皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] 孤島の来訪者 〈竜泉家の一族〉シリーズ |
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方丈貴恵 | 出版月: 2020年11月 | 平均: 8.50点 | 書評数: 10件 |
![]() 東京創元社 2020年11月 |
No.10 | 7点 | 蟷螂の斧 | 2023/09/08 17:07 |
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最近、流行りの特殊設定の本格ミステリーですね。本格ミステリーとしては、目新しいトリックがあるわけではなく王道通りの展開です。設定で思い起こすのはSF「遊星からの物体X」です。犯人特定は、確か血液が何かに反応するだったと記憶していますが、本作の犯人は水に弱いということです。なら、海に浸かればと思ったのですが、海は大荒れで不可。水道もないので風呂も無理でした。雨も降りません(笑)。惜しいと思うのは「第十章 船上 事件終結」は不要だったのでは思うことです。多重解決がお好みの方には高評価になるのでしょうけれど、私などはややこしさが増すだけで飛ばし読みです(苦笑)。すんなりエピローグに繋がれば8点献上でしたが・・・。 |
No.9 | 10点 | 点と点 | 2023/08/30 18:19 |
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鮎川哲也賞でヤベー奴が来たとマークしていた作者の2作目
「書きようによっては更なる傑作となった」とレビューしている方がいるがまことに同意。これアイツとかが書いたら死ぬほど面白かっただろうなと妄想してしまった。しかしこの優れたアイデアを評価せずにはいられないというのがミステリ読みの性。1作目はまぐれ当たり、2作目から作家の本領が出るなんて巷ではよく聞くが、この作者は紛れもなく本物だ。 |
No.8 | 8点 | mozart | 2023/07/25 14:20 |
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前作の「時空旅行者の砂時計」に続けて読みました。今作も「特殊設定モノ」ですが前作と比べるとその「設定」がなかなかブッ飛んでいて馴染むのに少々抵抗がありました。その設定というか制約条件もしっかり謎部分の根幹に関わっているのはなかなか秀逸で、作者の綿密な事件のプロットの設計やストーリー展開のさせ方には脱帽です。 |
No.7 | 10点 | 密室とアリバイ | 2023/05/10 19:20 |
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前作とは打って変わって奇抜な特殊設定だが、この面白さは形容し難い 秀作であることは間違いない |
No.6 | 8点 | みりん | 2023/04/15 16:16 |
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前作の「時空旅行者の砂時計」に出てきた名前がチラホラいますが別に読んでいなくても特に問題なく楽しめます。引き続き特殊設定本格ミステリーで前作よりもサスペンス感がアップ。
ネタバレあり 次元の違う世界からくる未知の生命体というのは色々想像が膨らむ面白い設定です。人間に変身できるというパニックホラー作品にありがちな設定もミステリに導入することで緊張感とアクロバティックなトリックを生み出していて良い感じ。前作ほどの衝撃はなかったものの、オチのユニークさなどを含めてもこちらの方が優等生的(?)な作品だと思います。「孤島の復讐者」というタイトルの方が良かったかな…? シリーズにしたせいで新規の読者の数も減ってしまうのでは…という邪推。というかキャラクターを使い回していないのにシリーズにする意味あるのか??マイスターホラの挑戦状は確かに魅力的ではあるが… とにもかくにもこの作者の新作にも期待! |
No.5 | 9点 | パメル | 2023/01/08 09:27 |
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四十五年ぶりに予兆が現れ、いわく付きの孤島に人ならざるものが現れるといった、伝奇ホラーの側面を持った本格ミステリ。この物語の犯人は人間ではなく、人間の皮を奪ってその人間に化けることの出来る謎の生物。孤島にいる登場人物達のの中で、果たして誰がこの生物に成り代わっているのかという、ユニークなフーダニットミステリである。
