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[ 本格/新本格 ] 祈りの幕が下りる時 加賀恭一郎シリーズ |
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東野圭吾 | 出版月: 2013年09月 | 平均: 6.56点 | 書評数: 16件 |
講談社 2013年09月 |
講談社 2016年09月 |
No.16 | 6点 | パメル | 2023/12/04 06:52 |
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加賀恭一郎シリーズ第10作。
アパートで女性が殺されていた事件と河川敷でのホームレス焼死事件。それぞれ同時期に近い場所で殺された事件だった。今回の事件には、加賀の人生にとって重要な過去の出来事が大きく関わっている。彼が子供の頃に家を出ていった母親が残した謎のメモ。そのメモに書かれていたのと同じ内容が書かれたカレンダーが、殺人事件の現場となった部屋で発見されるのだ。 その内容が何を意味するのか。その謎を解き明かした時、事件が解決するとともに、加賀が母について一番知りたかったことも彼の前に現れる。加賀が日本橋署にこだわって異動してきたことも、どのような経緯で母と生き別れになったのかということも、シリーズを通しての謎が明かされスッキリする。 ただ本作は、ミステリとしては地味で派手な仕掛けはない。暗号らしきものが登場するが、暗号とは少し違った意味合いを持つので、謎解きに大きく関わってくるものの、そこに驚きがあるということはない。 縁もゆかりもないはずの人物が入居していたアパートの部屋で殺されていた女性から、少しずつ様々な人物をたどっていき、一本の線につないでいく地道な作業に執念が感じられ、大事なピースがはまった時には感動を呼ぶ。加賀恭一郎という男の謎と人間的魅力、物語全体を貫く切なさ。本作は、どんでん返しや大きなトリックを楽しむものではなく、人間関係のドラマで読ませる作品といえるだろう。 |
No.15 | 5点 | ボナンザ | 2022/11/01 21:23 |
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今のところのシリーズ最新作。まあこれで終わりでもきれいにオチはついたかな。 |
No.14 | 7点 | sophia | 2020/06/14 02:09 |
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「容疑者Xの献身」と「白夜行」のエッセンスが入っているので、必然的に悪い作品にはなりません。ただし中盤までは刑事たちがひたすら聞き込んで回るだけの展開で退屈に感じました。「どれだけ無駄足を踏んだかで捜査の結果が変わってくる」の言葉通りであります。前作「麒麟の翼」では七福神巡り、今作は橋巡りというものがキーとなり、物語に加賀のホームグラウンド日本橋の地理を取り入れるのが上手いです。
なお、「赤い指」以降色々と後付け設定して、なおかつ松宮というパートナーも出来たわけですが、それと同時に加賀恭一郎という人間が丸裸にされましたので、今後このシリーズがどう展開していくのかが気がかりであります。 |
No.13 | 7点 | zuso | 2020/06/12 19:35 |
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先の読めないプロットに加え、運命に翻弄されていく人間の悲しさも浮き彫りにされていく。作者の充実ぶりを証明している。 |
No.12 | 6点 | HORNET | 2018/02/11 16:26 |
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<ネタバレです>
