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[ クライム/倒叙 ]
倒叙の四季 破られたトリック
改題/『倒叙の四季 破られた完全犯罪』
深水黎一郎 出版月: 2016年04月 平均: 5.70点 書評数: 10件

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講談社
2016年04月

講談社
2019年03月

No.10 5点 八二一 2020/11/26 18:18
全4編にわたる倒叙形式で犯行の様子が詳細に描かれており「犯人はどこでミスを犯したのか?」という謎解きがフェアに楽しめる。

No.9 6点 名探偵ジャパン 2020/01/02 17:19
作者初の「倒叙もの」だそうですが、器用な人ですから、それはもうごく当たり前に書きこなしてしまいます。こういう何でも出来る感においては、深水黎一郎の右に出る人っていないのではないでしょうか。

文庫化にさいして、ノベルズ版にあった最後のエピローグが削られたそうです。私が読んだのは、その文庫版だったため、気になってノベルズ版も確認してみました。

※以下、ノベルズ版のエピローグに触れています。というか、文庫で削ったということは、作者的にはこのエピローグは「なかったこと」にするつもりである可能性が高く、いわば「存在しないもの」に対してネタバレが成立するか? という問題はありますが。

ノベルズ版のラストでは、探偵が一連の事件の背後にいる「黒幕」の存在に気付き、そこへ捜査の手が伸びることを暗示して終わっています。このエピソードを削ったということは、文庫版においては本作の「黒幕」は未だ健在であり、もしかしたら、この「黒幕」を某名探偵の孫漫画の「地獄の傀〇師」よろしく、探偵のライバル的キャラクターに育てようという考えがあって、最後のエピローグを削ったのかもしれません。

No.8 6点 E-BANKER 2019/05/07 20:18
~春夏秋冬と不審死が発覚! 四人の人物がいずれも「完全犯罪指南書」という裏ファイルに従い、物的証拠を残さずに遺恨ある相手を殺害したのだ。警視庁捜査第一課・海埜警部補の聴取にも物証がなければ捕まらないと否認を続ける犯人たちだが・・・~
ということで、タイトルどおり「倒叙」形式の連作短篇集。
2016年発表。文庫化に当たって、サブタイトルが「破られたトリック」⇒「破られた完全犯罪」に変更(なぜ?)

①「春は縊殺 やうやう白くなりゆく顔いろ」=「縊殺」(=首吊り自殺に偽装した殺人)を装った完全犯罪が描かれる第一編。物証を残さないことにとことん拘るのはいいんだけど、アリバイ作りがこの程度なら、そもそも露見するんじゃないかというのが気になった。
②「夏は溺殺 月の頃はさらなり」=続いては「溺殺」ということで、溺死に見せかけた殺人。物証の残さないことに細心の注意を払った真犯人を嘲笑うかのように、被害者の“死に際の意地”が示される。残念・・・
③「秋は刺殺 夕日のさして血の端いと近うなりたるに」=三編目は居直り強盗による殺害(=「刺殺」)の偽装。なのだが、如何せん犯人役の知能指数が低すぎる。倒叙形式の真犯人はやっぱり天才的に頭がいい奴じゃないと盛り上がらない。ダイイングメッセージもなんとなく蛇足。
④「冬は中毒殺 雪の降りたるは言うべきにもあらず」=ラストは練炭自殺に見せかけた「中毒殺」。今回は堅牢な密室トリックまでが登場。このトリックは恐らく初見なのだが、実際うまくいくのかな・・・。それに探偵役の○○寺がいうとおり、密室にする意味が弱いと思う。

以上4編。
芸術探偵シリーズではワトスン的な立ち位置だった海埜警部補が渋い探偵役として登場。(④はサプライズであの人物が出てくるが・・・)
紹介文のとおり、①~④の犯人が全て「完全犯罪指南書」というサイトを見ているというのが共通項になっていて、それがラストの“捻り”につながっている。(因みに文庫版ではノベルス版であったはずの2つめのエピローグが削られている・・・なぜ?)

短篇の倒叙ものというと、大倉崇裕の「福家警部補」シリーズが思い浮かぶけど、うーん、クオリティでいうとちょっと劣後するかな。
わざとなのかもしれないけど、「物証を残さない」ことに心血を注いだはずの犯人が、割とあっさり「物証」で崩れ去る・・・
倒叙ものだと、犯人役の心の中の葛藤や焦りなどが読み手にどれだけ伝わるかが重要なだけに、そこはもう少し何とかならなかったのかという気はする。
まぁでも一定水準の面白さはあるし、そこはさすがという感じかな。
『あなたは致命的なミスを犯したのですが、まだ気付いていませんか?』ーこれが決め台詞。続編もあるな、きっと。

No.7 5点 makomako 2018/02/28 20:50
これはあまり好きではありません。
ことに残酷とかいやな場面が多いといったことはなく、深水氏の作品らしく精緻できちんとした構成になっているとは思うのですが、私にはピンときませんでした。
その一つとして、これを読んだらマネをする人がいるかもしれないといった危うさがあるからかもしれません。
犯人に全くシンパシーがわかない(まあ普通殺人者にシンパシーがわくようでは困るとも言えますが、それにしてもなのです)。倒叙法で上手に犯人を描くとこんな風になってしまうのかもしれません。

