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[ 本格/新本格 ] 希望荘 杉村三郎シリーズ 4 |
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宮部みゆき | 出版月: 2016年06月 | 平均: 6.17点 | 書評数: 6件 |
小学館 2016年06月 |
文藝春秋 2018年11月 |
No.6 | 4点 | メルカトル | 2023/03/18 23:00 |
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家族と仕事を失った杉村三郎は、東京都北区に私立探偵事務所を開業する。ある日、亡き父・武藤寛二が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽を調査してほしいという依頼が舞い込む。依頼人の相沢幸司によれば、父は母の不倫による離婚後、息子と再会するまで30年の空白があった。果たして、武藤は人殺しだったのか。35年前の殺人事件の関係者を調べていくと、昨年発生した女性殺害事件を解決するカギが隠されていた!?(表題作「希望荘」)。「聖域」「希望荘」「砂男」「二重身」…私立探偵・杉村三郎が4つの難事件に挑む!!
『BOOK』データベースより。 そこはかとなく眠気を誘う、物凄くゆる~い連作中短編集。正直こんなに詰まらないとは思いませんでした。あ、飽くまでマイノリティの意見です。優しいんですよ内容が。その辺宮部みゆきの人間性が滲み出ていると云うか、今一つ人間の深奥に踏み込めないところにこの人の限界を感じてしまうんですよね。 まず杉村の年齢が分からない、多分中年なんだろうけど。彼の人間味はとても感じられますが、手付金が五千円とか信じられません。あり得ないでしょう。そんな親切な探偵が主役なので、まあ人情ものみたいな物語になるのはやむを得ないでしょう、その分中身がヌルいと感じられて仕方ありません。 得意の社会問題を取り上げたり東日本大震災を背景に語ったりしていますが、ミステリとして伏線を回収するとか、意外性を追求するとか、そうした姿勢が全く感じられず、いささか退屈でした。 もうね、自分の感性が信じられなくなりそうです。これだけ世間的に高評価なのに、私にはその面白さが理解できない、何度こんな苦汁を味わわなければならないのでしょうか。長尺だった分余計に辛さが増しました。 |
No.5 | 6点 | パメル | 2022/01/22 09:44 |
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今多コンツェルン会長の娘と離婚した杉村三郎は仕事を失い、愛娘とも別れ、東京都北区に私立探偵事務所を開設する。ある日、亡き父が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽についての調査依頼が舞い込む。はたして真実は―。
心優しく、控えめながら事件に隠された人の内面を地道な捜査で解き明かしていく杉村三郎。表題作の息子に昔の殺人をにおわした老父の告白「希望荘」、繁盛していた手打ちそば屋店主の突然の失踪「砂男」など、杉村が4つの謎に取り組む。ふとした悪意や欲望が心をむしばみ、日常生活の裂け目から暗部に落ち込む犯罪者の姿が哀しい。 しかし、予測がつかない物語を通して、人の世に心の闇はあるが希望の光もあるという作者の温かなメッセージが伝わってくる。妻と別れ、孤独を抱えた杉村が、人情味豊かな地域の人々に囲まれて暮らす姿にも、作者の作品世界らしい救いを感じる。 |
No.4 | 6点 | zuso | 2021/05/16 23:32 |
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謎が解けてから、さらに深くえぐる感じ。人間の心理に踏み込んでいく果敢さが、事実以上の真実を引き出してミステリの陰影を濃くしている。 |
No.3 | 6点 | 八二一 | 2020/12/08 12:56 |
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各々の苦難を背負って人生を生きる登場人物たちの哀愁や葛藤の描写が見事。 |
No.2 | 7点 | take5 | 2019/11/16 23:54 |
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今3/4読み終わりました。
短編集ですが杉村シリーズは 長編をかつて読んだのを忘れていました。 前を知らなくても変わらない良作です。 希望荘は2話目のタイトルで、 選ばれたのが皮肉にも必然にも感じられます。 さあ残り1話、宮部みゆきが東日本大震災を どう扱うか楽しみです。 |
No.1 | 8点 | ボンボン | 2019/02/24 22:59 |
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長編3作をかけた長い長い助走の時代を経て、ついに「私立探偵」杉村三郎の誕生である。
これまでのように偶然事件に巻き込まれてしまう一般人としてではなく、調査会社の下請けで調査員をしながら「探偵事務所」を開業し、探偵として、着手金5,000円で(ことによってはタダで)人探しなどを請け負うのだ。そこに至るまでの経緯も丁寧に物語られて、大河ドラマは続いていく。 今後は、事件ごとの中・短編になるようだ。 本作4編の調査依頼は次のとおり。 『聖域』:ご近所のアパートで亡くなったはずのおばあさんを街で見かけてしまった。これってどいうこと? 『希望荘』:老人介護施設に入居していたおじいさんが亡くなる前、「昔、人を殺した」と言っていた。真相が知りたい。 『砂男』:蕎麦屋夫婦の夫の方が突然の家出。妻は「夫は不倫をしていた」と言うが、どうも様子がおかしい。どうなってるの? 『二重身(ドッペルゲンガー)』:東日本大震災のその日、東北の方に出かけていたと思われる行方不明の商店主を探してほしい。 呑気な日常の謎だと思ったら大間違い。ご近所さんや知り合いの知り合いに持ち掛けられるちょっとした人探しや調査モノから、宮部みゆきワールドのとんでもなく複雑な人間ドラマが掘り出され、結構な大事件として解決していく面白さ。 特に表題作の「希望荘」は、杉村探偵の地道な聞き込みと観察力が活きて、見事な解答にたどり着く良作だ。 |