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[ 短編集(分類不能) ]
あなたに似た人
ロアルド・ダール 出版月: 1957年10月 平均: 6.53点 書評数: 15件

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早川書房
1957年10月

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2013年05月

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2013年05月

No.15 7点 クリスティ再読 2022/09/21 22:10
これが「奇妙な味」のスタンダードだと思う。「特別料理」だともう少し普通にミステリ寄りだからねえ。だから「おとなしい凶器」を凶器隠ぺいトリックとして読んでしまうトリック原理主義な読み方だと、身勝手な警官の夫に対する「おとなしい妻」の復讐、というブラックな皮肉さが味わえないように感じるのだよ。

おとなしい妻に、おとなしい凶器。

こういう味なんだと思う。エグい「南から来た男」などもギャンブルに血道を上げる男たちへの女たちの皮肉な復讐、という男女の闘争の視点で読み直すといいのかもしれないよ。

個人的なお気に入り、というのか子供の頃読んでずっと頭から離れないのが、実は「願い」。こんな遊びしたことない子供、いないと思う。これも想像力がどんどんと肥大していく話でこの短編集のテーマの一つ。リドルストーリー的なオチ(の欠如)の作品も、こういう「想像力の肥大」で捉えるのがいいのでは。そうしてみると、「サウンドマシン」でも実は発明は妄想で...というような読みも可能なのかもしれない。これをメタなオチに転用したのが「偉大なる文章製造装置」ということになると思うんだ。

最後の「クロードの犬」は、どっちかいうとヘミングウェイ風のスケッチとして捉えるのがいいんだと思う。やはりちょっとこの短編集だとカラーが違うかな....

No.14 7点 メルカトル 2018/02/11 22:31
これはなかなか面白い短編集です。
どれもエッジが効いたとは言い難いですが、間違いなく異空間や異世界に読者を誘ってくれます。奇妙な味わいの作品が多く、独特の発想の下に描かれており、この作者は独特の感性の持ち主ではないかと思います。訳者あとがきにあるように、日本でもっとも著名な翻訳短編集ではないかとの説も十分頷けます。

『おとなしい凶器』(唯一ミステリ色の濃い作品)などは簡単にオチが読めますし、『プールでひと泳ぎ』も同様です。
しかし、『舌』と『南から来た男』は両者ともある賭けを扱った作品ですが、そのスリリングな展開に完全に持っていかれます。物語世界にいとも簡単に入り込め、その描写力の確かさには舌を巻かざるを得ません。さらにどんなラストが待ち受けているのか固唾を飲んで見守っていましたが、意外なところで寸止めとなり、多少消化不良な点も見られましたが、この二作に関しては大変な満足感を得られました。『南から来た男』のブラックなオチも秀逸です。

ただ一つ意味が分からないのが『兵士』ですかね。20ページ足らずの小品ですが、一体何が言いたいのか、私の出来の悪い頭脳では理解不能でした。この訳の分からない作品を解説できる方がおられたらぜひご教授ください。

No.13 7点 E-BANKER 2016/12/21 23:01
最近では「チャーリーとチョコレート工場」でも注目された作者。
この第一作品集も昔からかなり有名ということは知ってましたが、ミステリー風味は薄いのだろうと長らく敬遠したまま・・・で、やっと今回読了。
1948年の発表。

①「味」=ひとこと、という実に潔いタイトルの作品だが、中身は人間のドロドロした部分がえげつなく書かれている。オチは明示されてないけど、“盗み見した”っていうことだよね?
②「おとなしい凶器」=これが“短篇ミステリーのスタンダードとしてあまりにも有名”という惹句が冠された著名作。確かに狂気の隠し場所としては実に皮肉が効いてて面白い。焼いたら臭わないしね・・・
③「南から来た男」=これはいわゆる“最後の一撃”的プロットのやつだ。こんな無茶な賭けに乗る男も男だが・・・。
④「兵士」=完全に理解できないけど、これもラストの一行勝負の作品だろう。途中のやり取りは正直よく分からんけど・・・
⑤「わが愛しき妻、かわいいひとよ」=こんな風に思っていた夫も、妻の本性を知ると・・・って火を見るよりも明らか。美しいor可愛い女性ほど内面は○○○ってよくあるパターン。
⑥「プールでひと泳ぎ」=これもよく理解できない作品なのだが、ラストの一行でニヤリとさせられるタイプのやつ。
⑦「ギャロッピング・フォックスリー」=通勤電車で偶然向かい側の席に座った男をめぐる主人公の煩悶の話。自分の辛い過去を振り返って苦しむ主人公と、それをあざ笑うかのようなラストのオチがきれいに嵌っている。良作。
⑧「皮膚」=刺青に関するストーリーなのだが、あまり響いてこず。
⑨「毒」=“ヘビもの”(ってそんなジャンルあるのか?) 「だからなに?」って思った。
⑩「願い」=なぜか続けて“ヘビもの”。「だからなに?」×2。
⑪「首」=これは・・・。ラストは当然バジル卿が首を××するんだろう・・・って思ってたら、卿ってやさしいのね・・・。何となく作者の女性に対するスタンスが分かる一編。

