皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格/新本格 ] 五声のリチェルカーレ |
|||
---|---|---|---|
深水黎一郎 | 出版月: 2010年01月 | 平均: 5.80点 | 書評数: 5件 |
東京創元社 2010年01月 |
No.5 | 7点 | まさむね | 2011/11/03 20:49 |
---|---|---|---|
「五声のリチェルカーレ」には,やられました。ここまで見事にやられたのは久しぶりです。読了後,しばらく首を捻り,その後に訪れた「!」の爽快感。即読み返しましたね。仕掛けは,周到かつ巧妙。題名も秀逸。「ホワイダニット」のみに着目しても,水準以上と思いますね。個人的に記憶に残るであろう作品です。
最大の肝については,豪快に炸裂しているとは言い難いのですが,むしろその位の炸裂感だからこそ良かったとの印象もあります。静かで,しかも高度で,渋い。野球選手で言えば,元ヤクルトの土橋級。(ちなみに,私は土橋選手のファンでした。) 短編の「シンリガクの実験」は,ミステリーなのか?といった印象。嫌いではないですけれども。 |
No.4 | 7点 | E-BANKER | 2011/10/21 14:09 |
---|---|---|---|
文庫オリジナルのノンシリーズ作品。
表題作とその表題作と関係ありそうでなさそうな短編による構成。 ①「五声のリチェルカーレ」=あくまで本作のメインはこれ。 ~昆虫好きの大人しい少年の起こした殺人事件。犯罪の低年齢化が進む今日では特に珍しくもない事件と思われたが、唯一動機だけは堅く口を閉ざしていた。家裁調査官の森本が接見で得たのは「生きていたから殺した」という謎の言葉。被害者は誰でもよかったという無差別殺人の告白なのか、それとも・・・~ これは、とにかく最終ページの森本の「あるセリフ」に驚けるかどうかでしょう。 これを読んで「エーッ!!」と驚けば、恐らくもう一度ページを遡ってみるに違いない。「どこで○○○ったのか?」という疑問を持って・・・ 正直、私自身も分かりませんでした。 しようがなく、ネタバレサイトを閲覧して、やっと納得。これは相当高レベルのテクニックですねぇ・・・ ただ、それ以外は割合淡々と進んでいくので、もう一捻りくらいはあっても良かったかもね。 因みに「リチェルカーレ」とは音楽用語で、独立した器楽曲の一形態のこと。 (『擬態』という言葉がキーワード。確かに、人間も知らず知らずのうちに「擬態」してるんでしょう) ②「シンリガクの実験」=ミステリーとはいえない。「五声・・・」の登場人物とはどうやら別の人物らしいです。 こういつ奴って、周りに1人くらいはいそうな気がする。 これも、ラストの1行が印象深い。(「へぇーっ」) |
No.3 | 5点 | 臣 | 2011/09/28 11:15 |
---|---|---|---|
著者に関する予備知識はわずか、特に本作に関する情報はゼロでした。だから最初は、たんに薀蓄開示がくどいだけのミステリかと思っていましたが、徐々にこの手のミステリだということがわかってきた次第です。その薀蓄は物語の根幹とうまくリンクしています。
ただ、この種のミステリは書き方しだいでなんとでもなるし(そう言ってしまえば身も蓋もないが)、書き方自体も後半がかなりわかりやすくなってきていて、驚きも中程度だったので、結果的にはそれほどすごいミステリだとは思いませんでした。「告白」「向日葵の咲かない夏」「イニシエーションラブ」の強烈なパワーとテクニックがほしかったですね。まあ、だからこそマニアックだと言われるのですが。 総評すれば、一部のマニアには受けるけど、その受け方もベストとは言えないかなという感じでしょうか。 併録の短編「シンリガクの実験」は独立したものですよね。これについては、意味のない短編をいっしょにするはずがない、という意見もあるようですが、いくらなんでも考えすぎです。 深読みするのは自由だし、それができるのが小説の本当の醍醐味。そういう意味では2作品とも高評価できますが、エンタテイメントとして楽しめたかというと、微妙です。 |
No.2 | 3点 | makomako | 2010/04/11 19:20 |
---|---|---|---|
深水氏の作品は今まで読んだのはどれもが水準をはるかに向くすばらしいものであったが、これはぜんぜんダメでした。作者の才能と教養からこういった作品が生まれうることは何となく感じてはいたのですが、私にとって最後まで読むのが苦痛な作品でした。 |
No.1 | 7点 | kanamori | 2010/03/06 13:59 |
---|---|---|---|
殺人を犯したある中学生の動機の謎(「生きていたから殺した」)と誰を殺したかという謎、この二つの謎を解くミステリかと思っていたら、とんでもない方向から一撃をくらった。一読即再読を強いられる騙し絵ミステリ。
諸々のネタバレ書評でも、色々分析されており、みなさん相当入れ込んでます。いまのところ本格マニアにとって今年一番の話題作ではないでしょうか。本当に意地の悪い作家だ。 なお、併録の短編は独立したもので、本作との関連はないというのが正解のようです。根拠は日本シリーズの背番号3にあるんだとか。 |