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[ 本格/新本格 ]
ガリレオの苦悩
探偵ガリレオシリーズ
東野圭吾 出版月: 2008年10月 平均: 5.71点 書評数: 17件

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文藝春秋
2008年10月

文藝春秋
2011年10月

No.17 4点 ボナンザ 2022/12/18 23:58
前作を経てさらに湯川の内面に切り込むようになった第4作。

No.16 5点 take5 2019/09/08 20:54
ガリレオシリーズ?短編集
ドラマ(未視聴)に合う描写、展開。
ひたすら読みやすいけれど
きっと心には長く残らないと思います。

No.15 6点 mediocrity 2019/05/14 02:23
『探偵ガリレオ』同様、化学トリック満載の短編集。
今回はトリックはおまけで、むしろ湯川とその周辺人物の人間ドラマの方が主役に感じた。第5章『攪乱す』も良いが、第2章『操縦る』の恩師とのストーリが一番良かった。読み物としては『探偵ガリレオ』よりこちらの方が楽しめた。

No.14 6点 E-BANKER 2017/09/22 21:51
「探偵ガリレオ」「予知夢」、そして「容疑者xの献身」に続くガリレオ・シリーズの四作目。
「容疑者x」での悲しい結末を経て、湯川准教授にどのような変化が訪れたのか?
単行本は2008年の発表。

①「落下る」(おちる)=ここから内海薫刑事が湯川のパートナーとして登場する。警察の捜査に対して非協力的になっている(=これも「容疑者x」が尾を引いている)湯川に対して、内海の真摯な姿勢が彼の心を開かせることに。ただし、結果は彼女にとってホロ苦いものになってしまう・・・
②「操縦る」(あやつる)=今回は湯川の大学時代の恩師が登場。フーダニットについては最初から明々白々なだけに、どのような仕掛け(物理トリック)が使われたのかが鍵となる。ただし、それ以上に、湯川の恩師に対する心配りこそが本編の読みどころ。トリックについては正直よく分からなかったのだが、伏線がちょっとあからさますぎ(カヌーの件とか)。
③「密室る」(とじる)=こちらは湯川のバトミントンサークルの同級生が登場。彼の依頼に応じて不可解な殺人事件の捜査(推理)に協力することとなる。「密室」とは銘打っているものの、斬新なトリックがあるわけではない。単純な錯誤を使ったトリックだし、本シリーズらしくない作品のように思えた。やはりテーマは湯川の心の中なんだろう。
④「指標す」(しめす)=いわゆる“ダウジング”がテーマとなる作品で、本編のみが書き下ろしとのこと。これもトリック云々はあまり響かないんだけど、ダウジングに絡めた湯川の考察&推理過程がやや面白い。
⑤「攪乱す」(みだす)=“悪魔の手”と名乗る人物から警視庁に送られた怪文書、そこには連続殺人の予告と湯川を名指しして挑発する文面が記されていた・・・という粗筋。これもトリック自体は全く予想の範疇(もちろん細かな科学的知識は別として)なのだが、歪んだ真犯人の精神&犯行動機が印象に残る。

以上5編。
他の方々も触れているとおり、最初の短篇集二作品では“推理マシーン”のように書かれていた湯川だったが、「容疑者x」を経て犯人や関係者の心の内までも推理対象とし、まさに真の探偵へと昇華していく姿が描かれている本作。
トリックそのものはあまり見るべきところはなかったけど、小説としては面白みが増しているという評価に同意。

相変わらず「動機には興味がない」旨の発言はあるのだが、それでも犯罪や悪を憎み、正義を貫こうとする人間・湯川学の姿に憧憬の念を抱いてしまう。
もちろん次作も手に取るつもり。
(どうしても福山の顔が頭にチラついてしまう・・・仕方ないかな)

No.13 7点 Tetchy 2015/05/02 23:17
『ガリレオの苦悩』と冠せられた本書は『容疑者xの献身』を経てから書かれた短編で構成された作品で、各短編で見せる湯川の心情は『容疑者~』以前のそれとは明らかに異なり、それまで謎そのものに対する興味しかなかったのに対し、事件に関わる事での苦悩や事件の関係者の心情に対しての考察が見られるのが特徴的だ。

(以下ネタバレ含みます)


例えば1作目の「落下る」では自らの手でかつての学友であり、ライバルだった数学者石神を司法の手に渡すことになったショックからか、警察の捜査に非協力的になっている。

2作目の「操縦(あやつ)る」ではそれぞれ自分の大学時代の師が事件の犯人になっており、またもや自分の人生に関わる人間を司法の手に渡さなければならなくなる。本作の最後で学生時代の湯川を知る友永元助教授が科学しか興味のなかった湯川が隠された友永の真意を見破ることで人の心まで解るようになった湯川に驚きを示すのは、石神の事件を経てからこそだろう。

