーズ第3弾。前2作(の文庫版)と表紙カバーのテイストが異なっていたので(端的には赤くない…)、ぱっと見では同じシリーズと認識できなかった。勿論、サブタイトルに「赤い博物館」って書いてあるのだけどね。
 作者のシリーズものの中で、個人的にはこのシリーズが最もフィットしています。作者にとっても使い勝手のよい?設定なのかもしれません。今回もトリッキーな短編が揃っているし、短編それぞれにバラエティを持たせていることにも好感。作者のあとがきも良かった。
 一方で、推理に飛躍があるというか、「可能性」から「特定」につながるラインが見えにくい面はあろうかと(楽しく読ませてもらった上での感想だけど)。このシリーズは続きそうだし、次作も楽しみに待ちたいと思います。
 敢えてちょっとした突っ込みも入れつつ、各短編の感想を。
①三十年目の自首:時効が過ぎた殺人を自首してきた男のホワイ。ラストは想定しやすいか。
②名前のない脅迫者:事故で炎上した車のトランクから発見された死体は誰か。捻りが効いている。
③三匹の子ヤギ:コンビニへの立てこもり事件。音は聞こえなかったのかな?
④掘り出された罪:トリッキーさという面では一番か。でも重すぎて気づかれはしないか等々無理もあるぞ…。ちなみに捜査一課との推理合戦は必要だったか?
⑤死の絆:ホームレスの住む河川敷で、ホームレスと国会議員が殺されていた。これ、気づけなかったか?
⑥春は紺色:冴子の警察大学校時代の出来事。若き日の彼女が知れたのは悪くないけど、この真相は…飛び過ぎてないか。

No.3 6点 ミステリーオタク 2026/04/09 22:12
 「赤い博物館」シリーズ第3弾。

 カバーの表紙の顔イラストはこれぞ緋色冴子(館長にして本シリーズの探偵役)という雰囲気がよく出ていていいねぇ。
 「実はコレは館の掃除のおばちゃんです」なんてことはないよな。

 《三十年目の自首》
 その男はなぜ三十年前の殺人事件の自首をしてきたのか。そしてそれは真実なのか。
 ・・・こんな動機もありますよ、という作品。
 いろいろなwhyを考え出すのはこの作者の特長の一つ。だがこのトリックはいくら何でも成功しないだろう。警察がそこまで間抜けとも思えない。

 《名前のない脅迫者》
 これも発想は作者らしいと言えばらしいが、食事の手がかりの話など殆どの人は知らないだろうし、動機もそこまでする程のものとは納得できない。

 《三匹の子ヤギ》
 これもよくできているとは思うが、いろいろ緻密過ぎて冴子の説明についていくのに少し疲れた。

 《掘り出された罪》
 これが一番作者「らしい」作品かもしれないが、推理はぶっ飛び過ぎ。例えば「体質」に関して「・・かもしれない」と思いつくことはあっても「・・だ」と断定する根拠は全くない。
 まあ、この辺りも作者らしいと言ってしまえばそれまで、意外性のためには多少の非論理性は厭わない。

 《死の絆》
 表題作に相応しいなかなか突き抜けたストーリー。
 「思いつき」が「推理」になってしまうのは相変わらずだが、それはもういい。
 しかしこのケースで警察が「真実」に辿り着くことは難しかったとしても当時の関係者の身辺、行動を徹底的に洗えば犯人に辿り着くのはさほど困難ではなかったのではないだろうか。捜査に3万人動員しても犯人に至らなかったというのは少し不思議。

 《春は紺色》
 最後は冴子と同期の警視正の回想話。
 しかし起こる事象の数々はムニャムニャしているし(後から思えば)矛盾しているとしか思えないものもある。そしてそれらから真相への想像はテレパシーでもなければ思いつくことさえできないレベルの代物。

 テレパシー?
 そうか、緋色冴子はテレパシーができるのか。そう考えれば本書の作品の大半の解決編に納得がいく。あの世の人とのテレパシーもできるとすれば全てに納得がいく。

 作者はあとがきで「版元の許しがあれば今後もこのシリーズを続けていきたい」と述べているが、そうなったら自分も手に取り続けることだろう。

No.2 6点 メルカトル 2026/03/25 22:54
コミュ障でニコリともしない美貌の持ち主、犯罪資料館館長の緋色冴子警視。過去の事件の遺留品や証拠品、捜査資料の不審な点を鋭く見抜き、部下の寺田聡と共に再捜査に乗り出すが……。
著者渾身の力で紡がれた6篇をぜひ、ご堪能ください。

「普通の上司のようにあれこれ喋りかける必要がないので、気が楽」という聡と、訊き込みを強引に終わらせるクセが抜けない冴子の(息ぴったりの?)コンビは健在です!
Amazon内容紹介より。

如何にも玄人受けしそうな、凝ったパズラーの好編がラインナップ。
どれがと云うのではなく、どれも一定の水準をクリアしていて、しかも趣向を変えた作品ばかりで読者を飽きさせません。寺田聡と共に聞き込みに参加するようになったコミュ症の緋色冴子は相変わらずのクールぶりを発揮し、いかなる場面においても沈着冷静でスタンスを変えることはありません。これは一つの大きな武器でしょう。たまには焦る緋色、驚く緋色を見てみたいと望むのは私だけではないと思います。

そんなシーンが少しだけ見られるのが若き日の緋色冴子を描いた『春は紺色』ですね。ちょっとだけ意表を突かれています。それだけ意外だったんですよ。
人並由真さんが触れられている様に、あとがきが又ふるっていて楽しいです。其々の短編のジャンル分けに於いて、国内外の作品を引き合いに出して、タイトルをもじった元ネタを明かしたりしています。採点は厳しめですが、佳作揃いでトリッキーな作品集です。

No.1 8点 人並由真 2026/01/30 15:22
(ネタバレなし)
 今回は全5編収録。

 良い意味でとても安定した面白さで、個人的に比較・連想するならホックのレオポルド警部シリーズあたりを読む愉しさに通じる(加えて、石沢英太郎の牟田刑事官ものあたりの雰囲気にも近いかも?)。

 第4話のホームレスと国会議員の同じ現場での同時他殺? 事件など、ああこれはジェイムズの『死の味』(評者はまだ未読だが、ジェイムズご本人が来日の際に新作構想の形で御当人から話を伺った)ネタだな? と思いきや、本書の巻末に作者自身の各編のメイキング記事あとがきがあり、正にこれはそちらへのオマージュ、と語ってある。ほかにも各編がいかに既存の名作へのオマージュ、新世代作家からの挑戦という主旨で書かれたか、ミステリマニア作家としての愛情たっぷりに(特にネタバレはないと思う。そこにも感心)語られており、本書の評点もこのあとがきで一点……いや0.5点おまけ。
 
 その4話など冴子の推理がやや直感に過ぎるかな? というものもないではないが、最後の名探偵イヤー・ワン編がなかなかぶっとんでおり、良い感じにいかにも奇想パズラーという味わいで面白い。
(もし、この程度で? という方は、さぞミステリを読まれているのだと思うが。いやイヤミや皮肉ではなく。)

 いずれにしろ今回もとても楽しかった。作者自らが一番、自作の連作のなかではトリッキィなシリーズと自負しているんだけど、ここ(本サイト)ではあまり読まれないのね。少し残念である。


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