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[ SF/ファンタジー ]
ラプラスの魔女
東野圭吾 出版月: 2015年05月 平均: 5.44点 書評数: 9件

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KADOKAWA/角川書店
2015年05月

KADOKAWA
2018年02月

No.9 6点 パメル 2022/02/18 08:48
気象の分野では科学の発達により、あるレベルまで可能になったものの、全てが確実に判明するわけではない。この先、完璧な予測能力を手に入れることはあるのだろうか。この作品は未来予測をテーマにしている。理系出身の作者ならではの科学知識を活かしつつ、不可解な事件をめぐるSFミステリとしてサスペンス豊かに描いている。
ある温泉村で、宿泊客の一人が硫化水素ガスによる中毒で死亡するという事件が起きた。事故の検証に訪れた地球科学が専門の大学教授・青江は、現場で奇妙な若い娘を目撃した。やがて青江は、その娘・羽原円華の不思議な力を知ることになるとともに、図らずも事件に関わっていく。
フランスの科学者ラプラスは、物質のあらゆる状態を知ることが出来るならば、未来は計算によって予測できるという概念を提唱した。いわゆる「ラプラスの悪魔」だ。本作では、このラプラスの概念を大胆に導入したうえで、悪魔や魔女としか思えない人物の登場とともに、予測を裏切る展開を次々と見せていく。
また円華のボディーガードを依頼された元警察官の武尾、事故死の調査を担当し、後に青江教授と知り合う麻布北警察署の刑事・中岡など、複数の視点から物語は語られていく。最初は、おぼろげで断片的だった事件の全貌や怪しげな人物の秘密が徐々に明らかになっていく構成になっている。
しかも、冒頭から円華の身の回りで起こる不思議な現象、現場に現れる謎の人物、ある映画監督の家族を襲った悲劇とその後を綴ったブログなど、その先を知りたくなるエピソードに満ちている。それまでの緊張感が最高潮に達するラストまで一気読み必至。

No.8 6点 makomako 2019/12/27 21:49
これはSFというべき内容なのだが、作者の巧みな語り口で読んでいて現実に起こってしまうような感覚になってしまいました。そのあたりはさすがに東野氏の小説のうまさだと思います。
 ただ読みやすく誰もがある程度楽しめると思いますが、特有の冷たい感覚があることは否めません。
 多彩な作者は多くの作品を次々と発表し、ほとんどがベストセラーとなっています。確かにどの作品もまとまってはいますが、円熟というより悪い言い方をすれば薄利多売なに感じます。
 初期の作品からファンでずっと読んできたものにとっては、じっくり時間をかけて中身の濃い長編を書いてほしいなあ。

No.7 5点 take5 2018/07/05 20:46
東野圭吾さんの作品では、
五指には入らないですね。
私の中ではですが。
設定が一般の人間でないならば、
尚更悲哀をきちんと示さないと
入り込めないのです。
リーダビリティは相変わらず高いです。

No.6 7点 Tetchy 2018/04/29 23:01
受験生だった頃、また仕事に行き詰り、先行きに不安を覚えた時、こんな風に思ったことはないだろうか?
全てが見通せる、全知全能の神になりたい、と。
本書はまさにそんな能力を持った人間の物語である。

本書の題名に冠されている耳慣れない言葉「ラプラス」、私はこの名前を中学生の頃に発売されたゲームソフト『ラプラスの魔』で初めて知った。ホラー系のゲームだったため、従ってそのタイトルに非常に似た本書もホラー系の小説かと思ったくらいだ。この両者で使われているラプラスとはフランスの数学者の名前で全ての事象はある瞬間に起きる全ての物質の力学的状態と力を知ることが出来、それらのデータを解析できればこれから起きる全ての事象はあらかじめ計算できる決定論を提唱した人物で、それを成し得る存在を“ラプラスの悪魔”と呼ばれている。
羽原全太朗博士が中心となって手掛けている、人間の脳が備え持つ予測能力を最大化させる謎とその再現性を目的にしたラプラス計画はこの数学者から採られており、そして突出した予測能力をこの計画によって得た甘粕謙人が「ラプラスの悪魔」であり、羽原円華こそがタイトルになっている「ラプラスの魔女」なのだ。