3作目の「密室(とじ)る」では大学時代の友人藤村の依頼で彼の経営するペンションで起きた事件の解明をするのだが、この作品にこそ湯川の心情の変化が如実に表れているように感じた。愛する者を守るために自ら罪を犯した石神。愛する者を信じたいがために湯川に事件の解明を依頼した藤村。二者に共通するのは殺害をした女性がともに過去の因縁―一方は別れた夫で今回はホステス時代のたちの悪い客―によって縛られ、そこから解放されようと願った故に已むに已まれずに実行した殺人であることだ。普通の生活を守るために犯行を実施せざるを得なかったとはいえ、罪は罪なのだと事件の真相を話す湯川の姿は石神の犯行を解き明かした時のそれと妙にダブった。

4作目の「指標(しめ)す」では母と娘の母子家庭が捜査の対象であり、これが草薙にとって『容疑者xの献身』に出てくる花岡母娘を想起させる件が出てくるのがニヤリとさせられる。貧しくも健気に生きている母娘が『容疑者xの献身』では犯人であったわけだが、本作ではそうではないというのも反歌のようで面白い。

そして最後の「攪乱(みだ)す」では湯川に勝負を挑む犯罪者が登場する。『容疑者xの献身』では湯川が天才だと認めた男石神と湯川の頭脳対決だったが、本作ではかつて学会で湯川に自身の研究について質問され、上手く応えられてなかったことで失墜した技術者が警察の捜査を手伝っている湯川に敵対心を燃やして犯行を実行するというものだ。石神の時は偶然による対決だったが、本書では湯川に恨み(逆恨み以外何物でもないが)を持つ者が湯川自身に対して挑戦状を叩き付けているところが違うのだが、犯罪に加担せざるを得なかった石神に対して苦悶していたのに対し、本作では科学の技術を殺人に利用して世間を騒がせている犯人に憤りを覚えて対峙している姿勢もまた違う。

と各短編について湯川の心情の、いや人間性の変化を述べてきたが、それぞれの作品が実は『容疑者xの献身』の要素をそれぞれ分配させて成り立っている事に気付くことだろう。
かつて知的好奇心を満たす為、興味本位で警察捜査に関わっていたが、事件に関わることで自らもまた心を傷つくことを知った湯川。かつての恩師や大学時代の友人の犯した罪を解き明かさなければならなくなった湯川。健気に生きる母子家庭の親子が巻き込まれた事件に携わる湯川。そして自らを敵とみなす犯罪者と対決する湯川。それぞれが『容疑者xの献身』に込められたエッセンスだ。

そして湯川はあの事件で人の心の深みを知り、また作中でも人の心を知ることも科学で途轍もなく奥深いと述懐している。これはかつて大学で理系を専攻し、トリックメーカーとしてデビューした東野氏が人の心こそミステリと作品転換したのに似ている。つまりこの湯川の台詞は作者自身の言葉と捉えてもいいだろう。
『名探偵の掟』で本格ミステリを揶揄しながら、敢えて現代科学の知識で本格ミステリを書いた『探偵ガリレオ』シリーズ。このトリック重視の作品に人の心の謎を持ち込んだ『容疑者xの献身』でこのシリーズも第2のステージに入ったと云えるだろう。

No.12 6点 ボンボン 2013/06/23 21:12
ドラマを見ての再読。
小説では、内海薫がかなりちゃんとした刑事だったことを思い出し、感心した。
ただ、トリックの見せ方や話の整理は、どうしてもドラマの方が勝っているように思う。
この作品辺りから湯川先生の人間の面白さが描かれだして、見所になっていく。

No.11 5点 simo10 2012/09/30 20:44
--(一応)ネタばれ含みます--

ガリレオシリーズ短編集第三弾。以下の五話で構成されます。

①「落下る(おちる)」:温度と圧力の関係を利用したシンプルな時限式落下装置。難し過ぎず、良問だと思います。
②「操縦る(あやつる)」:爆発成形による金属の流体的挙動とやらを利用した、ガリレオシリーズらしい大技トリック。素人が推測不可能なトリックなんか使うなよ、と最初は思っていましたが、やはりこのシリーズに限っては最低一つはこんなトリックが欲しいなと思っています。
③「密室る(とじる)」:ホログラフィを利用した密室アリバイトリック。インパクトに欠けるかな。
④「指標す(しめす)」:ダウジングに関するお話。結局種は解んないのね。
⑤「攪乱す(みだす)」:超指向性スピーカーとやらの悪用例。文中にもある通り、怪人二十面相よろしくといった犯人の登場で結構盛上がった。しかし学会において他人の発表の質疑応答中に自分の研究内容のほうが優れていることを示唆するのは普通のことなんだろうか?

