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魔王
伊坂幸太郎 出版月: 2005年10月 平均: 5.60点 書評数: 20件

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講談社
2005年10月

講談社
2008年09月

No.20 5点 猫サーカス 2023/01/09 18:29
念じたことを他人に喋らせることが出来る、という特殊な能力を身につけた兄が語り手である表題作「魔王」、弟の恋人が語り手である「呼吸」、そのどちらにも一貫して、憲法第九条の改正や、ファシズムについての議論が繰り返し出てくるが、あとがきには「それはテーマではない」と作者自身が明記している。確かにこの小説は、そうした物事への問題提起に終始しているわけではない。何かもっと大きなものに向かって開かれているし、憲法改正が是か非かというような単純な小説ではない。警告でもないし、社会批判でもない。作者は憲法改正や国民投票と真正面に向き合いながら、この国に生きていること、それがどういうことであるのかを誠実に切り取ったのだろう。時代は少しずつ変化している。私たちはその変化に気づかずにそれに順応していく。この小説に登場する兄も弟も、それに全身で抵抗しているように思える。気づかぬうちに順応されてたまるかと。得体の知れない不気味さを味あわせつつ、抜けるような澄んだ空をも垣間見せる不思議な小説。

No.19 6点 ぷちレコード 2021/04/22 22:19
表題作の「魔王」では、奇妙な超能力に与えられた兄弟の物語。背景には、軍事力をめぐる改憲と漠として広がるファシズム的空気がある。他人に思い通りのことを喋らせる念力が突然、兄に備わり彼がその力により日本中を覆う不穏な流れに逆らおうとする。兄の超能力には、一瞬ながら敵と一体化するほどの極度のシンパシーが存在するということで、それがこの小説の一番の不気味さになっている。
「呼吸」では、不思議な確率に魅入られた弟が描かれる。シューベルトの「魔王」が引用されているが、人の心は時として思わぬところへ赴く。しかし、あの歌曲の幼子のように無理矢理さらわれていくのではない。本書は政治よりも、人間の意思のそうした「得体の知れなさ」を描き出しているようだ。

No.18 3点 バード 2020/05/21 00:59
伊坂さんの良さは、重めの題材をも軽快に感じさせる書き味、と思っている。しかし日本国憲法九条改正を扱った本書は、重苦しい題材が重いままの仕上がりで、作者の良さが出ていない。

安藤兄弟の微妙な超能力(?)と詩織ちゃんのふわっとしたキャラは伊坂さんらしさがあり気に入ったが、ストーリーは上記の理由から好きじゃないです。
また、締めもこれで終わり?、という唐突な印象を受けた。

No.17 7点 ayulifeman 2015/01/26 23:45
図書館で借りて「魔王」→モーニング連載で「モダンタイムス」→何年かたって文庫のモダンタイムス(上)→文庫の「魔王」という流れでの再読。
政治のこととか民衆心理とか考えながらもスラスラと読めるし、先は気になるしでとても楽しい読書でした。次の読書は、まだ手元にないけどモダンタイムス(下)の再読。楽しみは尽きない。

No.16 4点 mohicant 2013/08/05 09:28
 設定は面白いのに、それを生かしきれてない感じがした。

No.15 3点 simo10 2012/06/26 22:36
ミステリ性は皆無。娯楽性もありそうで実はない。なんか敷居が高いというかメッセージ性が強いというか、あまりにも自分の求めているものとかけ離れていました。
モダンタイムスが続編にあたるらしいですが、読みません。

No.14 8点 NAP 2012/02/13 17:30
暗いです。でも楽しめました。

No.13 6点 ムラ 2012/02/10 11:30
そして『モダンタイムス』へ続くと。
印象としてはモダンタイムスと対になってる感じで、個人の力と検索の曖昧さを訴えているような感じだった。モダンタイムスでは逆にシステムの力と検索の力を訴えているような感じだったので、どっちが正しいのか結局わからなかった。
でも『モダンタイムス』で作者の言いたいことなんてほとんど読者には伝わらないって言ってたから自分の考えでいいのかな
単品のしての評価というよりは『魔王』と『モダンタイムス』二つをあわせての評価って感じになってるかも。

No.12 6点 E-BANKER 2011/10/05 22:34
表題作とそれから5年後のストーリー(「呼吸」)からなる作品。
他作品より若干「硬派」な印象がしましたが・・・
~会社員の安藤は弟の潤也と2人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて1人の男に近づいていった。何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語~

