皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 社会派 ] さまよう刃 |
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東野圭吾 | 出版月: 2004年12月 | 平均: 6.65点 | 書評数: 26件 |
朝日新聞社 2004年12月 |
角川グループパブリッシング 2008年05月 |
角川グループパブリッシング 2008年05月 |
No.26 | 9点 | たかだい | 2024/11/16 06:44 |
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個人的には東野圭吾作品としても、ミステリー小説としても一番好きと言ってもいいくらい推しの作品
少年犯罪に巻き込まれて愛娘を亡くした男の慟哭と、ふとしたきっかけからタガの外れた男が起こす復讐の行方を描く テーマが非常に重く、社会派な印象が濃い。少年犯罪という人によって千差万別な意見で何かと議論が絶えないデリケートな問題を正面から描いている それに対する、被害者遺族側の解答というか、正直かつ危うい答えが「男の行動」であるように思う。私としては心情としては理解出来るし感情移入もできたが、人によっては完全拒絶で受け入れられない人もいるだろう。その辺りの両極さも、個人的に本作が良いと思えた一つの要因です とりあえず、(東野圭吾作品全体的に言える事だが)文章が読み易い事、ストーリーにミステリー特有の難解さがなく分かりやすい事から、あまり読書の習慣がない人にも読んでみて欲しい1冊 |
No.25 | 7点 | 斎藤警部 | 2024/05/05 09:09 |
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映画じゃない、君の復讐だ。 妻の忘れ形見である一人娘を、不良少年達からの凌辱の末、見殺しにされた主人公は、射撃の名手。 主人公は不良の一人をナイフで惨殺し、残った「ターゲット」を猟銃と共に追う。 警察は「ターゲット」と主人公を追う。 「通報者」の胸先三寸が主人公を動かす。 この暴力的リーダビリティには諸手を挙げて没入するしかない。 八方より嗜虐の雹が連打。 俺も鬼畜よのう.. と訝りつつこりゃあ愉しくて仕方が無い。 「ターゲット」の動向があまりに出し惜しみされるのはちょっとどうかな、とは思う。 ある女性の登場シーンだけ一風変わったメロドラマの風が通り過ぎるのは素敵だけど、もう少し短く非情に纏めてもいいかな。 いっそ全篇通してハードボイルド文体で書いてしまったら、どうだったろう。
“さらにもう一箇所、手紙を出しておかねばならないところがある。 そこへの文面が一番難しい。” チョィ役(と呼び捨てるには重い存在)の或る少女、この先ロクなばばあにならないだろうと思うと気も重い。 いや、ばばあになるまで心身共に生き延びられたら存外、社会的に尊い存在に変容しているかも知れない。そうであって欲しい。 【【 次のパラグラフ内はネタバレです 】】 まさかの⚫️⚫️トリックは、あるのか、ないのか、ないのか、あるのか ・・・・ まあ言っちゃえば、この⚫️⚫️⚫️⚫️ック暴露旋風のお陰で、結末が漂わせる一種の虚しさを抑え込んでいるようにも思えます。 最後「ターゲット」を殺す事は能わずとも、せめてその者にとって心が潰れる類の障碍を負わせる等、小説上の選択肢は無かったものかという気は致します。 とは言え「ターゲット」が本当にただただ人権解除されて然るべき人間産廃なのか、迷い無く判断するには踏み込んだ描写が足りず、モヤモヤもしました。(「◯◯◯ー◯」の箱の件、もしかして、匂わせてるのかな。。) 社会派スピリットは希薄と見ましたが、エンタメ魂は激熱です。 これでディーーープな社会問題提起まで娯楽性と渾然一体の体で奔出されていたら相当に深い爪痕を残せた事でしょう。 9点まで狙えたかも知れません。 |
No.24 | 4点 | バード | 2018/11/28 11:34 |
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自分にあわない作品だった。(あわなかった点1 謎がない。 2 登場人物に感情移入できなかった。 3 決局主人公(長嶺)が目的を達成せずに死ぬラスト。 4 テーマが暗すぎてエンタメとして楽しめない。)
全体的に話をまわすのに都合のいい展開も多かった気がする。上手く表現できないが、私には本作の登場人物が役者の演じるキャラに見えたということかな。(ドラマ向きかも、とも思った。) |
No.23 | 5点 | HORNET | 2018/05/13 17:53 |
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少年犯罪被害者の応報感情と刑事罰のアンバランスさ、というテーマは今や社会問題として定着している感があり、それをストレートに描いている本作品はオーソドックスで標準的という印象。複雑な仕掛けもないので、500ページほどある作品だが半日で読める。
被害者心理を強く代弁する作風だが、(当然倫理的なこともあって)その復讐心を完遂させることを肯定する訳にはいかず、被害者のみならず捜査にあたる警察も含めた「無念」を「無念のまま」描いた終わりにどうしてもなってしまう。おそらく読者としては被害者(であり被疑者)である長峰に共感して読むことが多いと思うが、そうなればなるほどラストは虚しいものに感じるだろう。 あと、鮎村も長峰と同じく極悪非道な行為により娘の命を奪われた立場なのに、なぜかこちらは「空気を読めない哀れな人」「厄介者」のように描かれているのはちょっと可哀想な気がした・・・ |