初期の短編集に関してはTVの方が圧倒的に面白いと思いました。しかし、本作からはTV版オリジナルキャラの内海刑事が登場したこともあり、まるでTV版をそのまま見ているような感覚でサクサク読めました。TV版のアレンジ力も凄いが、東野氏の柔軟性も凄い。

No.10 6点 haruka 2011/10/09 12:04
内海薫の登場で面白さ1ランクアップ。理系ミステリの形は残しつつ、人間ドラマにシフトしている感があり、個人的にはそこが良かった。

No.9 5点 HORNET 2011/01/16 07:48
 湯川に対して一方的な恨みをもつ者の犯行を描いたラストの話が印象に残っています。一つ一つの短編が,しっかりした構想で書かれている感じがして流石東野氏だと感じます。大ハズレはまずありません。
 トリックは科学的なものが多く,ストーリー性のほうが重視された作品が多いとも感じました。

No.8 5点 ムラ 2010/12/16 21:41
いままでよりも綺麗にまとまっている感じです。
女性がパートナーになった事でよりいっそうドラマ間が増したかもですね。
トリックも奇抜なのが多くて面白いです。
しかし、最後の犯人が犯行を全部他人のシーンは、結構東野さんによくあるパターンだなと思ったり。

No.7 6点 江守森江 2010/06/12 17:46
ガリレオ・シリーズ第三短編集。
ドラマから生まれたキャラ内海に女性的感性から気付かせる事で草薙との住み分けもできている。
「落下る」「操縦る」は合わせてスペシャル・ドラマ化され〈物理トリックは映像で観たい〉を体現してくれた。
また「操縦る」での湯川の存在を利用したホワイダニットは秀逸。
その一方で「密室る」はやっっけ仕事感が漂う。
「指標す」は今までとは違い読者も推理出来る作品でタイトル通りな気付きのミステリとして良作。
「攪乱す」は対決パターンで犯人を誘き出す展開が、映像化を意識した楽しい作品。
作者の懐の深さとハウダニット的にはネタ切れ気味でシリーズが限界に近い事の両方を感じる。
ドラマと違い優秀な内海の登場でシリーズ的には格段に面白くなった。

No.6 6点 akkta2007 2010/01/24 20:34
ガリレオシリーズの短編集であった。
どの内容もそれぞれにまとまりがあり、納得できた。
中でも「操縦る」が面白かった。
どの短編も非常に読みやすかった!

No.5 5点 ミステリー三昧 2009/11/16 20:24
<文藝春秋>ガリレオシリーズの4作目(連作短編)です。※『聖女の救済』と同時刊行
『探偵ガリレオ』『予知夢』よりも楽しめました。
私的ベスト『落下る』・・・女性刑事「内海薫」の登場によってガリレオシリーズに新しい風が吹きました。女性ならではの観察眼と洞察力で草薙を圧倒する活躍ぶりが印象的です。トリックは相変わらずですが、湯川が「何か」から立ち直るきっかけとなった事件という点で、長編を読むにあたって唯一「予習」になりました。湯川に何があったのか?とても気になります。
今作では湯川と草薙のやり取りが控えめでした。その分、周りの人間(友人や先生)と交わることで湯川の「人間性」に深みが増した気がします。全編に渡ってラストが読み所です。特に『操縦る』の読後感は心地よい。科学者としての「芯の強さ」も強く感じました。

No.4 6点 2009/07/22 21:56
軽く読める短編集。読ませる文章はさすがだが、ミステリーとしてはいまいちかな。それから内海薫は、テレビドラマの影響が強すぎてしまう。

No.3 6点 白い風 2009/06/20 20:46
テレビで放送された”ガリレオ”シリーズの続編ですね。
一部、もうテレビで放送された物もありました。
また、初登場の(テレビでは既に登場の)内海薫のキャラが目立っていて良かったかな。
ただ、今回もトリック的にはビミョウですね。
「操縦る-あやつる」が犯行の動機を含め、一番面白かったかな。

No.2 6点 こう 2008/11/16 23:51
 ガリレオシリーズの短編集も三冊目になりましたが作品世界がシリーズキャラクターに合った題材が選ばれているのは流石です。
 個人的には「操縦る」が一番気にいっています。他作品も相変わらずトリックの解明を見せられて納得するだけでしたが内海刑事がシリーズキャラクターに加わり良いアクセントになっていると思います。ただ作品上女性ならではの視点からポイントに気づくことが多かったですが実際の捜査でそこまで男性捜査陣が「女性的視点」を見落とすことはない気もしました。
 容疑者Xの献身辺りから作者の狙いが大きなトリックから心理的なものにシフトしてきた気がします。それはそれで良いのですが大技系もたまには期待したいです。

No.1 7点 rintaro 2008/10/27 20:12
ガリレオの短編は基本的には科学トリックがメインなんだけど、それに頼らない、ちゃんとロジックでも押してくる作品もいくつかありました、個人的には「操縦る」が良かったです。「撹乱す」も湯川の犯人まで至る過程は面白かったんですけど、いつもの短編ならではのキレが無いんですよね、犯人に魅力が無いのもちょっと残念です。


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