以上11編。
さすがに長らく読み継がれるだけのことはあると感じた。
ミステリーという観点だけなら②以外あまり見るべきものはないかもしれないけど、どれも短編らしい、短編でしか味わえない切れ味と余韻を残す作品だと思う。

訳者あとがきで、開高健氏の解説が引用されているけど、言い得て妙。まさにシニカル!
他の作品も機会があれば読みたい。
(やはり②がベストだろう。⑦もよい。①も悪くない。他はうーん・・・)

No.12 9点 風桜青紫 2016/08/05 10:53
驚異的な短編集だった。カタルシスではなくフランストレーションを面白味にした作品集として、ここまでのものはないだろう。正統派の謎解きものとして読むと肩透かしをくらうかもしれないが、人間の衝動の高ぶりを鋭くとらえたストーリー進行と、その行き先が唐突に消え去ってしまうラストシーンは、心になんともいえない痛快さを与える。すでに多くの採点者のかたが指摘されているように、「味」と「おとなしい凶器」と「南から来た男」がこれをもっともわかりやすく体現している。合う合わないはあるかもしれないが、ロアルド・ダールの妖しい世界に触れて損はない。(「首」と「韋駄天のフォックスリイ」も個人的に気に入っている)

No.11 5点 斎藤警部 2016/05/07 00:37
奇妙な味とか言うより、折り目正しいまともな古典作品群に見える。’ライター’の一件にしろ’羊肉’の話にしろ、はみ出してない拡がらない、安定しちゃってる感じがちょっとね。。作りがしっかりしているから名作として味読も出来ようが、昔の喩えで恐縮だけど「沢口靖子さんは絶世の美人だけど女性としての魅力は云々」みたいな、個人的にそんな感じ。 (比較対象じゃないかも知らんが)シャーリー・ジャクスン派の私としては、長澤まさみより水川あさみの方が遥かにいい私としては、琴線にヒットまではしない。やはり童話作家こそ本領の人なんだな、って思いますよ。 とは言え読んで損は無かろう。

No.10 5点 ボナンザ 2014/07/27 14:48
ざわ・・・ざわ・・・。ギャンブルをメインにした話から、ちょっとした日常の闇まで、奇妙な味のストーリーが繰り広げられる。
ちょっと押しが弱いかなと思うところもあるが、流石に名作と言われるだけはあると思った。

No.9 6点 sophia 2014/04/15 22:26
「おとなしい凶器」のトリックは昔から知っていましたが、出典がダールだとは知りませんでした。「南から来た男」は賭けが淡々と進んでいるのがもったいない。もう少し盛り上げて「味」のような緊張感を出した方がよかったと思います。「わがいとしき妻よ、わが鳩よ」は話が途中で終わってしまっているようで戸惑いました。真剣に落丁を疑いましたよ(笑)「毒」や「音響捕獲機」もオチがないような。「クロウドの犬」は4章構成ですが、1章2章の必要性はあるのでしょうか。全体的にもうひとひねり足りない話が多かった気がします。

No.8 7点 mini 2013/05/07 09:59
近日5月10日に早川文庫からロアルド・ダール「あなたに似た人」の新訳版が刊行予定
別に旧訳に問題が有ったとは聞いていないが単なる新訳切り替えの一環なのかも知れん、新訳版では単行本未収録の2篇を加えて2巻に分冊との事だ
「あなたに似た人」は既に書評済だが一旦削除して再登録

