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[ 本格/新本格 ] 沈黙のパレード 探偵ガリレオシリーズ |
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東野圭吾 | 出版月: 2018年10月 | 平均: 6.80点 | 書評数: 10件 |
![]() 文藝春秋 2018年10月 |
![]() 文藝春秋 2021年09月 |
No.10 | 8点 | Tetchy | 2024/12/01 01:22 |
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4年ぶりにアメリカから帰国した湯川学が最初に手掛ける事件が本書。時は確実に流れており、湯川は准教授から教授に、そして友人の草薙も捜査一家の係長に昇進している。
東野氏は殺害した側を応援したくなるように、読者心情を煽り立てるが如く、被害者である蓮沼寛一という男を唾棄すべき男として描く。 この蓮沼寛一という男は殺されても当然だ、いや寧ろこのまま生きていてこの世にいることで次の犠牲者が生まれる、殺されるべき人間だとして描く。 沈黙は金と云うがそれぞれの沈黙がもたらしたものの中には金に値するものがなかったものもある。 沈黙を守ることは己の罪悪感や喋って楽になりたいという欲望との戦いだ。それに勝てないからこそ、人は沈黙を保てないのだ。それを保てたのが真の悪人である蓮沼寛一であったことは実に皮肉である。 ところで私はこのシリーズを警察小説として読んでいなく、天才科学者が警察では想像すらできない真相を科学的論証に基づいて犯人へと導く、いわば現代に蘇った東野式ホームズシリーズだと思っていたが、今回では警察捜査の意外な情報が色々と得られる。 例えば高速のNシステムによる捜査記録は証拠として提出しないことになっていること。提出すればNシステムの仕組みや監視場所の詳細を法廷で明かさなければならなくなるから避けるというのが警察庁の方針であること。 指紋を残さないために手袋を着用するが、今では手袋痕を採取して犯行に使われた手袋を特定し、犯人の絞り込みを行うこと、等々。 また実は本書の殺人方法は海外古典ミステリのトリックを応用しており、作中でもその作品について触れられている。メインの殺害方法の原典であるアガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』とジョン・ディクスン・カーの『ユダの窓』だ。敢えて作者はその作品を触れることで本歌取りであることを示している。 温故知新。それが本書の裏テーマだろう。本書を読むことでこれら古典ミステリにも触れてほしいと云うのが本音だが、単に不可能的趣味に特化した古典ミステリよりも犯罪に加担したそれぞれの心情をも描いた本書を読んだ後では逆に物足りなさを感じることだろう。 しかし探偵ガリレオこと湯川学もずいぶん変わったものだ。以前は単にすっきりと答えの出る論理的解明や方程式など論理的思考だけに興味があったのに、人そのものに興味を持っている。本書で彼が関わる定食屋「なみきや」の面々と常に相席となって会話を愉しみ、蓮沼寛一という悪をチームワークで殺害したことに心を傷める。単に悪いことをしたから彼らは裁かれるべきだとして割り切った答えを出さないのだ。 この湯川学の心境の変化は作中でも湯川の言葉を通じて語られる。彼は『容疑者xの献身』で友人の石神が真犯人を庇おうとした献身が自身が真相を暴いたことで水泡に帰したことを悔いていたからだった。 ドラマ『相棒』の杉下右京はどんな理由であれ、罪を犯した者は裁かれなければならないと徹底的な勧善懲悪論に立っているが、湯川は寧ろ殺されるべき人を殺した人々、罪を犯すことで救われる人々がいることを理解し、どうにか救済しようと苦心するのだ。 私は本書を読んだ後、これはもう一つの『さまよう刃』だと思った。娘を犯され、無残に殺された主人公の復讐は結局叶わなかったが、本書ではその無念を晴らすかの如く、復讐が成就する。 殺人は犯罪であり、被害者がどんな者であろうと罪は罪であるというのは真理であるが、それでも殺してやりたいと思うのが人間の心理だ。 真理よりも心理を採った湯川の今後の活躍が非常に愉しみである。 |
No.9 | 6点 | E-BANKER | 2024/04/17 17:38 |
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(今のところ)「ガリレオ」シリーズの最新作となる本作。
「加賀恭一郎」と「湯川」。作者が生み出した2大名探偵。どっかで共演してくれないものか。そういう気もしてしまう。 単行本は2018年の発表。 ~突然行方不明になった町の人気娘・佐織が、数年後遺体となって発見された。容疑者はかつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。だが、今回も証拠不十分で釈放されてしまう。さらに、その男が堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を「憎悪と義憤」の空気が覆う。かつて佐織が町中を熱狂させた秋祭りの季節がやってきた。パレード当日、復讐劇は如何にして遂げられたか。殺害方法は?アリバイトリックは?超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める~ 本シリーズでは、今までもフーダニットに関しては自明という場合も多かったけれど、今回のメインテーマは「仇討ち」である。ということは、元々の事件の犯人は明確で、「仇討ち」なのだから、その加害者も明確、ということになる。 ただし、そこは東野圭吾。簡単に終わらせるはずはない。 最終章に至るまで、二番底、三番底の真相が待ち構えている。この当りは、実に老練になったなあーという感想。序盤から精緻に組み上げられた仕掛けや伏線が最後になって効いてくる。 でも、ガリレオシリーズといえば、当然、「ハウダニット」の興趣も忘れてはいけない。 今回のHowもかなりのものだ。化学の知識があれば簡単なのかもしれんが、門外漢の私にとっては、「こんなトリックもできるのね!」っていう驚きがある。 いずれにしても、湯川もだいぶ変わってきた。推理マシーンから人の心の機微を理解できる血の通った名探偵へとシフトチェンジした印象。 ただ、こうなると加賀恭一郎との差があまりなくなってしまう懸念もありそう。まあ求められるものを書こうとしている作者にとっては悩ましい問題なのかもしれない。 まあでも、結局、続編を期待している自分がいるわけで、ぜひよろしくお願いします! (途中の、湯川と内海の競演シーン。これは、映像化の場面を狙いすぎでしょ・・・) |
