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ZAtoさん
平均点: 6.55点 書評数: 109件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.109 2点 謎解きはディナーのあとで- 東川篤哉 2011/04/16 15:32
本屋大賞の受賞作にはわりと好感を持っていたのだが、
今度は完全に私の嗜好から外れてしまった。
面白さの尺度は人それぞれなのでどうのこうの言わないが。

失礼ながら・・・

「選考員様はアホでいらっしゃいますか?」
「選考員様の目は節穴でございますか?」
「選考員様はズブの素人よりレベルが低くていらっしゃいます」
「失礼ながら選考員様、やはりしばらくの間、引っ込んでいてくださいますか」

No.108 9点 アヒルと鴨のコインロッカー- 伊坂幸太郎 2011/04/11 00:15
伊坂幸太郎は本作において、出来事、会話から小道具まで、すごい量の伏線を仕掛け、すごい量を回収して見せた。その量は『アヒルと鴨とコインロッカー』をラブストーリーにし、サスペンスにもした。ある意味では日本人と外国人の人間ドラマにもしたし、青年の成長を綴る青春物語にもした。そして何よりも「広辞苑」と「広辞林」の違いだけでピンと来るような凄玉の推理マニアではない大半の読者に対して、見事なドンデン返しで目を瞠らせるミステリーを提供した。
改めて本作のタイトルを振り返りながら、創元推理文庫であることにニヤリとしてしまった読書だった。

No.107 5点 魔王- 伊坂幸太郎 2011/04/11 00:13
作中に「深刻な夫婦喧嘩の最中には、憲法改正や自衛隊なんてどうでもよくなる」という意味の台詞がある。それは実にもっともなことなのだが、今は夫婦喧嘩そのものが幸せであることの証明となってしまったのではないか。

目に見えない力に不安を抱くより、目に見える恐怖に驚愕している現実のなんと不幸なことなのだろうか。

No.106 7点 警官の血- 佐々木譲 2011/04/11 00:11
エピローグでは祖父の代から受け継がれたブリキ製のホイッスルを首から提げた和也が、颯爽と犯人逮捕の現場に臨む。
惜しむらくはそれまでホイッスルにまったく物語が与えられていなかったことで、やや力づくで三代続いた戦後六十年の警官物語をまとめられたような気もしたが、このエピローグは嫌いではなかった。

No.105 4点 廃墟に乞う- 佐々木譲 2011/04/11 00:09
表題作の『廃墟に乞う』が秀でているのは、傷を負う者同士の不思議な連帯を描きながら、時代論と都市論をさりげなく織り込んでいったことにあるのかもしれない。
それだからこそ、この表題作を囲んだその他の短編の凡庸さが惜しまれてならない。

No.104 6点 制服捜査- 佐々木譲 2011/04/11 00:09
町に潜む巨悪を炙り出す最終話『仮装祭』が圧巻であることに異を挟む必要はないのだが、あえてミステリー色を廃して、北の果てで地道に生きようとしながらも前科者ゆえに居場所を追われる土木職人を描く『割れガラス』が、私が文庫本のパッケージから勝手に想像していた世界観に近く、印象に残る一編となった。

No.103 6点 警官の紋章- 佐々木譲 2011/04/11 00:07
佐々木譲のいわんとしていることは小難しい思想信条ではなく、権力を戴く者はプロフェッショナルとしてのプライドと意地を持てということに過ぎない。単に組織のヒエラルキーを批判するだけの作家ならば、そもそもこの作品は成立しない。
プロとしてのプライドを持つ警察官であるならば、キャリアの監察官であっても英雄として描くことをまったく厭わないのだ。
ここでいう「紋章」とは単なるバッジや身分ではなく、警察官としてあるべきプロ意識、プライド、意地、頭脳、勇気、正義の総称なのだろう。今野敏が創造した竜崎伸也ならばここに「原理・原則」が加わるのかもしれないが。

No.102 8点 警察庁から来た男- 佐々木譲 2011/04/11 00:04
強大な権力を持つ警察機構のここまでの腐敗を読まされると極端な警察不信に陥るかといえばそうでもなく、むしろ、フィクションとはいえ、こういう本が普通に店頭に平積みされて広く愛読さる自由を喜ぶべきなのだという逆説も成り立つではないか。