何となく考えさせられた。
表題作の主役・安藤(兄)も、「呼吸」の主役・潤也(弟)もある特殊能力を持ち、それを試しながら世の中に挑戦(?)していこうとする。
まぁ、特殊能力という設定自体、作者の十八番とするところですし、使い方がうまいですね。
兄の「腹話術」能力っていうのは、ともすると漫画チックになりそうなのに、「政治」とか「ファシズム」といったかなり硬派なテーマのせいで、ついつい読まされてしまいました。
(政治家に対する感情や思いっていうのは、まさにそのとおりだねぇ)
個人的には、潤也の特殊能力は相当羨ましい!
(夢の「単勝ころがし」がいつでもできる!)
ただ、ミステリーとは呼べない作品でしょうから、評価はこんなものかな。
ラストはちょっと中途半端なので、続編(「モダンタイムス」)に期待します。

No.11 4点 haruka 2011/04/24 23:02
主人公の設定は面白いと思うのだが、その設定が生かし切れていない印象のまま終わってしまった。

No.10 5点 ZAto 2011/04/11 00:13
作中に「深刻な夫婦喧嘩の最中には、憲法改正や自衛隊なんてどうでもよくなる」という意味の台詞がある。それは実にもっともなことなのだが、今は夫婦喧嘩そのものが幸せであることの証明となってしまったのではないか。

目に見えない力に不安を抱くより、目に見える恐怖に驚愕している現実のなんと不幸なことなのだろうか。

No.9 5点 touko 2010/02/14 15:02
伊坂幸太郎初体験。人気作家なので、予約が多く、図書館ですぐ借りれるものを適当にチョイスしたのがこれ。

なるほど、ネット世代の今の学生とかにすごくウケそうな内容ですねえ!
政治的な内容を扱ってはいるんだけど、メッセージ色は薄く、文章も世界観もライトで単純化されているけれど寓話とまではいかず今っぽさがあり、荒唐無稽なSF的要素もあるわりに、ラノベ的な閉じたオタクっぽさは感じられないし、どこかで聞いたような惹句の連発がちょっとオシャレな感じさえする……売れるわけだと納得しました。

No.8 10点 ジャバウオック 2009/08/29 21:26
この作品はもっと評価されていいはず。
ゴキブリをせせらぎと名付けるセンスは最高だし、
政治とSFを上手く絡めている。

No.7 5点 isurrender 2009/07/22 02:28
本当に、まぁ楽しめた、作品

No.6 7点 シュウ 2009/04/06 19:02
サンデーに連載されている漫画版が面白かったのでその流れで読みました。
前編の「魔王」は安藤の、後編の「呼吸」は詩織の一人称で語られているので犬養や潤也、マスターといった他の人物の考えが分かりにくいということが
オチの曖昧さとあわせて逆に色々想像を掻き立てるものがあり、後半の犬養のあのセリフはもしかして・・・というように読み終わった後余韻に浸りながら
答えのない推理を楽しめました。とりあえずこれを読んでも漫画版のオチのネタバレにならなさそうな所が嬉しいです。

ただ漫画と合わせて読んだのでこの評価ですが、この小説単品だともう少し落ちるかも。

No.5 5点 だい様 2009/03/13 09:16
ファシズムと暴走する群衆の恐ろしさ・・何気ない日常生活に流されることの危うさ。
とメッセージ性の強さを感じました。

No.4 4点 おしょわ 2009/02/28 23:24
読みやすいけど、作品としてちゃんと終わってない気がします。

No.3 7点 Take 2008/10/27 21:38
モダンタイムスを先に読んでしまっていたので、やや微妙な採点・・・。
「魔王」⇒「呼吸」⇒「モダンタイムス」と読むべきですね。

今の日本の風潮がよく現れている気がした。たしかに、洗脳されそう。
いろいろ伏線もありそうだし、文庫になったら「呼吸」も読んでみたい。

No.2 6点 VOLKS 2008/08/23 18:28
男兄弟という主人公設定が他の作品群とダブル感じはあったがこれは全く別物で、メッセージ性は強いが斬新さに欠ける気がした。政治色が強く出ているのも気になる。が、シューベルトの魔王というチョイスは素晴らしいと感じた。

No.1 6点 ばやし 2007/12/15 19:43
悲しい話でしたね。作中に出てくる宮沢賢治の詩が凄い良かったです。


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