No.22 | 4点 | sophia | 2014/05/21 23:00 |
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ひねりがなく、人間描写も浅い。
こういうストレートな社会派作品には向いていない。 作中に何かギミックを仕込まないと読めない作家なのかなと思う。 |
No.21 | 7点 | 初老人 | 2014/05/20 16:44 |
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(ネタバレあり)
犯罪を犯した少年グループの人物像が余りにも救い様のないものであるため(特に主犯)、娘を殺された長峰に終始肩入れしながら読み進めた。それだけにラストは消化不良の感がある。結局主犯の少年が生き延びた事に意味はあったのか。それはまた別の話、という事なのだろう。 密告者の正体は中々意外性があって良かったと思う。 |
No.20 | 8点 | Tetchy | 2013/12/18 23:05 |
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人を殺すと云う事についてその意味を問う問題作だ。
物語は長峰が菅野快児を探す物語と長峰を追う警察の捜査の模様、そして菅野にいいなりになって犯罪に加担した中井誠の3つの視点で語られる。 長峰のパートでアクセントとなって加わるのが丹沢和佳子という女性だ。長峰が菅野捜索の過程で滞在するペンションの経営者の娘だ。しかし彼女には最愛の息子を目を離した隙に公園の滑り台から転落させて亡くしたという位過去を持ち、その事故が原因で離婚をし、いまだに哀しみから抜け切れない日々を送っている。その彼女が長峰の協力者となり、一緒に菅野快児を探す手伝いをする。 この彼女の心情が実に上手い。同じ子供を亡くした親同士という共通点があり、片や事故で亡くしながら、その割り切れなさで蟠りを抱えて生きている。そこに娘を非人道的な所業によって殺害された男が犯人に復讐するという目的を持って現れる。それは彼女にとって長年抱えていた蟠りを別の形で晴らすことに繋がると見出したのだろう。しかし殺人はよくないという理屈と感情のせめぎ合いの中で半ば衝動的に手を貸す、心の移り変わりが、決して明確な理屈で語られるわけではないのだが、行間から立ち上ってくるのだ。 尤も、彼女が長峰に協力しようと思ったのは実の息子を幼くして亡くしただけではない。彼女は長峰の娘が犯人に凌辱されるVTRを目の当たりにしたからこそ、ただ同情するだけではなく、何が正しいのか見つけるために行動したのだ。そのことを父親へ告げる408ページの台詞を私はすっと読み流すことが出来ずにしばらく何度も噛みしめてしまった。 作中、長峰がこう述べる。「法律は人間の弱さを理解していない」と。秩序を守るために論を以て判断し、判定を下すのだ。人の命を奪うのではなく、罪を憎んで人を憎まず、更生させてその人の人生を変えるのだと。しかし長峰が云うように残された遺族はそこまで大人になれない。人間が感情で生きる動物だからこそ、そんなに簡単に割り切れないのだ。 最愛の娘を亡くした恨みを晴らすために犯人を追う。この私怨を晴らす物語はハリウッド映画などで山ほど書かれた物語だ。しかし東野圭吾にかかるとこれが非常に考えさせられる物語に変わる。それは通常アクション映画のような活劇ではなく、復讐を誓う一介のサラリーマンとそれを取り巻く警察、犯人、協力者たちが我々市井のレベルでじっくり描かれるからだろう。つまりアクション映画のようにどこか別の世界で起こっている物語ではなく、いつか我々の狭い世間でも起こり得る事件として描かれているから臨場感があるのだ。 自らの正義を成就すべきか、それとも復讐のための殺人は決して許される物ではないという世の道徳を採るべきか。物語の舵を取った時からどちらに落ち着いてもやりきれなさが残ると想像される物語の行く末を敢えて選び、そしてそれを見事に結末に繋げるという作家東野圭吾の技量は改めて並々ならぬ物ではないと痛感した。このような「貴方ならどうしますか?」と問われ、ベストの答が決して出ない、論議を巻き起こす命題について敢えて挑むその姿勢は単にベストセラー作家であるという地位に甘んじていないからこそ、読者もついていくのだろう。 |
No.19 | 9点 | ナノ | 2013/07/10 17:03 |
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良作であることは間違いないでしょう。
正義の意味の最中で揺れ動く登場人物たちのリアルな心情はほぼ全ての方々が感情移入できると思います。 私は長峰を遠慮なく手伝う側の立場を最後まで崩さずに読みましたが、きっと他の見解から読破した方も居るでしょう。そういう方たちと議論をしてみたいと、ちょっと思いますね。 |
No.18 | 5点 | 蟷螂の斧 | 2012/05/31 18:22 |
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(ネタばれあり)ラスト近くまでスピード感もあり、感情移入もでき、かなりの高評価(ミステリーとしてではなく)でしたが、ラストは肩透かしを食らった感じです。個人的には幼いころ時代劇(映画)をよく観て、仇討は当たり前と思って育ってきたので、この結末はかなり違和感がありました。江戸時代と、現代では法制度は当然違うのですが、心情的には今も昔も変わらないような気がし、小説なので何とかならなかったのでしょうか・・・(湊かなえ「告白」のようなラストを期待しすぎたのかもしれません) |
No.17 | 6点 | yoneppi | 2012/05/26 21:21 |
