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[ 本格/新本格 ]
蜜の森の凍える女神
ヴィッキーシリーズ
関田涙 出版月: 2003年03月 平均: 6.25点 書評数: 4件

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講談社
2003年03月

No.4 6点 ミステリ初心者 2025/02/04 19:57
ネタバレをしております。

 女子高生であだ名がヴィッキーという探偵で、主観の人物がその弟で中学生。メフィスト賞。とくれば、ちょっと色物を想像してしまうのですが、かなりしっかりした本格推理小説でしたw
 クローズドサークル風味の設定(早く警察がくるので厳密には違う?)で、途中の推理ゲームがあったり、かなり読みやすくて良かったです。獄中で死亡した画家の話もよい伏線となっておりました。

 私は、返り血を浴びずに殺人を犯せたならば裸での犯行だ→小夜子があやしい…までは予想できましたが、どうしても携帯電話のアリバイが崩せずに敗北しましたw シンプルながら盲点なトリックで、ここに推理ゲームの要素が絡んでくるのも良かったです。

 以下難癖点。
 密室にはがっかりしましたw また、叙述トリックの要素も少しあり、挑戦状あとに新情報が加えられるのでアンフェア感が否めません。だからこそ、あのような文言の挑戦状になったのかもしれません。
 また、誠が実は車椅子で行動していたことを伏せられていますが、コレに関してはあまり上手く使えているようには思えません。
 タイトルからなんだかうっすら犯人がバレてる気がするのですがw

 総じて、完璧なロジックの推理小説ではないものの、本格好きでも楽しめるレベルの端正な推理小説でした。ヴィッキーのキャラクターも明るく、なおかつあだ名の割にあまり漫画っぽくない(ライドノベルっぽくない?)ので、そういうのが苦手な人も大丈夫かと思います。

No.3 7点 メルカトル 2024/12/01 22:25
大学生らが集い吹雪の山荘で行った”探偵ゲーム”。余興のつもりが、翌朝現実の刺殺死体が発見されて事態は一変した。現場の不可解な錠の開閉は何を意味するのか。50年前に起きた探偵小説家の惨殺事件との暗合は。
ヴィッキーという仇名を持つチャーミングな女子高校生が圧倒的活躍を魅せるメフィスト賞受賞作!
Amazon内容紹介より。

「ヴィッキーからの挑戦状」が挿入されていて、そこで作者は謙遜していますが、読み易く文才はある人だなと思いました。ただ、人間が描けていないのは認めざるを得ません。犯人もその没個性の中に埋もれている感じで、その意味ではあまり共感は出来ませんでした。
その前に、本書のタイトルから、もっとファンタジックな内容かと思いましたが、ガチガチの本格ミステリでしたね。これを先に述べるべきでした。

密室とアリバイトリックが絡んできて、これが意外にも多重推理となっており、読者サービスもばっちりです。典型的な吹雪の山荘ものかと思わせておいて、実は途中で警察が介入してくるのにも意味があり、名探偵対警察の構図が見えてくるのもなかなか面白い趣向です。
終盤まではせいぜい6点かと思っていましたが、解決編でググッと評点が上がりました。結局これで良かったんだよなと、個人的には感じましたし、後味も悪くないし、アンフェアな面もギリギリ許せる範囲のものだと考えます。

No.2 7点 人並由真 2021/07/05 18:08
(ネタバレなし)
「僕」こと横浜の風夏学園中等部3年生の男子・菊原誠は、同じ学園高等部2年の姉「ヴィッキー」そして姉の友人の同級生・森下吉乃とともに、その年の冬、群馬県にある父の知人の別荘に泊まりに行く。3人だけの宿泊の予定だったが、吹雪の中で遭難しかけた大学生たち、栄京大学サッカー同好会の男女6人が救いを求めて現れる。かくして9人の若者たちは、閉ざされた雪のなかで推理ゲームなどをして過ごすことになった。だがそこで、本当の殺人事件が発生した。

 第28回メフィスト賞受賞作品。
 本サイトでも、パズラーの鬼(もちろん褒め言葉です)のnukkamさんを除いて誰もレビューしていないマイナー作品で、自分もこの作者の著作は以前から気にはなっていたが、このたび初めて手にとってみた。
 
 探偵役のヒロインJK「ヴィッキー」は、本名は不明(苗字は菊原だろうが)。この物語世界中の人気ファンタジーミステリシリーズの主人公の魔女探偵「ヴィクトリア・ウィッチスプーン」にあやかって「ヴィッキー」と自称して(周囲にそう呼ばせて)おり、すでに難事件も解決しているアマチュア名探偵らしい。

 さて、大仕掛けのひとつは自ずと見え見えだが、さらにその奥があるのであろうと思いながらページをめくったが……そう来たか!
 いかにもメフィスト賞らしい大ギミックで、ほとんど反則技ギリギリ、という気もするが、一方でとにもかくにもコレを最後まで貫徹した力業は評価したい。いやまあ振り返れば不自然な叙述、リアリティの希薄な描写は山ほどあるとは思うが、ウソは書いてないでしょう、たぶん。

 謎解きと同時のドラマの決着は賛否を呼びそうだが、これはこれで真相の解明と渾然一体になった終焉だということはよくわかる。だから文句には当たらない。まあ部分的な描写だけ取り出すと、いろいろ思うところもあるけれどね。
 ただまあ、この大技はある意味ではコロンブスの卵ではあったよなあ。個人的にはそれなり以上にホメておきたい。
 8点にかなり近い、という意味で、この評点で。

No.1 5点 nukkam 2011/09/06 10:15
(ネタバレなしです) 関田涙(1967年生まれ)が2003年に発表したデビュー作で、ファンタジー小説みたいなタイトルが印象的ですが内容は「読者への挑戦状」付きの王道的な本格派推理小説でした。文章について厳しい評価を受けているようですが(「読者への挑戦状」の中で自虐的に「中学生の作文みたいな文章」と言い訳しているのが可笑しい)語り口はスムースで、個人的には悪文とまでは思いません。ただ挑戦状を付けるからにはフェアな謎解きかどうかは気になるところで、あの仕掛けは(一応理由も用意してありますが)ちょっとアンフェアではという気もしました。とはいえ個人的には真っ向勝負の謎解きは大好きなので、全体としては満足しています。


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