基本的にクオリティが高い筆者の作品としては、平均的な完成度という感想。 地道な聞き込み捜査によって、バラバラに見えるピースが次第につながっていき、全体像が見えてくるという基本的な展開は十分に面白い。 また、父娘の絆、何を犠牲にしてでも娘の人生を守ろうとする父親の愛情、という点は素直に胸を打たれるものだった。ただ、いくらそのためとはいえ、人を殺めることに対してあまりにも良心の呵責が欠けていると思う。最初の入れ替わりの事件はまだしも、善意の第三者である押谷道子を何のためらいもなく手にかける忠雄や、そのことを聞いてもすぐに受け入れられてしまう博美の姿は、父娘の絆という言葉だけで片付けることにはできない。 ダミーの伏線として描かれていた苗村についても、「子ども思いの熱心な先生」というキャラクターが真相解明の段になってあっさり覆されて、「嫉妬心の強いストーカー気質の男」に急になり下がっており、都合よく書き換えられている感じがする。 映画化の派手な宣伝文句に知らず知らずのうちに影響され、勝手にハードルを上げてしまっていたかもしれないが、良作であることは間違いないが、突出した傑作という評価にはならなかった。 |
No.11 | 8点 | Tetchy | 2017/02/26 23:10 |
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加賀恭一郎の父親との確執は彼が初登場した『卒業 雪月花殺人ゲーム』の時点で明らかになっており、その原因が仕事に没頭し、家庭を顧みない父の母親の仕打ちに対する嫌悪であったことは書かれていた。しかし父隆正との確執については書かれるものの、離婚した母親のことはほとんど何も書かれなかった。そして今回初めて離婚して消息知れずとなった加賀の母親、田島百合子に焦点が当てられた。
謎めいた母親の過去と滋賀の1人の女性の東京での不審死。この何の関係のない事件が16年の歳月を経て交錯する。決して交わることのないと思われた2つの縦糸が1人の謎めいた男性を横糸にして交わっていく。実質的な捜査担当者である捜査一課の刑事で加賀の従兄の松宮と図らずも母の過去の男と対峙することになった加賀。彼らが事件の細い繋がりを1本1本解きほぐしていくごとに現れる意外な人間関係。次々と現れる新事実にページを捲る手が止まらない。この牽引力はいささかも衰えず、まさに東野圭吾の独壇場だ。 また『天空の蜂』で当時ほとんどの人が注目していなかった原発の恐ろしさを声高に説き、その18年後、改めて東野圭吾は原発の恐ろしさを別の側面で説く。身元不詳の誰もが簡単に原発で働けていたという怖さと彼ら原発従事者が一生抱える後遺症の恐ろしさを。 実は私にはここに書かれなかったもう1つの真実があると思うのだ。なぜ加賀の母親田島百合子は亡くなったのか?その死因については語られない。彼女の後見人であった宮本康代の話で綿部俊一と付き合うようになってから体調を崩すようになり、店も休みがちになった、そしてとうとう彼女は衰弱死してしまうとだけ書かれている。 そして加賀シリーズには他の東野作品にない、一種独特の空気感がある。自身の肉親が事件にも関わっているからか、従弟の松宮も含め、家族という血と縁の濃さ、そして和らぎが物語に備わっているように感じるのだ。だからこそ物語が胸に染み入るように心に残っていく。 この和らぎは加賀が抱えていた父隆正への蟠りが『赤い指』にて解消されたからではないだろうか。彼は家族の中の問題に踏み込むことこそが事件を真に解決するのだと『赤い指』で述べる。そして父に逢わずに看護師の金森登紀子を介して将棋を打つ。それが彼が父と最後にした「対話」だった。 そう、加賀恭一郎シリーズが持っている独特の空気感にはどこか昭和の匂いが漂うのだ。人形町、水天宮、日本橋、そして明治座。日本橋署に“新参者”として赴任してきた加賀が相対してきたのは過ぎ去りし昭和の風景、忘れ去られようとしている情緒や風情だ。そして今回の事件の発端となった角倉博美の人生を変えるようになった事件が起きたのは30年前。まだぎりぎり昭和だった時代だ。このシリーズはまだ地続きで残っている昭和の残滓を加賀が自分の家族のルーツと共に探る物語となっている。 本庁の捜査一課に戻って加賀はまたどんな事件と遭遇し、どんな人生とまみえるのか。いやそれに加え、父の死を看取った金森登紀子を1人の女性として、伴侶として迎えるのか。そしてその時の加賀は?次作への興味は尽きることがない。暗い事件が多いから、哀しい人々が多いから、父と母の死を乗り越えた加賀の明るい未来に希望を託そう。 |
No.10 | 7点 | E-BANKER | 2017/01/09 22:54 |
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遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。