No.101 4点 笑う警官- 佐々木譲 2011/04/11 00:02
一読して思ったのは「安直だったな」ということ。
佐々木譲という作家の名前を私の中で必要以上に肥大させすぎてしまったのかもしれない。
あるいは「警察小説」というジャンルに確固たるルーティンを求めすぎていたのかもしれない。
どちらにしても読後には失望感が残った。

No.100 7点 死神の精度- 伊坂幸太郎 2011/04/11 00:00
この小説のユニークな点は、本来ならばドラマチックな見せ場となりそうな「可」と「見送り」の判定の場面をクライマックスとして機能させない点にある。
言い換えれば伊坂幸太郎は「生」か「死」かという究極の選択にはまったく興味を示さず、また死に行く者たちへの慈しみも薄い中で、どちらかといえば死神が人間の「生」を観察する様を面白がっている風にもとれる。
死という単純にして深遠なテーマがあるならば、当然、人間とは何ぞやという設問に行き着く。そして伊坂幸太郎の見事なところはその重厚長大な(?)テーマをちらつかせながらも、面白主義の一歩手前の位置で悠然と立っていることなのではないか。

No.99 7点 沙高樓綺譚- 浅田次郎 2011/04/10 23:56
最初に作品コンセプトを知ったとき、アイザック・アシモフを想像した。しかし中身は六本木をステージとした百物語だった。
それにしても、こういう小説は同世代や年下の作家の手によるものではなく、私よりも長く生きている、人生経験豊富な作家に読書時間を委ねるに限ると思った。30~40代の作家に人生を語られると、どうしても鼻白みながら粗探しに終始してしまいそうな気がするからだ。その点、雀師としてもあの黒川博行も一目置く浅田次郎ならば申し分がなかったといえるのではないか。

No.98 6点 活動寫眞の女- 浅田次郎 2011/04/10 23:53
私はリミュエール兄弟によるキネマトグラフの発明の紹介から、やがて話はマキノ省三、尾上松之助、永田雅一のエピソードへと移っていくこの小説を撮影所華やかりし時代の日本映画への、そして不遇の天才・山中貞雄への限りなきオマージュとして読んだ。
これをミステリーにカテゴライズするのは些か心苦しいのだが、ミステリアスという意味での幻惑感は捨て難い。

No.97 9点 小暮写眞館- 宮部みゆき 2011/01/09 13:58
宮部みゆきのことだから、牧歌的なエピソードを積み重ねていきながら、終盤に怒涛の急展開を見せるのではないかという仄かな予感もあった。
しかし読み進めていくうちに、この物語にそんなトリッキーな技は必要ではないのだと思いはじめていた。それどころか、極端なエンディングは勘弁してくれとも思うようになっていた。本を読み進めながら私がそんなことを考えたのは初めてだといってもいい。
『小暮写眞館』は才能溢れるミステリー作家がミステリアスなエピソードを解決するべく捜査や聞き込みを描きながらも、これはミステリー小説にはならなかった。ジャンルとしては青春小説であり、主人公・花菱英一の成長物語だ。
とにかく、ここまで残りページ数が少なくなっていくのが残念だと思わせてくれた小説も珍しい。

No.96 7点 終末のフール- 伊坂幸太郎 2011/01/09 13:51
フィクションを読むということは、小説家が構築した世界観の中で人物たちが動かしていく物語を読むということだ。読者は小説の中に起こる事件を知り、それが恋愛なのか、憎悪なのか、心理の迷宮なのか、直面した人物たちがどんな行動をし、どんな情動を受け、その詳細を確かめながらページをめくっていく。今まで経験した読書とはそういうものだった。
ところが伊坂幸太郎『終末のフール』は少し違った。読者は常に「自分ならばどうするのか」という仮定を想像しながら物語と伴走していかなければならない。
さすがに伊坂幸太郎は良質のフィクションを創出していくが、こういう設定の中で物語や人物の心情がリアルであるのかどうかはわからない。これもまた伊坂の想像でしかないからだ。でも面白かった。