前作で惨劇の渦中に置かれた竜泉一族の血を引く佑樹が主人公となる。佑樹は、かつて大量殺人が起こった無人島「幽世島」で行われるオカルト系テレビ番組の制作ロケにADとして参加するのだが、彼にはある思惑があった。幼馴染の命を奪った三人の人物に島内で復讐することである。ところが撮影が開始されて間もなく、佑樹が狙っていた一人が死体で発見される。かつて島民の大半の死因となったのと同じ鋭い凶器を使った刺殺によるものだった。佑樹は自らの計画を遂行するために犯人捜しをする羽目になるが、状況が導く推定される犯人像差は、意外極まりない。 まるでパニックホラーのような物語が展開されることで、彼らの謎解きには一筋縄ではいかない緊張感がある。特殊ミステリというと、あるひとつの特殊なルールが解明に至るロジックの核になることが多いが、本書のすごみは複数のルールによって謎が形成される点にある。それらを余すことなく組み合わされた末に生み出される解明場面には圧巻の一言。成り代わった犯人を追う面白さのほかに、自分たちの常識では計れない謎の生物がどんなものなのかを推理するという、一風変わった生態解明ミステリを楽しむことが出来る。孤島にまつわる伝承などを元に、謎の生物に形を与えていく様が面白い。 |
No.4 | 7点 | メルカトル | 2021/10/29 22:28 |
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謀殺された幼馴染の復讐を誓い、ターゲットに近づくためテレビ番組制作会社のADとなった竜泉佑樹は、標的の三名とともに無人島でのロケに参加していた。島の名は幽世島―秘祭伝承が残る曰くつきの場所だ。撮影の一方で復讐計画を進めようとした佑樹だったが、あろうことか、自ら手を下す前にターゲットの一人が殺されてしまう。一体何者の仕業なのか?しかも、犯行には人ではない何かが絡み、その何かは残る撮影メンバーに紛れ込んでしまった!?疑心暗鬼の中、またしても佑樹のターゲットが殺され…。第二十九回鮎川哲也賞受賞作『時空旅行者の砂時計』で話題を攫った著者が贈る“竜泉家の一族”シリーズ第二弾、予測不能な本格ミステリ長編。
『BOOK』データベースより。 昨今流行の特殊設定の孤島ミステリ。それにしても相当思い切ったと言うか荒唐無稽でSF色が強いですが、それでも本格には違いないです。読者への挑戦状も挟まれていますし。様々な制約を設けていて、それが犯人を特定する重要な手掛かりになっており、そこに於ける破綻は見られません。読者は論理的に犯人を指摘する事が可能です。ですが、何か惜しいんですよね、文章にキレがないせいかイマイチ盛り上がらない訳です。 意外性もあるにはあります、ただ話が入り組んでいてややこしいのが難点でしょうか。それに主人公で探偵役の竜泉を始め登場人物の誰ひとりとして個性的に描かれておらず、あまり人間味が感じられません。書きようによっては更なる傑作となったのは疑いようがなく、残念な気がします。 ケチばかり付けているようですが、エピローグは良い味出していましたし、佳作だとは思いますよ。 |
No.3 | 10点 | sophia | 2021/02/18 00:13 |
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まずこの世界観で想起するのは「ターミネーター」「プレデター」「寄生獣」あたりです。前作「時空旅行者の砂時計」もそうでしたが、ともすれば何でもありになってしまいかねないSF要素に制約を設けて、本格ミステリーの枠に収めるのに長けています。話も前作ほどの難解さはなく、それでいてサバイバルゲームの要素も増え一層引き込まれました。「読者への挑戦」の前にちょっと考えてみましたが、断片的には当てることの出来た部分もありましたが全容解明はとても無理でした。いや、よく練られたプロットで伏線の配置も見事です。敢えて挙げる難点は、人類の存亡まで懸かった事態の深刻さの前に、主人公の復讐計画が霞んでしまったことぐらいでしょうか。前作にはサービスしての9点を付けましたが、今作は正真正銘の10点を差し上げます。 |
No.2 | 9点 | 葉月 | 2021/01/06 22:27 |
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前作「時空旅行者の砂時計」は作者の騙しの姿勢には好感を覚えたものの、どちらかといえば美点よりも欠点が目立ってしまっている印象でしたが、本作は一転かなりレベルの高い特殊設定本格ミステリとなっています。
個人的には序盤のSFサスペンス的展開がかなり意外なもので、そこからは一気に読めてしまいました。 最後に真相が二転三転するのも買いですし、伏線の張り方も上手く、本格ミステリとしてかなり高いレベルに達していると思います。 |
No.1 | 7点 | 虫暮部 | 2021/01/04 11:49 |
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基本的には好きなタイプ。特殊設定によって“犯人には動機が必要”との呪縛から自由になれたのはグッド・アイデア。結末を繰り返しひっくり返すのは本作に限らずあまり好きではないが、辻褄は上手く合っていると思う。
実は私、重要な一要素を作者のミス(その可能性を排除する条件を設定し忘れた)だと決め付けていたんだよね。だから真相に辿り着けなかった、と言う気はないけど。あー信用しなくてごめんなさい。 |