No.8 | 6点 | take5 | 2022/05/01 16:30 |
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湯川の台詞、(容疑者Xを引き合いにした)
犯人を糾弾するだけをしにきた訳ではない、 これを見て私が思ってしまうのは、 いやいや、糾弾の結果悲劇が起こるなら、 それも犯罪に付随する悲しい宿命で、 そっちがリアルでしょうという事です。 ラストの致命傷か否かのくだりも、 変に救いをもたらそうとしていていらないかと。 何方かが書いていらっしゃいましたが、 映像化への伏線が多分に見られます。 ただし読みやすい事請け合います。 |
No.7 | 7点 | haruka | 2022/04/27 00:07 |
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過去作と比べて湯川の登場頻度が高く、名探偵ぶりも痛快だった。 |
No.6 | 7点 | makomako | 2022/03/13 11:59 |
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初期の東野氏の作品はどれも本当に素晴らしかったのですが、このところ新作はでるが何となく薄利多売で、語り口のうまさで持たせているといった感じがしていました。
本作品も読み始めるとすぐに犯人がわかりこれを語りのうまさでカバーするものかなあとやや心配気味でしたが、見事に良いほうへ裏切られました。 凝ったトリックとそれだけで終わらない物語の真相。 なかなかよかった。 |
No.5 | 7点 | ぷちレコード | 2020/04/03 18:10 |
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被害者遺族側の苦悩を描きつつ、トリックもどんでん返しもしっかりしていて、その上で久しぶりのガリレオコンビがやっぱり魅力的。
作品の中で流れた時間分、ゆっくりと登場人物の心情が変化していく様を描きつつ、そしてその変化が物語が進むには不可欠というそのバランスが素晴らしい。 |
No.4 | 8点 | 初老人 | 2020/01/02 18:00 |
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今までのガリレオ史上最高。と言いたい所ですが、容疑者Xと並ぶ、と言った方が正しいです。 |
No.3 | 5点 | パメル | 2019/05/30 19:44 |
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ガリレオこと物理学者、湯川が難事件を解明するシリーズ9作目の長編。
不可解としか思えない死亡事件を巡り、湯川と内海刑事が議論を繰り広げながら、捜査を進め仮説を立てては崩すというところが読みどころ。 また、推理の最中に某有名推理小説のタイトルを引き合いに出すという、海外古典ファンが思わずニヤリとしてしまう場面も用意されている。 最終的に辿り着く真相は意外性があるし、トリックも実現可能に感じる点は好印象。ただし、フーダニットとして読者は推理のしようがないし、トリックも専門知識が必要、そもそも、ストーリーに魅力を感じなかった。先が気になって仕方がないという感情が、残念ながら湧き上がらなかった。前作より約6年ぶりの作品だっただけに、長く待った分、ガッカリ度も大きい。 |
No.2 | 6点 | sophia | 2019/03/02 18:43 |
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ミステリーランキングで高評価なのでかなり期待して読んだんですが、意外と大したことない?多くの人を巻き込んだせいで、犯行の工程が無駄に細かくなっています。アリバイトリックはあれで成立しているんですかねえ。その気になれば別のところからも調達できるような物をフェイクに使うことが有効なのか。歌手の卵の凋落の経緯は陳腐ですし、登場人物のキャラ造形も類型的で没個性。こういうところは初期の作品の頃から変わってないですよね。終盤の囚人のジレンマ的なところは少し面白かったです。まあそこだけですかね。 |
No.1 | 8点 | mozart | 2018/11/02 08:38 |
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久々のガリレオシリーズ長編でしたが、期待を裏切らない水準の作品に仕上がっていて、作者の力量に改めて感服しました。ひねりを効かせた殺害方法に対する湯川の「科学的洞察(?)」による解明などは従来通りだし、背景になった真の動機の「意外性」やページが残り少なくなってからの「どんでん返し」なども十分に楽しめました。今作でも「真夏の方程式」同様、ガリレオの「偏屈さ」が影を潜めていましたが、その理由も「容疑者Xの献身」の結末を受けてのことであると分かったのはシリーズ愛読者としても良かったと思いました。
湯川がギターを弾く場面とかフレミングの左手とかは、内海刑事の「活躍」が目立ってきたことと同様、ドラマ化ないしは映画化を意識してのことだろうと思いますが(バーでの湯川と内海のやりとりなどドラマでの福山雅治と柴咲コウそのものだし)、これもまた作者一流のファンサービスの一環であると好意的に捉えることにしました。 |