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[ 本格 ]
悪魔のひじの家
ギデオン・フェル博士シリーズ
ジョン・ディクスン・カー 出版月: 1998年10月 平均: 5.25点 書評数: 4件

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新樹社
1998年10月

No.4 5点 nukkam 2021/08/07 05:48
(ネタバレなしです) 「雷鳴の中でも」(1960年)以来久しぶりの1965年に出版されたフェル博士シリーズ第21作の本格派推理小説です。不可能犯罪の本格派を得意としたクレイトン・ロースンに献呈されており、アントニー・バウチャーが「探偵小説の黄金時代のうれしい復活」と評価を寄せ、タイトルに使われている<悪魔のひじ>と呼ばれる岬に建つ緑樹館(Greengroove)が舞台と読む前から何ともわくわくしましたが...。会話はちぐはぐで説明は回りくどく、おまけになかなか事件が起きないじりじり展開に私の期待値はだんだん下がっていきます(笑)。幽霊の正体見たり枯れ尾花なのは合理的な解決を用意すれば多かれ少なかれそうなるので仕方ないと思いますが、幽霊の目撃談の段階から既に枯れ尾花です(笑)。それでも色々な謎解き伏線を回収しながらの推理説明はこの作者らしいし、不可能犯罪トリックはkanamoriさんのご講評にあるように過去作品からの流用ではあるのですが複数作品のトリックを組み合わせて過去作品を読んでいる読者でも簡単には見破られないように工夫の跡が見られます。

No.3 5点 レッドキング 2020/11/03 06:25
密室が二部屋。一部屋は「完全」な密室だが、もう一部屋は半開きの「不完全」密室。起きた事件は両部屋とも殺人未遂。とりあえずこれで我が基本評価点5点を進呈。「悪魔のひじ」と呼ばれる岬に佇む、幽霊が徘徊する古豪邸を舞台に、遺産相続の絡んだ殺人未遂事件が展開する。「緑樹館」という魅力的な屋敷ネーミングに半狂いの老兄妹。せっかく舞台を魅惑的な展開期待へと盛り上げたのに竜頭蛇尾につぼみ、フェル博士ドタバタもなく、基本評価点のみで終わってしまった。

No.2 6点 2018/09/09 18:13
 歴史家ガレット・アンダースンは二十年ぶりに再会した旧友ニックに、ハンプシャー在住の叔父、ぺニントン・バークリー邸への同行を頼まれた。イングランド南東部、ソレント海峡に突き出た〈悪魔のひじ〉に屹立する、緑樹館と呼ばれる館――
 そこで、彼の父と不和だった祖父クロヴィスの新たな遺言状が発見されたのだ。遺言は館を含め、ニックにバークリー家の全ての資産を与えるというものだったが、既に十分な資産家である彼は相続放棄の意思を固めていた。
 それとは別に遺言状発見以来、緑樹館では幽霊騒ぎが持ち上がっていた。館を建造した18世紀の悪徳判事、サー・ホレース・ワイルドフェアの黒ずくめの亡霊が現れるというのだ。不安を覚えたニックは併せての助力を求め、ガレットもそれを了承する。
 ハンプシャー州に向かう途次、列車内でガレットは別れた恋人フェイに再会するが、偶然にも彼女はぺニントンの秘書となっていた。フェイとは別途に緑樹館に赴くガレット達だったが、不穏な気配漂う館に到着するや否や、一発の銃声が彼らを出迎える・・・。
 1965年発表、最後から3番目のフェル博士物。おどろおどろなタイトルについ初期ばりの展開を期待してしまいますが、トリックは至ってシンプル。まわりくどい描写が続き、メインの事件が起きるのは作品半ば過ぎですが、緑樹館に着くなり黒ずくめの幽霊によるぺニントン銃撃→続いてその晩の内に再度の銃撃による密室内での殺害未遂事件→翌晩には犯人逮捕と急転直下の展開を見せます。
 個人的には幽霊騒動に偽証が混じる事よりも、犯行前後に都合の良い偶然が重なるのが問題。犯人が自信過剰過ぎて、ぺニントンを始末した後の見通しが実質ゼロなのはさらに問題(あまりにアレなのが凄い目眩ましですが)。トリックも銃の火傷の件があるので、無理に密室に仕立てない方が良かったんじゃと思います。
 ただ流石に巨匠なだけあって、犯人を読者の意識外に置く手際はいつもながら見事。犯行の段取りに必要な、ある品物を持ち出す手口には完全にやられました。
 最後期の本格力作という位置付けのこの作品。好意的な批評も多く、それなりに楽しみながら読めるけど、トリックの無理が色々とプロットに来てるんで佳作にまでは至らないかな。

No.1 5点 kanamori 2010/06/23 20:12
60年代以降の後期の作品のなかでは比較的出来がいいと思いますが、密室トリックは多少改変されていても自身旧作の使い回しですので、カーを読みなれた人は察するのは容易だと思います。
犯人の意外性を追求する姿勢は変わっていませんが、隠蔽手段として関係者の嘘の証言が関わっている点は感心できません。


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