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かなり重い小説。最後に軽いトリックがあったけれど。 |
No.16 | 6点 | つよ | 2011/05/02 23:58 |
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社会派。 |
No.15 | 10点 | kenvsraou7 | 2011/03/06 23:16 |
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ミステリよりではないのですが
私の中ではこの作品がものすごく印象的だったので。 作品のテンポや迫力はさることながら 娘を殺された父親が犯人たちを追い詰めていく姿には 共感を抱き心が燃えるように読ませていただいた。 そして小説というものが 人の心の中にある激情を揺さぶられるとは思いもせず感動した。 こういう作品にこれからも出会いたい。 |
No.14 | 4点 | 江守森江 | 2011/01/12 14:00 |
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読書スタイルが、感情移入せずに読むタイプであるため、提起された社会問題に対しての考察がストーリーに勝ってしまい、重いテーマと相俟ってなんら楽しくなかった(私的な読書志向とは対極にあった)
私は「起こした事の責任から何人たりとも逃れられない」との立場で、年齢や精神状態等による法的救済は社会悪ですらあると考えている。 法律の在り方として、被害者側に対する救済が大切だと思うのだが、全く整備されていない。 関連して「少年法の撤廃」と「死刑の存続及び速やかな執行」を支持する。 義務教育課程で自己責任について学問以上に徹底教育すべきだと主張しておく! この様なテーマだとミステリーの書評にならず脱線してしまう。 |
No.13 | 6点 | ムラ | 2010/12/16 20:02 |
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なかなか考えされられる話だった。
結末がどうであれ、バッドエンドにしか行かないというのが重い。 個人的には、主人公よりも、殺人を犯した少年よりも、第三者の方面で情報を垂れ流しにしてた者が一番の悪に感じた。 |
No.12 | 6点 | STAR | 2010/02/26 16:20 |
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ミステリーというよりは人間ドラマだと思います。なのであまり好きではなかったけれど、少年犯罪とその被害者家族という重いテーマに取り組んでいると思います。 |
No.11 | 6点 | spam-musubi | 2009/12/15 19:24 |
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途中で考えました。
これ、主人公が復讐を果たせなかったとしたら、すごく すっきりしない気持ちになるだろうな…。 でも、仮に主人公が復讐を果たしたとしたら、それはそれで すっきりした気持ちになれないんじゃないかな…。 結果、予想通り、もやもやの残る読後感でした。 正義はどこにあるのか。 法を犯してでも復讐を果たそうとする男か、 感情を押さえてレイプ犯を(結果的に)守ろうとする警察か、 未成年の更生を錦の御旗に掲げる少年法(及び弁護士)か… 答えのでない物語にあえて挑むのが、この作者らしいです。 ただですね、この話、まるっきりミステリーではないですよ。 |
No.10 | 7点 | Take | 2009/12/05 13:08 |
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読中、ずっと主人公を応援していた。
やはり自分はこうした物語とは無関係でいたいものです・・・。 和佳子の存在はよかったなぁ。より感情移入させられた。 |
No.9 | 7点 | ZAto | 2009/10/18 12:31 |
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「警察は市民を守っているわけじゃない。警察が守ろうとするのは法律のほうだ」と自嘲しながらも、
もちろん法治国家として復讐を容認することなど絶対に許されないという葛藤と向き合うことになる。 この警察側の描写が物語に深みを与えている。 |
No.8 | 7点 | ある | 2009/10/04 01:36 |
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「さまよっている」のが,実は被疑者少年を追い詰める容疑者の刃ではなく,警察権力の刃だということが重かった。
映画が公開されるとのことだが,残酷なシーンもあるのでその辺はどうなんだろう? 容疑者Xの~でも感じたが,東野さんは哀しい中年を書かせると実に上手い。 |
No.7 | 8点 | VOLKS | 2008/11/16 17:06 |
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重く難しいテーマに取り組んである意欲作。
読者が、主人公のとる行動に対して「肯定」するか「否定」するかによって物語の評価は分かれると思うが、読後に感じたことは、自分は「肯定」側にいた、ということだった。 ミステリィ感は薄いが、それほど大きなキーになるとは思わなかった「密告電話」が最後の最後まで引っ張られていたのには、唸らされた。 |