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[ 青春ミステリ ]
小暮写眞館
宮部みゆき 出版月: 2010年05月 平均: 6.33点 書評数: 6件

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講談社
2010年05月

講談社
2013年10月

新潮社
2016年12月

No.6 7点 猫サーカス 2023/06/19 18:43
全四話で構成される本書の謎は、一枚の心霊写真から始まる。撮影時にはいなかった人物が、写真では顔だけぽっかり浮かんでいるといったあり得ない状態で写っている。そんな写真を押し付けられ、謎を解くことになるのが主人公の高校生、花菱英一だ。さびれた商店街の真ん中に位置する「小暮写真館」に引っ越してきた直後の出来事だった。彼は写真に写っている人たちを知る人がいないかを探し、近所の家を一軒一軒訪ね歩くことから始める。その結果、写真の謎はすべて解明される。しかし、謎を解いただけでは物事は終わらないことを思い知ることになる。例えば、こんな形になってまでも写真に写り込み、何事かを訴えたかった幽霊たる人の思いとは、果たしていかばかりのものであったのか。誰かに何かを伝えるための手段としても、これではあまりにも悲しすぎた。相手に直接言葉を使って伝えることが叶わない、独りぼっちの苛烈な状況が思い浮かぶからだ。決して声高ではないが、ここには物言わぬはずの写真が、かくも多くの言葉を持っている驚きと、その言葉を口にできない、もの言えぬ環境の現実がさりげなく描かれている。著者は、そこから言葉と会話による人と人のつながり、結びつきの大切さを主人公の成長具合と合わせるように、ゆっくりと慎重に語っていく。この柔らかさは宮部みゆきならではだろう。

No.5 6点 よん 2022/09/06 12:59
花岡英一の変わり者の両親が所得した念願のマイホームは、下町の寂れた商店街に建つ廃業した写真館だった。亡くなった店主の幽霊が出るという噂も流れるなか、この写真館で現像したという奇妙な写真が持ち込まれた。
ミステリや幽霊譚の味わいを加味しながら、英一の日常を描き、その過程で一家が抱える心の傷や、死者への哀悼の念などを、古びた写真館を介在させて鮮やかに浮かび上がらせている。

No.4 6点 ボンボン 2014/12/23 09:30
恋の話だった。宮部みゆきが書くとこうなるのか。ホラーなミステリも、宮部さんが書くとこうなるんだ。理不尽に辛いことがあっても前向きに温かく。
今回のアイテムは、写真と電車と映画とマラソンと・・・ほかにも随分いろいろ詰まっていて楽しかった。
キャラクターでは、テンコが魅力的。この人の心情は、ほとんど説明されないけれど、読む側でいろいろ推察できて深い。
やはり文章が巧くてスルスル読めてしまうので、とても良い作品なのに、爆発的な高得点にならない、じんわり系。

No.3 3点 ayulifeman 2012/02/24 23:41
主人公の性格や周辺環境、友達関係に共感できず、作品に没入できずに終わってしまった。主人公に感情移入できないでこの長さの書物はつらい。

No.2 9点 ZAto 2011/01/09 13:58
宮部みゆきのことだから、牧歌的なエピソードを積み重ねていきながら、終盤に怒涛の急展開を見せるのではないかという仄かな予感もあった。
しかし読み進めていくうちに、この物語にそんなトリッキーな技は必要ではないのだと思いはじめていた。それどころか、極端なエンディングは勘弁してくれとも思うようになっていた。本を読み進めながら私がそんなことを考えたのは初めてだといってもいい。
『小暮写眞館』は才能溢れるミステリー作家がミステリアスなエピソードを解決するべく捜査や聞き込みを描きながらも、これはミステリー小説にはならなかった。ジャンルとしては青春小説であり、主人公・花菱英一の成長物語だ。
とにかく、ここまで残りページ数が少なくなっていくのが残念だと思わせてくれた小説も珍しい。

No.1 7点 白い風 2010/12/26 22:46
第一声は700ページで長かった(笑)
前半は”心霊写真”の謎を探るミステリタッチだね。
でも、ラスト4話「鉄路の春」は花菱家族の亡き妹への想いや主人公栄一と事務員柿本の淡い恋愛話に変わっていったね。
トータルで見ると軽い青春小説なのかな?(ページ数は軽くないけど(笑))


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