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[ 本格/新本格 ]
名もなき毒
杉村三郎シリーズ 2
宮部みゆき 出版月: 2006年08月 平均: 5.62点 書評数: 13件

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幻冬舎
2006年08月

光文社
2009年05月

文藝春秋
2011年12月

No.13 6点 猫サーカス 2023/08/18 18:07
社内報編集部のアルバイト女性が、次々とトラブルを起こしながらも、自分は悪くない、これは誰それの責任だと言い募って部内を混乱させているところから始まる。彼女の履歴書には、一流会社で働いてきた経歴が書かれてあったが、実際には素人以下の仕事ぶりだったのだ。思い余った編集部は、やむなく馘首する。その結果、彼女は途方もない悪意に満ちた報復処置を実行に移すのであった。これとはまた別に近頃、青酸カリによる連続無差別殺人事件が起こっていた。コンビニのジュースやお茶に毒物を仕込んで、人が死ぬのを待つという卑劣な犯罪である。ところが、やがてこの二つの事件が奇妙な形で結びついていく。人が集う場所では否応なしに何かしらのランクが生じてくるものだ。しかしその差異は、人間自身が生み出すものである。だからこそ余計に「差」をつけられたくないと思う気持ちが芽生える。そんな普通の人間の「普通」といいう感情を徹底的に突き詰めていこうとする。ごく当たり前の聡明な人間が、なぜ悪意に染まっていったのか、それを何とか描き出そうとする真摯な視線がここにはある。日常生活の中で起こりうる犯罪、誰に対してということではなく、世間に向けての犯行。これはまさに現代社会ならではの事件なのかもしれない。

No.12 5点 パメル 2022/06/28 08:30
物語は、首都圏で発生した連続無差別毒殺事件を、主人公・杉村の会社から解雇された女性アルバイトの巻き起こす騒動が絡み合う形で織りなされる。他者との関係を無化したうえで成り立つ無差別の凶悪犯罪と、人と人が接触を持つがゆえに起こる人間関係のトラブル。対照的な二本の縦糸は、根底に怒りがあるという点で共通する。自分だけが幸せになれないことへの怒り、自分を受け入れてくれない周囲に対する怒り、理想と現実とのギャップが生んだ怒り。
もちろん、それらは客観的には理不尽極まりないもので、身勝手で自己中心な言い分だと切り捨てることはたやすそうに見える。だが、この作品は紋切り型の正義や正論を上から安易に振りかざすことを許さない。
怒りはやがて毒になり、他者をそして自分自身をも侵す。だが作者は、喜びも悲しみも噛みしめてきた年長者の姿を、幼い子供のあどけなさを、生きることへの確かな「敬意」を持って描く。
だからこそ、負の諸相が手加減なしに描かれた怖い作品なのに、読後には人間や人生や社会に対する前向きな思いが胸に残る。

No.11 2点 makomako 2021/07/20 21:24
 宮部氏の初期の小説は好きでした。どれも興味深く面白かった。
 過去形で書いているのはこのシリーズの「誰か」もかなりいやな感じであったが、本作品は私にとってとても耐えられないほど嫌なやつが出てくるのです。
 途中でやめようかと思ったが我慢して読んでいるとこいつはさらにサイコパスの本領を発揮してますます嫌がらせをしてくる。勿論反省などまるでなし。
 こういった人に実際に悩まされたことがあるため、読んでいて不快なことこの上なかった。
 私にとって読書は最高の楽しみの一つなのですが、こんなに読んで苦痛を味わわされるなんてやってられません。
 もう当分宮部さんの作品は読みたくないな。

No.10 5点 あびびび 2015/11/09 16:59
いろいろな毒が盛り込まれていて、興味深い立ち上がりだったが、後半は尻すぼみの感じがした。特に原田と言う女性。どんな形で暴走するのだろう…と期待?したが、誰もが考えそうな結末になった。

その点が物足りなかった。主人公も、もう少し毅然とした方が、話がまとまりやすいような気がした。

No.9 5点 白い風 2013/07/28 00:02
「誰か」の続編の杉村三郎シリーズですね。
続編だけに人間関係は把握し易かったけど、原田いずみの存在はどうなのかな。
きっと色んな”毒”を表現したかったと思うけど、メインと思う連続無差別毒殺事件の印象が薄れちゃった気がする。
ちょっと詰め込み過ぎた気がするんだよね。
杉村家族もギクシャクして私には後味が悪かったです。

No.8 6点 ayulifeman 2012/02/20 23:12
淡々としていて読みやすい。毒殺の犯人探しよりも原田いずみのおっかなさが気になって仕方がなかった。
最後に役者が主人公宅に大集合。とんでもない結末が・・・おこらなかった。

No.7 7点 ボンボン 2012/01/29 22:52
"毒"なので変に広がって、犯人とその恨みの対象と実際の被害者がずれていく。
犯人たちの心情が、どこまでも憐れで救われない。
理屈どおりに「こうだから、こうなった」という単純明快なことは一つもなく、地味だけれど恐ろしい、思うに任せない日常の現実が書かれている。

No.6 4点 HORNET 2011/01/16 13:25
 これまでの氏の作品を読んでいて,この厚さを見ると,「何かがあるんだろう」と期待して読んでしまいますが,正直,何ということはない作品でした。作品の質としては可も不可もないですが,この長さということを合わせて考えると,マイナス評価になってしまいました。

No.5 5点 isurrender 2009/07/22 01:57
初めて読んだ宮部作品ですが、期待した割に・・・って感じでした

No.4 8点 daiki 2009/07/14 20:59
さすが、と感じました。けど昔の作品(『火車』『理由』)の方が僕は好きです。

No.3 6点 itokin 2008/09/21 09:00
前半の展開から後半の盛り上がりを期待したがしりすぼみ。
宮部さんにしては平凡・・・。

No.2 7点 VOLKS 2008/07/22 11:32
久しぶりに宮部作品を読んだが、身近な問題や近年の社会事象、そして事件・・・いくつもの事柄を上手く絡め合わせて仕上げてあり、さすがだと痛感した。また、その割りに読みやすい文体で作られているということも、宮部作品の特筆すべき事だと感じる。
ただ、あまりにも悲しい事件の背景が辛い。

No.1 7点 akkta2007 2007/10/03 12:57
初めての宮部作品であったがとても楽しめた。
どんな作品だろうかと思いつつ読み始めたが・・・満足であった。
現代社会における問題点を巧みに小説の中に取り入れ、最近あちらこちらで耳にするような事件をも思わせる雰囲気の中で、ミステリーを構成し、犯人を追い詰めていく・・・
納得の出来る内容であった。


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