海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ ハードボイルド ]
まぐさ桶の犬
葉村晶シリーズ
若竹七海 出版月: 2025年03月 平均: 6.33点 書評数: 3件

書評を見る | 採点する | ジャンル投票


文藝春秋
2025年03月

No.3 6点 E-BANKER 2026/09/27 14:18
数あるシリーズとして、個人的に最も気に入っているといっていいのがこの「葉村晶」シリーズ。
今のところその最新作が本作。後回しにしてるうちに少し出遅れてしまったかな。
文庫書き下ろしで2025年の発表。

~タフで不運すぎる女探偵・葉村晶。吉祥寺のミステリ専門書店〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉でアルバイトとして働きながら、〈白熊探偵社〉のただ一人の調査員として働いている。葉村晶も五十代に突入し、老眼に悩まされるお年頃。魁皇学園の元理事長でミステリのエッセイストとしても名を馳せた乾巌、通称カンゲン先生に、<秘密厳守>で「稲本和子」という女性の行方を捜してほしいと頼まれた晶。彼女の一人娘は学園の理事だったが、本屋で万引きしたとして留置中に急死していた……。高級別荘地の<介護と学園地区構想>など、さまざまな思惑が絡み合い、やがて誰もが予想のしない結末へ!~

葉村晶も50代に突入! シリーズ一作目では確か20代だったはず。いやはや時の流れを感じずにはいられない。シリーズキャラがここまで順調に年齢を重ねることは結構レアかもしれない。特にジャンルとしてはハードボイルドである。一応。
それがもう、主役がハアハア言いながら七転八倒するのだから・・・
でも、作者の本シリーズに対する愛着、愛情は痛いほど感じるし、いいシリーズである。

で、本題ですが、
今回は(今回も?)もう、ややこしすぎ! 敢えてかもしれないけれど、とにかくいろんな筋が次から次へとやって来て、晶を翻弄し、読者を混乱させる。人間模様も実に複雑で、序盤に挿入されている家系図も、終盤にはあれやこれやとひっくり返されることになる。
普通の作品なら酷評するかもしれない錯綜ぶり。でも本シリーズは別。お約束として許せてしまう。それもこれもどんな窮地に陥ろうが己の矜持を貫こうとする晶のせいかな。(ただ、もう少し整理して欲しかった気はするが・・・)
ロスマク的「家族の不幸」もそろそろ通用しない社会に変遷しているような気もするし、逆にどういう時代になっても家族、肉親ほど憎みあい、いがみ合うのかもしれない。

しかし、次作ではもしかして60代? 大丈夫かなあー? でもそれはそれで面白いかも。また、彼女の新たな活躍についつい期待してしまう。今の世の中、年齢は関係ないですから・・・

No.2 7点 人並由真 2025/10/15 05:12
(ネタバレなし)
 当人の年齢が50歳台に突入。さらにコロナ禍に揺れる世相も影響し、まともな探偵稼業をほぼ3年間もしていない「私」こと女性私立探偵・葉村晶。彼女は、ミステリ専門古書店の住み込み店員兼町内の御用聞きなどで、糊口をしのいでいた。だがその年の4月、いささかややこしい迂路を経て、そんな葉村に久々に人探しの依頼が入る。調査対象の70代の老女・稲本和子(わこ)の行方を追い、活動を始める葉村だが、彼女の眼前には迷宮のような現実が錯綜しながら広がっていく。

 2019年の連作短編集『不穏な眠り』から5年ちょっと。前回の長編『錆びた滑車』からカウントすれば実に7年ぶりの葉村晶ものの新作長編。
 本サイトでも人気のシリーズなのに、なぜmakomakoさん以外、誰も読まないのか? たぶんきっと皆さん、前作『錆びた滑車』のヘビーぶり(個人的には面白かったが)を何となく覚えていて、敷居が高かったりするんだろうな、と不遜にも邪推したりしている(汗・笑)。

 で、はい。予想通り、今回も完全な、後期ロス・マクドナルド世界の21世紀国産女性私立探偵版です。目が回るように、実に人間関係がややこしい。
 巻頭の登場人物表には<たった>32人しか名前が並んでいないけど、騙されてはいけない。ネームドキャラだけでその倍の70人以上出てきた。