そんな最先端の脳研究によって生み出された類稀なる予測能力を持つことになった甘粕謙人と羽原円華。彼らはいわば究極の犯罪者だ。結局甘粕謙人が行った硫化水素中毒殺人はその日その時の天候、風向き、気温、湿度などの条件がその場所で揃わないと起こらない、天文学的確率の上での犯行だからだ。しかもそれを予測できるのは彼ら2人のみ。これがファンタジーでなく、近い将来に生まれてくる特殊能力を備えた人間ならば、まさに彼らの行う全ての行為は再現性不可能であり、完全犯罪が容易に成し得る存在となる。

まだまだ未知なるものが多い世界。しかしそれらが徐々に解明されつつある。
しかし全てが解明された果てに見える景色は決して幸せなものでないことを本書はまだ10代後半の女性を通じて語っている。我々の見知らぬ世界に一人立つ彼女がどことなく厭世的で諦観的なのが心から離れない。悪に転べば誰も捕まえることの出来ない究局の犯罪者となる、実に危うい存在。
見えている風景がどんなものであれ、羽原円華は生き、そして立っている。その強さをいつまでも持っていてほしいと危うくも儚さを感じる彼女の前途が気になって仕方なかった。

No.5 6点 HORNET 2018/04/01 14:25
 超能力とかの完全な超常現象モノかと思ったけど一応そうではなかった。けど、非現実的という点ではまぁ同じような感じかな。まさにSF。

 序盤はめまぐるしく場面や登場人物が変わって、各ストーリーが並行して描かれていく中で次第にそれが合わさっていく展開。相変わらず先が知りたくなり読ませる。
 犯人の(昔の犯罪の方)動機は、思った通りだった。ブログの内容が怪しくなってきた時点で、オチは分かった。
 最後、最初の事件の片棒を担いだ女までうやむやにされるのが腑に落ちないなぁ。

No.4 4点 測量ボ-イ 2017/11/26 16:34
リアリティに欠けるのはまあ許容する(小生そこはあまり気にしない)として、
映画監督の人生観に同意できなくて違和感。
特殊な能力(?)を持つ若い男女も、彼らはそういう事ができるのです・・と
言われると、はあそうですかとなるだけですしね。
この作品を、間をあけて再読することはないでしょう。
辛口ですが、この点数で。

No.3 4点 mozart 2016/11/18 18:22
相変わらず読ませ上手であることは確かです。ただ、いつものような、読者の感情に直に訴えかけてくる「あざとさ」はちょっと希薄でした。その割に、「全てを予測することのできる『超常者』であったとしても(上から目線?であったとしても)この世に無駄な個体などない」、というテーマが何とも薄っぺらく感じるのは、やはり設定に現実味がないせいでしょうか。
それにしても青江教授、地球環境学の講義をするということは「理系」だと思うのだけど、「ナビエ-ストークス」を知らなかったとは・・・(汗)。

No.2 5点 まさむね 2016/05/08 11:45
 「脳」を題材とした、作者らしい作品。ストーリーテラーぶりは相変わらずで、どんどん読まされます。その辺りはさすが。
 一方で、伏線もなく、読まされているうちに「へぇ~」と真相がわかって…というスタイルには、様々な評価があり得ると思いますね。それと、これは言いっこなしなのでしょうが、現実味が…。

No.1 6点 白い風 2015/08/13 22:40
久し振りのSFタッチに作品でしたね。 丁度『アルジャーノンに花束を』を読んだ後だったので、脳を触るのは普遍的なテーマなんだな、と改めて思った。 過去にも『変身』などの作品もあったけど、こちらの方が読み易かったですね。 これって続編があるのかな?


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