皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
風桜青紫さん |
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平均点: 5.62点 | 書評数: 290件 |
No.290 | 9点 | 犯罪- フェルディナント・フォン・シーラッハ | 2016/11/22 02:52 |
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淡白ながらゾッとさせられる筆致。短いながら強烈なインパクトを残すストーリーの数々。これぞ「奇妙な味」でしょう。「フェーナー氏」と「タナタ氏」で一気に持っていかれました。こんな結末でいいのか?というような話が続いた後の「エチオピアの男」もグッときます。と、いうことで8点。しかしもう少しこの作者が日本で読まれるようになってもいい気もするので、おまけで9点。 |
No.289 | 10点 | 甲賀忍法帖- 山田風太郎 | 2016/11/22 02:47 |
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最高に面白い。ミステリの範疇に入るかどうかはともかくとして、エンタメの全てがつまった一品です。というわけで10点。 |
No.288 | 6点 | ノッキンオン・ロックドドア- 青崎有吾 | 2016/08/26 00:56 |
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さすがは青崎、といったところか。想像以上に完成度の高いパズラーだった。伏線の巧妙さ、真相のカタルシス。個人的な趣味から採点は6点にとどまるが、本格ミステリ好きや青崎ファンは目を通して損はない作品だろう。
とりあえず、私は、表題作の「ノッキンオン・ロックドドア」のインパクトにすべて持っていかれた。ご都合主義のバカミスも、ここまでくれば立派な芸術作品である。 いくつかの作品には重大なミスがあるそうだが、放射線状に並べられたダイヤルの数字が、どうすれば「逆さまになっていたらダイヤルの数字もさかさまになってしまう」のか私にはさっぱりわからないので、まあ、素人は気にしなくても大丈夫だろう。 水につけても指紋が消えないなんてことは名探偵コナンでも描かれている程度にミステリ界の常識なのだが、それをミステリ作家が知らないのだと思ってしまう発想力が心配だ。 |
No.287 | 5点 | 倒叙の四季 破られたトリック- 深水黎一郎 | 2016/08/21 19:25 |
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なんか面白かった。キャラはワンパターンだし、犯人の追い詰められた心理もあまり描かれないので、緊迫感は薄いんだが、伏線がかちかちハマっていく有り様が楽しい。うざったいキャラの葛藤みたいなのもいっさいないし、気軽に読めた。あと、お団子がおいしそう。 |
No.286 | 5点 | 邪悪の家- アガサ・クリスティー | 2016/08/05 11:17 |
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普通の作品である。クリスティーに慣れていれば、犯人も読んでいる途中にわかるだろう。とはいえミスリードをしかける課程は十分楽しめたので5点。これがクリスティーの作品としらなければ、6点ぐらいはつけていたかもしれない。 |
No.285 | 6点 | 二壜の調味料- ロード・ダンセイニ | 2016/08/05 11:07 |
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さすがに内容は手垢のついてものばかりになってしまったが、作品世界が生み出す、この殺伐とした雰囲気は、近年の作品ではお目にかかることができないものだろう。「ナムヌモ」の文字にどことない嫌悪感を覚えるのは、それが「理不尽な死」を、肌で感じさせる材料だからなのかもしれない。 |
No.284 | 6点 | 誰の死体?- ドロシー・L・セイヤーズ | 2016/08/05 11:02 |
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気に入っている作品だが、興味深い導入部にくらべて、トリックは大したものではなく、このサイトでは高評価は得られないだろう。セイヤーズは、クリスティーのライバルではあっても、クリスティーの亜流ではない。傲慢ちきな貴族だが、どことなく共感できるような弱さももっているピーター・ウィムジイ。それを支える使用人と親族。そのようなキャラクターのありさまを魅力的に描いたキャラ小説として読むのがよいのである。 |
No.283 | 9点 | あなたに似た人- ロアルド・ダール | 2016/08/05 10:53 |
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驚異的な短編集だった。カタルシスではなくフランストレーションを面白味にした作品集として、ここまでのものはないだろう。正統派の謎解きものとして読むと肩透かしをくらうかもしれないが、人間の衝動の高ぶりを鋭くとらえたストーリー進行と、その行き先が唐突に消え去ってしまうラストシーンは、心になんともいえない痛快さを与える。すでに多くの採点者のかたが指摘されているように、「味」と「おとなしい凶器」と「南から来た男」がこれをもっともわかりやすく体現している。合う合わないはあるかもしれないが、ロアルド・ダールの妖しい世界に触れて損はない。(「首」と「韋駄天のフォックスリイ」も個人的に気に入っている) |
No.282 | 5点 | 生者と死者 酩探偵ヨギ ガンジーの透視術- 泡坂妻夫 | 2016/07/18 20:32 |
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仕掛けについては「ようこんなんできたな」とびっくりしたが、長編と短編それぞれの出来についてはもうひとつだった。『しあわせの書』は中身も面白かったんだが……。まあ、こっちは制約が厳しすぎたか。 |
No.281 | 8点 | 匣の中の失楽- 竹本健治 | 2016/07/17 15:28 |
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面白い。以上。 |
No.280 | 8点 | ウロボロスの偽書- 竹本健治 | 2016/07/17 15:24 |
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夢中になって読んでしまった。楽屋裏的な空気、芸者シリーズのバカミス、殺人鬼のチープなエログロ、そして現実と虚構が入り交じる妖しい雰囲気。全体を通してみれば到底推理小説とは言えないようなへんてこなものなのに、推理小説らしい面白さで満ちあふれている。あるあるネタを逆手にとっただけのせこい作品がアンチミステリと騒がれるご時世だが、本作はそれらとは一線を画す、実にアンチミステリらしい作品である。 |
No.279 | 4点 | 囲碁殺人事件- 竹本健治 | 2016/07/17 15:01 |
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そこそこ読めるが、長編にするほどのネタか?