恒例(?)となりましたが、どの作品を新年一発目にセレクトするかということで・・・2017年の“読み始め”はコレでした。 シリーズもついに十作目。加賀恭一郎シリーズの到達点ともいうべき本作。 2013年発表。吉川英治文学賞受賞作。 ~明治座に幼馴染みの演出家を訪ねた女性が、遺体で発見された。捜査を担当する松宮刑事は近くで発見された焼死体との関連を疑い、その遺品に日本橋を囲む十二の橋の名前が書き込まれていることに加賀恭一郎は激しく動揺する。それは孤独死した彼の母親につながっていた。シリーズ最大の謎が決着する!~ 七作目「赤い指」から明らかに変わってきた本シリーズ。 八作目の「新参者」で日本橋に異動した加賀ですが、本書の帯どおり、『加賀恭一郎はなぜ“新参者”になったのか?』が判明するのが本作というわけ。 加賀恭一郎というキャラクターに惹かれているシリーズ・ファンは多いと思うけど、今回、事件を追い、謎を解き明かすことで、彼の両親に纏る因縁や呪縛を解き放つことになるのがミソ。 「運命」というひとことだよなぁ。博美も綿部も苗村も、そして加賀も加賀の母親も・・・ みんな、「運命」という残酷な存在に縛られ、振り回され、支配されて生きている。一生懸命に生きよう、より良い明日を迎えようとしている人たちに残酷なまでに訪れる「運命」・・・ 何か、切なくなるような、ただひたすら悲しくなるようなストーリー。 日本橋を囲む十二の橋という存在が、まさに親と子を“つなぐ”存在になっているのが、何というか「旨い」。 こんなことを書いてると、『本作って一昔前のミステリーだよな』って再認識させられる。 そういう意味では、他の方も触れているとおり、「砂の器」っぽいというのも頷ける。 ただ、個人的には「容疑者X」との類似性の方が目に付いたかな。(ネタバレっぽいけど、アノ人物の行動なんて、まさに「容疑者X」のアノ男みたいだもんね) この「一昔前」が“敢えて”なのか、“予定どおり”なのか気になるところだが、こういう作品も書けるというのが作者の懐の深さだろう。 ただ、全体的には「もうひとつ」という評価も頷けるかな・・・。期待値が大きいだけに、作者としても辛いところかもしれない。 いずれにしても、“警視庁捜査一課・加賀刑事”の今後に期待したい! (一応2017年も、当面は三作セットで書評をアップしていきたいと思っております。) |
No.9 | 7点 | makomako | 2017/01/04 18:41 |
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面白いというより相当に悲しい物語でした。東野氏はこれ程多作なのによくもこんなストーリーをかけるものだと改めて感心しました。
一見無関係な話が最後にはきちんと決着してくるところは見事なものです。ただとても暗い話で、やりきれないなあ。 加賀警部補もだんだん偏屈で暗くなってきている。はじめは相当好きなキャラクターだったけど、こういった話を見せつけられるとちょっとつらい。 最後の決着がどうなったかははっきり書いていないけど、推理小説としては完結しているのでしょう。 |
No.8 | 6点 | あびびび | 2016/06/27 23:34 |
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東野さんの最近の作品同様、悪くはない。一読に値する出来栄えだと思うが、期待値が高いので、平凡に見える。ストーリー、物語の謎ともスペシャルではなく、こじんまりまとまっている感じは否めない。
これまで凄い作品を提供してきた作者だけに、このまま、平凡に終わって欲しくない。自分の感覚としては、作風は異なるものの、アガサ・クリスティと同レベルの期待をしている。 |
No.7 | 5点 | 風桜青紫 | 2016/01/15 03:45 |
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『ゼロの焦点』と『砂の器』をごちゃ混ぜにした感じ。いいちこさんのおっしゃる通り、既読感が強かったので、どうも作品に乗れなかった。父と娘のやりとりについてもそう上手いとは思えないんだよなあ。『赤い指』は、犯人親子と加賀さん親子にいい対比が生まれてて、味のある結末が印象に残ったんだけど、今回の犯人親子の人生ってそんな加賀さん自身の人生とだぶってるてわけでもないのよね。たぶん加賀さんママンの人物像が作品の焦点になっているんだろうし、長ったらしい犯人の逃避行(?)も、ラストシーンでの加賀さんママンを印象づけるための手法だったんだろうけど……、うーん、うまく決まらなかったように思える。ババアの凶悪なキャラクターといい、パパンの理不尽な不幸ぶりといいストーリーの道具はそんなに悪くなかったと思うけど、なんか、まあ、鋭さが足りなかったように思えた。まあ、なにはともあれ、加賀さんはお疲れさまでした。 |