 絶対に登場人物メモの自作一覧が必要な内容で、さらに相関図まで作った方がいい筋立てだけど、これだけ込み入った話の割には、さほどの摩擦感もなくスイスイ(まあ比較的)読める。
 終盤に明かされる人間関係の立体的、時に四次元的一歩手前の縦横ぶりは、正に本家ロスマクといい勝負だ。
 断言していいがお話そのものは楽しんだ自覚があるにも関わらず、たぶんオレは半年後には絶対に細部を忘れてる(笑)。
 ただしその一方、印象深い、おそらくはそれなりに長く心に残るであろうシーンや劇中人物の言動・内面なども少なくなく、その辺にこの作品の厚みを実感する。

 いやエンターテインメントとしては、本シリーズの前作長編『錆びた滑車』のぶっとんだクライマックスに比べ、今回はこの手のミステリとしての手堅(?)さを目指した感もあった。
 その辺の、今回もまた同工異曲なようで、実は一冊一冊微妙に味わいの違う辺りも、後期ロスマクの諸作っぽい。
 たぶんトータルでは僅差で前作の方がスキだけど、本作も相応に楽しめた。
  
 終盤の葉村晶の述懐の一節

「それきりわたしは(中略)のひとたちとはいっさい関わり合っていない」

 うん。ここらへんは『長いお別れ』だよなあ。

No.1 6点 makomako 2025/04/27 17:02
久しぶりの葉村晶シリーズです。
彼女も50代となり男っ気はなくさらに不運も増しているようです。
このシリーズはきちんとプロットが組みあがっており、一見何でもないようなところが実は真相の手がかりであることが多いので、だまされないように(実はたいてい騙されるのだが)慎重に読んでいきました。
海外ミステリーが好きな作者らしく登場人物が多く、途中で親子関係などが入り乱れてくるので、名前を覚えるのが苦手な私には大変でした。
お話の性格上初めから家系図を出すことができにくいとは思いますが、話が進んだらその時点で系図を挙げて頂けると分かりやすいのではないでしょうか。
私は関係者の血縁が変化するたびに前に戻って確認するといった面倒な作業を何度も繰り返しました。そうしないとお話の意味が解らなくなる。
でもちゃんとした推理小説ですので読みごたえは十分あります。


キーワードから探す
若竹七海
2025年03月
まぐさ桶の犬
平均:6.33 / 書評数:3
2024年02月
パラダイス・ガーデンの喪失
平均:4.00 / 書評数:1
2019年12月
不穏な眠り
平均:6.83 / 書評数:6
2019年01月
殺人鬼がもう一人
平均:5.33 / 書評数:3
2018年08月
錆びた滑車
平均:6.50 / 書評数:4
2016年08月
静かな炎天
平均:6.29 / 書評数:7
2014年11月
さよならの手口
平均:6.29 / 書評数:7
2014年06月
御子柴くんの甘味と捜査
平均:4.67 / 書評数:3
2014年03月
暗い越流
平均:6.33 / 書評数:3
2011年01月
ポリス猫DCの事件簿
平均:4.50 / 書評数:2
2010年11月
みんなのふこう
平均:6.00 / 書評数:3
2008年12月
プラスマイナスゼロ
平均:5.50 / 書評数:2
2008年01月
バベル島
平均:7.00 / 書評数:1
2006年07月
猫島ハウスの騒動
平均:6.00 / 書評数:5
2002年01月
死んでも治らない
平均:6.67 / 書評数:3
2001年10月
悪いうさぎ
平均:6.50 / 書評数:8
2000年10月
クール・キャンデー
平均:6.23 / 書評数:22
2000年07月
古書店アゼリアの死体
平均:6.00 / 書評数:5
2000年05月
依頼人は死んだ
平均:6.70 / 書評数:10
2000年03月
名探偵は密航中
平均:7.50 / 書評数:4
1999年12月
遺品
平均:5.50 / 書評数:4
1999年06月
ヴィラ・マグノリアの殺人
平均:5.17 / 書評数:6
1998年09月
八月の降霊会
平均:5.00 / 書評数:7
1997年12月
スクランブル
平均:7.10 / 書評数:10
1997年02月
船上にて
平均:6.00 / 書評数:6
1997年01月
海神の晩餐
平均:5.89 / 書評数:9
1996年05月
プレゼント
平均:6.70 / 書評数:10
1995年08月
製造迷夢
平均:6.14 / 書評数:7
サンタクロースのせいにしよう
平均:6.33 / 書評数:12
1994年10月
火天風神
平均:5.88 / 書評数:8
1993年01月
閉ざされた夏
平均:5.00 / 書評数:5
1992年05月
水上音楽堂の冒険
平均:5.25 / 書評数:4
1991年10月
心のなかの冷たい何か
平均:5.00 / 書評数:1
1991年03月
ぼくのミステリな日常
平均:6.45 / 書評数:20