No.6 8点 2017/10/25 21:44
前々から「古畑任三郎」とか「刑事コロンボ」とかの推理物が好きな私は、この小説の倒叙形式の小説にはまってしまった。あまりこの手の作品が嫌いな方には申し訳ないが私は結構楽しめた。
4編の短編があたかも、枕草子的なタイトルであり、それぞれが、微妙に繋がっていて、「完全犯罪完全指南」というPCファイルをが、最後にどんでん返し的に使われているし。
内容的にはどれも、犯人が完璧な完全犯罪をもくろむが、思いもしないミスにより、海埜刑事により犯行を暴かれていくという単純な話なのだけれど、完全犯罪はは難しいものだとつくづく思わせる作品。

No.5 5点 amamori 2017/02/22 13:51
深水作品はエコール・ド・パリに続いて2作目。
第4話での樹氷についての薀蓄が面白く読めました。

No.4 5点 風桜青紫 2016/08/21 19:25
なんか面白かった。キャラはワンパターンだし、犯人の追い詰められた心理もあまり描かれないので、緊迫感は薄いんだが、伏線がかちかちハマっていく有り様が楽しい。うざったいキャラの葛藤みたいなのもいっさいないし、気軽に読めた。あと、お団子がおいしそう。

No.3 5点 人並由真 2016/08/21 15:50
(ネタバレなし)
 書名通りの倒叙もの4本を集めて、全体にもある種の仕掛けを凝らした連作中編集。私事ながらここしばらく忙しくて長編が読めないので、就眠前に少しずつ読み進めていた一冊。ちなみに深水作品はまだそんなに読んでないので、これがシリーズ探偵ものの路線の枠内の作品とは終盤まで気がつかなかった(汗)。

 内容は、クロフツの『殺人者はへまをする』『クロフツ短編集』みたいなものを21世紀の国産の中編ミステリで書いたらまんまこうなるんじゃないかしら、という感じで手堅く楽しめた。正統派の倒叙ものの興味に加えて、密室をどのように作ったかのハウダニットがキモとなる第4話が一番読み応えあるかな。
 ただしこの連作の設定の核となる裏ファイル「完全犯罪完全指南」についての決着は、最後で小味にまとめちゃった感じ。
 深水作品ビギナーとしては、作者の振り幅を実感できた一冊でした。きっともっとこれからも、新刊既刊ふくめていろいろと楽しませてくれるんだろうけど。

No.2 6点 まさむね 2016/07/16 23:16
 タイトルどおり、倒叙形式の4短編で構成。
 犯人4人とも、元警視庁の刑事が作成したという裏ファイル「完全犯罪完全指南」を入手して殺人を企て…というスタイルなのですが、結構わかり易い「手がかり」を残してくれちゃっています。倒叙形式としては、極めてオーソドックスな展開と言えましょう。無難とも言えるし、何となく物足りないとも言えます。2つのエピローグは、いかにも作者らしくて好きですが。

(以下、未読の方は注意)
 ちなみに、とある短編についての率直な感想。ダイイングメッセージ隠ぺいに係る「ミス」の発覚については、「なるほどねぇ」と感心したのですが、ダイイングメッセージの発覚如きで心が折れてしまう犯人が解せない。状況証拠以外の何物でもないだろうに。まぁ、そういう心理になるかもしれないという、工夫はしてあるのだけれども…。

No.1 6点 kanamori 2016/05/08 15:29
”芸術探偵”シリーズの名脇役、海埜警部補を探偵役に据えた倒叙形式の連作ミステリ。
春、夏、秋、冬と4部構成になっていますが、そのことが何らかの仕掛けに”直接的”に関係することはありませんので、ご安心くださいw

いずれの犯人も、完全犯罪の指南書”裏ファイル”を参考に緻密な計画を立てるという設定はまあ目新しいのですが、首吊り自殺に偽装する「春は縊殺」、溺死事故を装う「夏は溺殺」、居直り強盗殺人に偽装する「秋は刺殺」、練炭自殺に偽装する「冬は氷密室で中毒殺」ともに、なんというか、堅実な仕上がりではあるものの、倒叙ミステリとして、あまりにもオーソドックスな内容です。探偵役と犯人側のキャラクターが地味で、対決シーンも割と地味な扱い。また1話目は、はたしてあの証拠で犯人が特定できるかな、という疑問もあります。
倒叙ミステリの面白さは、予想外のところから犯行が発覚する”犯人の意外なミステイク”にもあると思いますが、その点でもある程度予想できるものが多かったかな。
書下ろしの最終話「冬は氷密室で中毒殺」と2つのエピローグでは、シリーズ通読者をニヤリとさせる仕掛けと、ちょっとしたサプライズがありますが、クセモノの作者に期待するところが大きいぶん、全体的に少々物足りなさを感じました。


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