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[ 本格/新本格 ] にわか名探偵 ワトソン力 和戸宋志 |
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| 大山誠一郎 | 出版月: 2024年05月 | 平均: 5.67点 | 書評数: 3件 |
![]() 光文社 2024年05月 |
| No.3 | 6点 | パメル | 2025/11/05 19:20 |
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| 主人公の刑事・和戸宋志は、特に目立った手柄を立てるわけでも無い平凡な刑事だが、自身の周囲にいる人たちの推理力を飛躍的に高めてしまう特殊能力を持つシリーズの第二短編集。
「屍人たちの挽歌」ゾンビ映画を観ていた和戸は、劇場内で一人が殺されているのを発見する。扉は内側から細工され、密室状態だった。ゾンビ映画というメタフィクション的な要素を絡めた推理が鮮やか。 「ニッポンカチコミの謎」非番の日に祭りの屋台で飲んでいた和戸は、二次会の店へ向かう途中、誤って暴力団事務所に迷い込んでしまう。そこで男の遺体が発見される。暴力団組長がエラリイ・クイーンを崇拝している設定がユーモラスで、硬派な舞台設定と論理パズルのギャップが楽しめる。 「リタイア鈍行西へ」和戸は地方の駅で、急遽乗り換えた列車内で毒殺された遺体を発見する。旅情ミステリの要素を取り入れつつ、限定された空間での人間模様と推理の応酬が読みどころ。次々と解決の糸口を探り出す展開は、本格ミステリの醍醐味が詰まっている。 「二の奇劇」和戸は令嬢が主催する婿選びのパーティーに警護役として駆り出されるが、そこで参加者の一人が殺害されてしまう。令嬢の奇抜な発想と、それに負けない求婚者たちのワトソン力による頭脳戦が見事。 「電影パズル」和戸はMR技術を使った体験型アトラクションに参加するが、ゲーム中に参加者の一人が殺害されてしまう。デジタルな情報と現実の証拠が複雑に絡み合う。ワトソン力の影響を受けた人たちが、新しい視点や論理を導入して謎を解き明かすさまが読みどころ。 「服のない男」和戸は事件に巻き込まれ、身に着けていた全ての衣服を失った男が発見された現場に立ち会う。消失の謎に焦点を当てた純粋な本格パズル。論理的な手順を経て、服が消えたトリックとその背後にある犯人の意図が明らかになる過程が楽しめる。 「五人の推理する研究員」和戸はワトソン力という特殊能力を科学的に研究しているという謎の研究所に招かれる。研究員たちがその能力を自身に受けて推理を繰り広げるという、メタ的な構造を持った物語。論理的解決を追求しつつ、和戸刑事という存在の特異性を改めて印象付ける一編となっている。 和戸という地味ながらも善良な主人公と、時にユーモラスな推理を展開する登場人物たちによって、作品全体にほのぼのとした、ある種コミカルな空気が流れている。気軽に楽しめる推理小説を探している方に特におすすめ。 |
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| No.2 | 5点 | HORNET | 2025/01/13 21:59 |
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| その場に居合わせた人たちの推理力が格段に向上する、という特殊能力「ワトソン力」(本人は変わらない)をもった警視庁捜査一課・和戸宗志のシリーズ第二弾短編集。
主人公が私生活の場で殺人に遭遇し、限られた登場人物=容疑者の中で推理合戦を繰り広げるというテンプレート。人物描写や心情描写も浅く、完全に推理に特化した「推理クイズ」的な各編。そういう趣旨を踏まえた上で、肩の力を抜いてその推理クイズを楽しめればよい、という感じ。 7話で計250ページ、あっという間に読めて手軽に楽しめる。 |
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| No.1 | 6点 | まさむね | 2024/09/02 21:48 |
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| シリーズ続編の短編集。
警視庁捜査一課の刑事・和戸宋志には、秘めたる特殊能力がある。それは、謎に直面すると無意識に発動し、一定範囲(現時点では半径約20mらしい)内にいる人間の推理力を飛躍的に向上させる能力で、その名も「ワトソン力」。自分の推理力が上がるわけではないところも含めて可愛らしい。 この設定は、短編構成上も便利で合理的。事件が勃発したらほどなく「どうやらワトソン力が作用し始めたようだ」のヒトコトで、周辺の登場人物たちの推理合戦に持っていけるわけです。非常にコンパクトに、一定のロジックを楽しめるのは好みです。ただ、流れが同じになりがちなので、中だるみ感を抱かれるリスクも併せ持つことにはなりますね。 個人的に楽しかった短編は「ニッポンカチコミの謎」。ヤ〇ザの方々が推理合戦する姿がシュールなのだけれど、何といっても組長がエラリー・クイーン信奉者であり、全作品(「聖典」と呼んでいました)を神棚に備えているところが素敵。「暴力じゃねえ、ロジックだ」のご発言もいい味出しています。一方で、最終話はちょっと蛇足だったかも。 |
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