No.95 7点 煙霞- 黒川博行 2011/01/09 13:46
そもそも『煙霞』にしろ、『蒼煌』『螻蛄』『悪果』と黒川のこだわりなのだろうが、タイトルが難しすぎる。そもそも「煙霞」などという言葉を知っている日本人がどれほどいるだろう。意味は読んで字のごとく「煙のように立ちこめたかすみ、もや」。カッコいいとは思うもののどんな内容の小説なのかまるでわからない。『陽気なギャングが地球を回す』ほどくだけろとは思わないが、ひと目でキャッチできるタイトルをつければ、もっと売れるのではないかと思う。
タイトルのセンスはともかくとして、『煙霞』は間違いなくプロの作家の仕事だ。二億数千万の金塊をめぐって疾走する痛快エンターティメント。一気読みさせる面白さは保証されているようなものなのだからもっと目立ってもいい。
それにしても結局、黒川博行は『蒼煌』から『迅雷』まで自分のフィールドワークをごった煮にして『煙霞』という作品に仕上げたわけで、ここまで読者の予測を裏切り続けた黒川作品も珍しい。

No.94 7点 オーデュボンの祈り- 伊坂幸太郎 2011/01/09 13:42
伊坂作品の通奏低音である“神様のレシピ”というテーマの中で、バラバラになっているピースをはめ込んでパズルを完成させる作業は「ミステリー的作為」ではあるのかと思う。実際、この物語はどのような決着を辿るのか、先行きの予測がまったくつかないまま読み進めていくことにミステリー読みの醍醐味はあった。もっともカカシの優午が予見した結末になるように伏線を散りばめていく手法は、本来、作家が小説のプロットを編んでいく過程の作業であるはずで、それを物語そのもののに投げてしまうのは面白いといえば面白いし、新しいといえば新しい。でもズルイといえばズルイことかもしれない。

No.93 6点 フィッシュストーリー- 伊坂幸太郎 2011/01/09 13:40
正直いうとこういうのは一人楽屋落ちのようで個人的にはあまり好きではない。確かに一種のシリーズを読む楽しさはあるとは思うものの、私はあれとこれがリンクしていることを見つけて楽しむことを徒労と感じてしまう読者なのだ。
 例えば『動物園のエンジン』の主人公の友人が『オーデュボンの祈り』の伊藤であることに意味はないし、河原崎が『ラッシュライフ』の主人公のひとりの父親である必然も感じない。『サクリファイス』の黒澤などいきなり冒頭から「出落ちかいな」と突っ込みを入れたくなった。
 しかし、そうなると『フィッシュストーリー』の半分も楽しめないのかというとそうでもない。もうここまでくれば私にも伊坂ワールドがこういうものなのだという事前承諾がある。悔しいが黒澤など、好きなキャラクターには活躍を期待してしまう自分もいる。

No.92 5点 蜘蛛の糸- 黒川博行 2011/01/09 13:36
「大阪人がみんなそんなん思われたらかなわんなぁ」という声が飛んできそうだが、それが黒川節の魅力であるのだから仕方がない。
一読して、まさに “しょーもなさ青天井” というベタな内容。ただ黒川博行の小説であるのだから、知る人は知る、読む人は読むという相当に突き放したスタンスの一冊という印象。
黒川のファンであって、「ほんとに黒川博行はアホなもん書きよったな」ということを面白がれるセンスがなければ楽しめない。ノリとしてはヤクザ映画の添え物で公開されるようなお色気喜劇といったところだろうか。

No.91 4点 ラッシュライフ- 伊坂幸太郎 2011/01/09 13:33
時系列と語り手を変えて同じ場面が描写されると少しうんざりする。人物Aと人物Bが同じ事象を別視点で見ることの面白さはあっても、時系列をめまぐるしく変えられるとややこしくなって、頭の中を整理する徒労そのものが面倒にもなる。なによりも見逃した伏線が無数にあるのではないかという不安感が募ってしまうのだ。
結局、100%面白がっていない自分というのも見えてきた気がする。逆にいえば、それは一体何なのだろうという興味がないわけでもなく、そのあたりを考えることで、この後の読書を楽しくする術があるような気もするが、さてどうなるものだろうか。

No.90 9点 ゴールデンスランバー- 伊坂幸太郎 2011/01/09 13:27
構成が既読の作品と比べて抜群に素晴らしい。私が違和感を抱いていた「過剰すぎる伏線のバラ撒き」「種明かしの冗長さ」「物語と無関係な台詞の羅列」といったものが、むしろ『ゴールデンスランバー』ではことごとく効果をあげていたのではないだろうか。

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ZAtoさん
ひとこと
人間の感情や心理、理不尽な社会背景こそがミステリ。
トリック、パズルに特化しすぎただけで、人間やドラマが描けていないもの。
そういうものと推理クイズとの違いがよくわからない。
よって巷でいわ...
好きな作家
黒川博行 高村薫 島田荘司 横山秀夫
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