No.6 | 6点 | いいちこ | 2015/12/22 18:02 |
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既読感の強いプロット・トリックで目新しさに乏しく、本格ミステリとしても食い足りなさを覚える。
一方、偶然をご都合主義と感じさせない伏線・心理描写の妙、読者の共感を呼ぶ筆力の高さ(下世話な表現をすれば「お涙頂戴」)は例によって際立っている。 タイトルのネーミングの拙劣さは相変わらずで、ストーリーテリングがやや劣化している印象を受けたのは気になった。 昨今の軽量コンパクト路線の象徴的な作品とも言え、畢生の本格大作が待望されるところ |
No.5 | 6点 | まさむね | 2014/06/01 18:39 |
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ページをめくらせる力はさすがです。終盤前に真相の大枠(あくまでも「大枠」ですよ)を予測できてしまう方も多いと思いますが,既にそういう方向では読ませていないのですよねぇ。登場人物たちの人生の見せ方が何とも心憎く,巧いです。
これまでの加賀シリーズの設定に加え,「白夜行」の雰囲気,「容疑者X~」の切なさ,「天空の蜂」から続く作者の主張などなど,目一杯に盛り込まれています。(だからこそ東野ファンには真相の「大枠」が見えやすいかもしれませんね。) 加賀恭一郎の家族の過去が描かれていますし,今後の展開が楽しみな締めにもなっているので,加賀シリーズファンには必読と言えましょう。 |
No.4 | 7点 | kanamori | 2013/11/28 21:28 |
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警視庁捜査一課の松宮は、担当している小菅アパートの女性殺害事件が、小岩井の河川敷で見つかった焼死体と関連する可能性に気付く。聞き込み捜査のなか、事件関係者の女性演出家が松宮の従兄で日本橋署の刑事である加賀と知り合いと判り、また加賀の亡き母親と焼死体の人物との繋がりも浮かんできた--------。
相変わらず物語の進め方が巧い。あえて内容紹介などで加賀恭一郎シリーズの一冊ということを強調しないで、序盤の登場シーンで軽くインパクトを与え、あとはグイグイと読者を引き込んでゆくような構成になっている。加賀が事件に関わることになるのが偶然ではなく必然だったという仕組みも巧く練られていると思います。 東野圭吾版「砂の器」という評もありますが、半倒叙の形で語られる彼らの過去は「白夜行」の雰囲気、「赤い指」の父親のエピソードや「新参者」であえて日本橋署に異動した理由に加え、「容疑者X」を連想させる部分もあり、良くも悪くも東野"人間ドラマ”ミステリの集大成という感を持ちました。 |
No.3 | 8点 | mozart | 2013/11/24 09:54 |
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発売日に図書館に予約を入れたものの、2ヶ月以上待たされてようやくゲット。読ませ上手はさすがで、これまでの加賀恭一郎シリーズの中でも一、二を争う「感動モノ」だと思いました。「犯罪者」達を取り巻く人間模様の描写も東野圭吾「節」満載です。手元にある内にもう一度読み返したいと思っているのですが、図書館での予約待ちが200人を超えている状況では早く返却した方が良いのかも。 |
No.2 | 7点 | haruka | 2013/11/16 23:55 |
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加賀シリーズの集大成と言ってよい作品。これまで語られなかった加賀刑事の母親のエピソードを交えながら、事件の真相が明らかになっていく過程は読みごたえあり。 |
No.1 | 7点 | 白い風 | 2013/10/24 23:24 |
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加賀恭一郎最新作ですね。
私はやっぱり、湯川シリーズより加賀シリーズの方が好きかも(笑) ミステリーとしても楽しめますが、今回は加賀の母親の話が一番楽しめました。 また看護士登紀子との今後の関係が楽しみだね。 |