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[ 短編集(分類不能) ]
暗い越流
葉村晶シリーズ 他
若竹七海 出版月: 2014年03月 平均: 6.33点 書評数: 3件

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光文社
2014年03月

光文社
2016年10月

No.3 7点 E-BANKER 2017/12/21 23:02
雑誌掲載の三編に書き下ろしの二編を加えて単行本化された短篇集。
2014年発表。
表題作で第66回日本推理作家協会賞短篇部門も受賞。

①「蠅男」=これは葉村晶シリーズで、彼女はまだ三十代という設定。というわけで割とアクティブに活動するわけだが、例によって“予想外の不幸”に遭遇することとなる。しかも「蠅男」である。いやだいやだ! こんな目に遭うなんて自分なら絶対に嫌だ!・・・って思った。
②「暗い越流」=凶悪な死刑囚に届いたファンレターという魅力的な冒頭部から始まる表題作。事件はやがてあらぬ方向へ・・・っていうことになるんだけど、探偵役の「私」の境遇と徐々にシンクロしてきて・・・。作者の旨さが光る一編。
③「幸せの家」=これも読者の引き込み方が旨い。大方のケリがついたあとで更にもうひと捻り・・・っていうのがなかなか。個人的にはこれがベストかも。
④「狂酔」=ある男の独白だけで構成された作品。男が過去に巻き込まれた事件、そして現在進行形の事件。ふたつが徐々にシンクロしてきて・・・ラストに突如訪れる衝撃!
⑤「道楽者の金庫」=これも葉村晶シリーズなのだが、①よりも時代は進み、彼女も四十代に突入して・・・っていう設定。四十歳を超えても相変わらず不幸に遭遇してしまう彼女。今回の相手は何と「こけし」だ!(新日本プロレスのレスラーじゃないよ!)

以上5編。
葉村晶シリーズはもう安定感たっぷり。安心して楽しめる。
最近、人気に拍車がかかってきた感があるから出版側からの要望も強いかもしれないけど、あまり乱発させないで大事に続けて欲しいシリーズだと思う。

ノンシリーズの作品もなかなか上質。
それほどトリッキーとか斬新なアイデアが盛り込まれているわけではないけど、脂の十分のった作者の腕前が楽しめる作品。
推理作家協会賞の受賞も頷ける。
ということで高評価。

No.2 6点 まさむね 2017/02/19 20:17
 5篇で構成される短編集。
 うち2篇には葉村晶が登場しますが、短編自体の出来栄えとしては他の3篇の方が良かったかな。個人的なベストは日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作で、最後の最後まで企みに満ちたプロット。
 結構読み得な短編集と言えるのではないでしょうか。

No.1 6点 kanamori 2014/04/17 23:14
推理作家協会賞受賞の表題作を含む5編からなる最新短編集。
久々に作者のミステリを読む感じがするが、謎解きを主眼としたものでも、ラストでさらにひとヒネリし、ブラックに落とす作風は相変わらず。いわば、謎解きミステリと”奇妙な味”タイプの融合といったところでしょうか。

女探偵・葉村晶が登場する「蠅男」「道楽者の金庫」の2編は、伏線を活かした編中では割とオーソドックスな謎解きモノ。後者は「ビブリア古書堂」シリーズの某作にプロットが似てしまっているのが気になった。
「暗い越流」と「幸せの家」が、まさに謎解きと”奇妙な味”が融合した作者らしい作品。とくに前者は先が読めない濃密さが良。
「狂酔」は、つかみどころのない男の独白を読み進めていたら、とんでもないネタが最後に飛び出してくる。これがイヤミス度でいえば一番かもしれない。


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