牧場くんのお姉ちゃんはかわいいと思いました。 |
No.278 | 4点 | まほろ市の殺人 冬- 有栖川有栖 | 2016/07/17 14:58 |
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「有栖川有栖だから期待しすぎた!」なんて意見が多いようだが、有栖川有栖の短編なんて大半はこんなもんだろう。メルカトル鮎が馬鹿にしてそうな真相だが、作者特有の雰囲気が出ており、読み物としてはそこそこよかった。ところで、倉知や我孫子や麻耶を「当代を代表する一流の作家」と認識するのは少々まずいと思う。 |
No.277 | 6点 | まほろ市の殺人 秋- 麻耶雄嵩 | 2016/07/17 14:53 |
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推理小説としては平凡だが、クイズとしては一流の完成度だった。『容疑者X』や『満願』がベストセラーになる世の中なので「犯行の論理性」なんてもんは最初から気にしていない(そもそもそれじゃ麻耶が一冊も読めなん)。要するにラストシーンのギャグを笑えるか否かだろう。 |
No.276 | 5点 | まほろ市の殺人 夏- 我孫子武丸 | 2016/07/17 14:42 |
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サプライズうんぬんより、我孫子は演出が下手だなあ、と改めて感じた。この話の一番の面白味は、主人公が犯人のアリバイを作り出してしまうってところだろうに、そこらへんの後味の悪さがいまいち伝わってこない。中編という制約もあったから仕方ないのかもしれんけど……この作者はトリックメイキングに関しては天才的なのに、ストーリー作りのほうがいまいちぎこちないなあ、という印象だった。 |
No.275 | 6点 | まほろ市の殺人 春- 倉知淳 | 2016/07/17 14:33 |
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こんなん笑うわwwwwwwww
なんかもうめちゃくちゃだが、こういうひどすぎるバカミスは逆に好印象。我孫子麻耶狙いで『まほろ市』を読み始めたが、正直これが一番面白かった。 |
No.274 | 6点 | 狂骨の夢- 京極夏彦 | 2016/07/16 01:47 |
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なかなかの作品だが、前二作に比べるとスケールダウンか。真相もそこまで意外性のあるものではなかった。セックスと首無し死体なんて怪奇のお膳立てとしてはベタ中のベタだし、『姑獲鳥』と『魍魎』に比べると異様さがチープ。とはいっても、シリーズらしい面白さは健在なので6点は固い。 |
No.273 | 7点 | 魍魎の匣- 京極夏彦 | 2016/07/16 01:39 |
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ながったらしい話だが、文章や会話がいちいち面白いのでスラスラ読める。トリックについては驚いたという意見も多いようだが、(かなり異様ながら)既出のトリックの派生という印象が強かったので、『姑獲鳥』ほどの衝撃はなかった。しかし作品全体のバランスはこちらのほうが上か。島田荘司と並ぶ天才バカミス作家である。 |
No.272 | 8点 | 姑獲鳥の夏- 京極夏彦 | 2016/07/16 01:34 |
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驚嘆した。冒頭から続く妖しげな雰囲気に飲まれ、密室の結末に息を飲む。批判的な意見も多いようだが、こんな無茶をやりとげてしまう作者の技量には舌を巻くばかり。当然の8点である。 |
No.271 | 5点 | 能面殺人事件- 高木彬光 | 2016/07/13 19:08 |
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1985年版の『東西ミステリーベスト100』では、「失敗作」とdisられていた作品だが、読んでみるとそんなに悪くなかった。トリックひとつひとつはしょぼいものの、それらをうまく組み合わせて読者を欺こうというお膳立てがよくなされている。とはいえ、『アクロイド殺し』に挑んだというメイントリックについては大して驚きもないし、作者がやってみたかっただけだろうぐらいの感想しか抱けなかった。そういう意味ではやはり失敗作か。 |