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[ クライム/倒叙 ]
マリアビートル
殺し屋シリーズ
伊坂幸太郎 出版月: 2010年09月 平均: 6.86点 書評数: 14件

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角川書店(角川グループパブリッシング)
2010年09月

KADOKAWA
2013年09月

No.14 5点 パメル 2022/01/11 09:44
「グラスホッパー」の続編だが、前作を読まずに読んでしまった。やたらとキャラクターの立った、エキセントリックな殺し屋たちが何人も登場して右往左往するという趣向のユニークさが光る。
舞台となるのは、東京駅発盛岡行きの東北新幹線「はやて」。物語は全編、その車中で展開する。新幹線だから数回しか駅に泊まることがない。まずこの設定が絶妙。幼い息子に瀕死の大怪我を負わせた仇に復讐するべく、「はやて」に乗り込んだアル中の「木村」。闇社会の大物から密命を帯びた、文字通りの「蜜柑」と「機関車トーマス」が大好きな「檸檬」の腕利きコンビ。運の悪さにだけは自信のある、一見気弱な青年の「七尾」、そして悪意のような怜悧さと狡猾さを併せ持つ中学生の「王子」。いかにも作者らしい一癖も二癖もある連中だが、どこにも逃げ場のない移動する空間の中で、丁々発止の渡り合いを演じてゆく。
スピーディーでスリリングでユーモラス。殺し屋たちは文字通り命懸けだし、実際いくつもの死体が出てきたりもするが、どこかとぼけた味わいがある。エンターテインメント小説として読ませるし、いろいろと考えさせられる小説でもある。
余談ですが、ブラッド・ピット主演でハリウッド映画化するらしい。全米公開日は今年、2022年4月だそうです。

No.13 7点 斎藤警部 2020/08/16 19:03
「でもね、いつもだったらわたしも、手加減してあげて、ってこの人を宥めるんだけど、さすがに今回ばかりは、止められないわね」

始発から終着駅まで風をまくって快走、攻めのユーモアが邪魔せず加勢する、タイムリミット応用型クライムサスペンス。 霞の中に忍ぶフーダニット、フーズホワットの睨み。 伏線シャバダバもそう煩くなく、ジャストフィットの意外性! 目覚まし時計と催眠剤がまさか同じ目的で、とはな。。。 

“一瞬のことではあるが、激しい音を立てて、後方へと走り抜けて行く。穏やかに疾駆することは許さないぞ、刺激があってこその人生だ、とお互いを揺らし合うようだった” 

乱歩の話に出て来そうな王子にいちばん直接甚振られるのが王子の次に最低な(?)木村であるおかげで、嫌感が無意識に緩和されるのがミソかも(おいらだけか?)。 ああああーー 鈴木って! 忘れてた!!笑 イニシエーションなんとかの(違う)!!  

最終コース近く、意外な方面からの意外な参戦にはしびれます。 終盤に近づくにつれ、もっとも気になるのは「あの人物」と「あの人物」がそれぞれどうなるのかだが。。 最後は、読者の黯い復讐嗜虐性に火を付けて悪い作者は立ち去ります。

XTCのアルバムを思い出すあの二人組が脳内映画でずっとEXITの二人でした。背格好がそっくりで双子に間違われるってんだから違うけどね。  コロナ禍の下、帰省往路の代わりに読ませていただきました。

No.12 7点 sophia 2019/01/11 19:01
人物やトランクの複雑な動きをよく考えて物語が作られてあります。読者は頭の中に列車の見取り図を常に描いて展開を追うことになります。終盤に視点人物のバトンタッチが行われるのは、アイラ・レヴィン「死の接吻」を思わせる構成でワクワクしたのですが、そこがこの作品のピークになってしまった気がします。なお、この作品を読む前に「グラスホッパー」を再読していて正解でした。読んでいないと面白さが半減とまでは言いませんが、2割減ぐらいはします。

No.11 7点 VOLKS 2018/11/02 13:48
かなり楽しめましたが、なんだかとても「疲れる」作品でした(笑)


蜜柑と檸檬、好きなキャラクターだったのに…
天道虫、この人すごいなー、友達だったら嬉しいです(笑)
木村、「伝説の木村」に敬意を表します
槿、颯爽と再登場に拍手
王子、こいつだけは許せない!

No.10 8点 take5 2018/07/28 21:54
読む人によっては、
エンターテイメントの重奏曲。ハラハラドキドキが新幹線の駅毎にやってきます。

読む人によっては、
哲学の入り口。人は何のために生きるのか、悪とは死とは、をはじめとして考えるために。ドストエフスキーも出てくるので。

読む人によっては、
読者自身の在り方を省みる教材。現代社会の、特に政治に向き合う態度や諸問題に目を閉ざさないために。

という読み方ができると思わないと、自分が一気にページをめくった理由を正当化できないので(笑)

作中の人物、王子に嘲笑されそうな分析ですが
改めて読書は重要だと思いました。

No.9 5点 yoshi 2017/01/09 00:33
うーん、何というか、ズルイ。
閉鎖空間にこれだけ殺し屋をいっぱい詰め込めば、そりゃ面白くなるでしょ。
もちろんその設定を思いついたのがエライ! と言われればその通りなんですが。
もっとすごい、いろんな謎が一気に解けるラストを期待してしまった。