異色短編作家ロアルド・ダールは、ミステリーに関心の無い人にとっては世界的には童話作家として認識されている
「グレムリン」という映画があったが、元々飛行機乗りの間で伝説だったいたずらな小鬼をダールがキャラ化したもので、グレムリンを創作したのはダールなのだ
ミステリー読者にとってのダールだが、”奇妙な味”という呼称はこの作家の為に創られたと言っていいような存在だ
特に得意なのが賭博に嵌まる人間性をシニカルに見つめる眼差しで、「南から来た男」などは一度読んだら忘れられない
ダールは両親がノルウェー人で、北欧系らしい童話的感覚と英国生まれらしいシニカルな感覚が混ざった大人のお伽噺というべき物語性重視な短編作家だと思う
それだけに謎解きとしてどうかという視点で評価してもあまり意味がないだろう
英国生まれのダールだが後にアメリカに移住しており、人名録にによってはアメリカ作家と表示しているものも有るかも
そもそもダールが作家として評価されたのはアメリカに移住してからなので、CWA賞ではなくてMWA賞(しかも2度)の方を受賞しているのはそうした事情による
そう考えると北欧血筋、英国出生、アメリカ的センスの3者が混然とした感じがダールの魅力なんだろう

No.7 6点 蟷螂の斧 2012/12/07 20:17
(東西ベスト100・既読分)寡作家なので、短編とはいえ作品数は少ない。代表作は「南から来た男」(単行本で18頁分)。ブラックユーモア(奇妙な味)の世界です。もし、ダ-ルを読んでいなければ、この後の阿刀田高氏の作品(同様に短編でブラックユーモア)にハマることもなかったでしょう。

No.6 5点 あびびび 2011/09/21 18:50
「味」、「おとなしい凶器」と出だしで読んだ時には、にやりとしたものだが、だんだん作者の意図が分からなくなった。

さすがに洗練されてはいるが、これはミステリではない。いや、ミステリでなくても面白ければ…と読み続けたが、結局は最初の二作が最高だった。

No.5 6点 りゅう 2011/07/12 21:00
 「奇妙な味」を持った15篇の短編集ですが、ミステリとは言い難い作品もあります。いずれの作品も、状況設定と展開の妙でラストへ向けて読者の興味を盛り上げていきますが、ラストに関してはひねりの素晴らしい作品もあれば、意味不明な作品(「兵隊」、「クロウドの犬」)や拍子抜けする作品(「毒」、「お願い」)もありました。評価の高い「南から来た男」、「おとなしい凶器」、「海の中へ」が私も面白いと感じました。「音響捕獲機」や「偉大なる自動文章製造機」はSF設定で、ラストはそれほどでもありませんが、アイデアとしては素晴らしく、人間の聴覚や小説の創作について、ちょっと考えさせられる内容でした。

No.4 6点 kanamori 2010/07/19 18:01
”奇妙な味”系の短編ミステリの名手といえばダールでしょうが、作品によって結構出来不出来(というより、好みに合う合わないかもしれないが)の差が大きい作家だと思った。
この作品集では、有名どころの「おとなしい凶器」と「南からきた男」しか印象に残っていない。

No.3 7点 2009/07/24 20:58
最もミステリらしいのといえば、やはり『おとなしい凶器』ですが、この作品も凶器消失の謎を論理的に解き明かすというものではありません。松本清張にも似たトリックを使った短編がありますが、清張作品の方が謎解きの興味が強く出ています。
全体を通して見れば、『味』『南から来た男』『海の中へ』等の途方もない賭けのゆくえなど、奇妙な味とよく言われるのももっともな、気持ちの悪いブラック・ユーモアがたっぷりつまった短編集です。中には『お願い』なんていうブラッドベリあたりをも思わせる不思議な感じの小品もあり、こっちの傾向が後の『チョコレート工場の秘密』等にもつながっていくのでしょうか。

No.2 8点 あい 2008/11/13 15:06
「おとなしい凶器」は短いがインパクトのある作品。他の作品も良くまとまっている。

No.1 7点 こう 2008/11/05 22:11
所謂「奇妙な味」の第一人者ダールの代表作です。はっきりいって面白いのは三作だけでしたがその三作「味」、「おとなしい凶器」、「南からきた男」は名作に値すると思います(あとの作品は覚えていません)。どこかで目にしたことのある話かもしれませんがこれだけでも読む価値はあるかと思います。全体としてはあまりミステリという感じではなく同系列で語られるスタンリイ・エリンの作品の方がミステリに近いと思います。


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