No.8 8点 青い車 2016/11/27 22:42
 最初から最後まで物語が新幹線の中でのみ進行していく、異色のエンタメ小説。トーマス好きと文学好きの殺し屋コンビ、とことん運のない気弱な殺し屋、世の中を達観したようなサイコ中学生と、相変わらず人物の書き分けは楽しませてくれます。個人的には前作グラスホッパーの人物の再登場や、意外な脇役の痛快な活躍がツボでした。ストーリー・テリングはさすがの一言で、そこそこの長さながら、飽きずに読ませる展開の妙がすばらしい快作です。

No.7 6点 Q-1 2014/05/02 23:54
伊坂氏得意の?複数のキャラクターがそれぞれの目線で描かれ、
終盤に向かって収束していくストーリー構成。

走る新幹線の中で物語が繰り広げられるということで、
オリエント急行殺人事件のようなものを想像していましたが、
ミステリーの要素はほぼありませんでした。
個人的には蜜柑がもう少し活躍してくれるとよかったです。

No.6 6点 E-BANKER 2014/04/27 20:53
2010年発表の長編。
「グラスホッパー」の続編的位置付けの、“殺し屋”たちを主人公とした作品。

~幼い息子の仇討ちを企てる、酒浸りの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から密命を受けた腕利きの二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者が交錯する・・・。小説はついにここまでやって来た。エンタメ小説の到達点!~

結構長かったなぁ・・・
っていうのがまずは感想になるだろうか。
前作「グラスホッパー」と同様、複数の“殺し屋たち”が主人公の本作。しかも今回は東北新幹線「はやて」の車内が主な舞台となる。
この閉鎖空間のなかで、殺し屋たちが血で血を洗う抗争(?)を繰り広げるのが本作の基本プロット。
ただし、そこは伊坂幸太郎。ただでは終わらない。

本作で登場する殺し屋のうち、中心となるのが中学生の「王子」。
コイツがかなりの曲者なのだ。
人を操る術を心得ている「王子」が、大人の殺し屋たちに混じって生き残っていくのだが、最後には人生の大先輩に人としての生き様を教わることになる・・・。
あと、個人的にストライクなのは何でも機関車トーマスのキャラクターに例える殺し屋「檸檬」。
(パーシーやジェイムス、デイーゼルって・・・普通の人分かるか?)

巻末解説でも触れているが、伊坂作品によく出てくる「悪とはなんなのか?」というのが本作のテーマなのだろう。
作者の軽妙な言い回しやぶっ飛んだ展開に乗せ、一流のエンターテインメントに仕立て上げる“腕”はやはりさすがの一言。
ただ個人的には前作の方がまとまってたような気はするけどなぁ・・・
本作は途中やや冗長に思えたところでやや減点。

No.5 8点 ある 2012/08/16 00:12
走行中の新幹線の中は殺し屋だらけ…。

展開が早い上に,伊坂作品の軽妙な語り口自体が好みなこともあり,あっという間に読み終えてしまいました。
「機関車トーマス」の知識が少しあるとさらに楽しめます(笑)

No.4 8点 ayulifeman 2012/02/25 23:03
新幹線に殺し屋がいっぱい。となればたくさんの人が死んでしまいます。
自分の肩入れしている殺し屋のハンコが出てくる章はまだか、とページを繰る手が止まらなくなる。

No.3 7点 まさむね 2012/01/31 22:26
 東北新幹線の車内で巻き起こる,殺し屋たち(極悪中学生も混じっているけど)の協奏曲。舞台が舞台だけに,空間的・時間的制約から生じるサスペンス要素も相まって,次々にページをめくらされましたねぇ。「いい人系アウトロー」を主人公に据えると,この作者は強いなぁ。
 最後に個人的な望みを述べれば,極悪中学生の行く末(?)について,もっと生々しく描いて欲しかった。だって相当ムカムカする奴だったんだもの。

No.2 6点 haruka 2011/04/25 00:23
舞台が移動中の新幹線ということで、前作より緊迫感が増し、殺し屋たちの直接対決も読み応えがあった。

No.1 8点 HORNET 2011/04/24 18:15
 裏稼業の人物たちのコミカルなニックネーム(「蜜柑」「檸檬」「天道虫」・・・),ありえない偶然の重なり,など,現実離れしたストーリーと設定だが,エンタテイメントと割り切って読めば非常に楽しい。前作に登場した「槿(あさがお)」が登場し,クールに仕事をこなす姿も胸がすく。
 人生,人間理解について達観したような極悪中学生「王子」の言動に非常にストレスがたまるが,作者のことだから最後にどんでん返しをしてくれるだろう・・・という期待のみで読み続け,まぁその期待は裏切られなかった。数々の「ありえない偶然」も,逆にここまで全体の仕組みを考えた作者の腕に脱帽する。個人的には,前作「グラスホッパー」よりこちらのほうがさらによかった。


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