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[ 本格 ]
アラビアンナイトの殺人
ギデオン・フェル博士シリーズ/別題『アラビアン・ナイト殺人事件』
ジョン・ディクスン・カー 出版月: 1957年11月 平均: 4.67点 書評数: 9件

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早川書房
1957年11月

東京創元社
1960年01月


1961年06月

東京創元社
1961年06月

No.9 3点 文生 2023/06/23 21:41
話が長い割に大した謎もなく、そのうえ、同じ事件を3人の視点から描かれるのだけど、どれも劇的な違いがあるわけでもないので読んでいてとにかく退屈でした。真相も凡庸で『盲目の理髪師』に並ぶつまらなさ。

No.8 4点 レッドキング 2021/02/08 18:10
三章とエピローグから成る長いミステリ。一、二章で別視点からの殺人事件の丁寧な証言が語られ、三章で仮探偵による実に詳細な解明がなされ、エピローグ・・それも文庫本わずか十数頁ほどで、真探偵フェルによるドンデン返し真相が明かされる。実に十一人の容疑者・・実際は九人・・の5~15分刻みの行動時間表の丁寧なアリバイロジック展開と幾つかの物証が良い。たーだ、最後の最後に殺害場所の出入口が一個増えちゃうってのはまあ良いとして、元々、出入り口が複数あるってのがねえ。毎度、書いちゃうが「密室」こしらえてほしかった。

No.7 6点 クリスティ再読 2019/05/26 13:12
さてカーの(狭義の)ミステリでは最長編?な本作、「冗長」とみる方が多いのはまあ、否定しようがないのだけども、それでもね、志だけは結構高いように思うよ。本家の「アラビアン・ナイト」に触発されて、スティーヴンスンが「新アラビアン・ナイト」を書いて、カーは結構これに影響されている(たとえば「赤後家」の冒頭)のは言うまでもないことなんだけど、本作はその一番特徴的な、「複数の語り手が事件を別な角度から叙述する」というアイデアの中に、ミステリとしての謎と手がかりを込めようとしているわけだ。語り手は正直だが、それぞれ事件の一部しか見ていなくて、重ね合わせても全体像をカバーしきれない死角みたいなものが生じて....をうまく書けたら、本当に凄い傑作だったのかもしれない。「間主観性のミステリ」なんてね。
わけの分からない状況が、だんだんと整理されてきて、薄皮が剥がれていくように状況が明らかになっていく...これするには「長さ」は必要だし、うまくファースを織り込んでそれなりに頑張ってるとは思うんだよ。ただ、盲点になるものがあまり魅力的でないし、導き出される真相にも意外性がない。残念でした。
ただこの構想を批判するとなると、本作の作中タイムスパンが短すぎるのが、足を引っ張ってる、という見方ができるのかもしれない。これを時間をおいて...とうまくやったら、あれそれって「五匹の子豚」かな。

(長さなら「ビロードの悪魔」が勝ってるようだ...あっちは実に面白いが、冒険小説味が強いからねえ)

No.6 6点 弾十六 2018/11/04 00:45
JDC/CDファン評価★★★★☆
フェル博士第7作 1936年出版。創元文庫(1961)で読みました。
急に思いついたのですが、この作品、荒木飛呂彦先生に描いてもらったらぴったりだな〜と。作者JDCの脳内にはそんなマンガ的イメージが常にあったんじゃないかな?冒頭から異常な設定が次から次に出てくるので、もーどーでもいいや、となってしまうのが欠点。投げ出さずに読めば、段々と解決してパズルのピースがきれいにはまってスッキリ、結構面白い作品です。相変わらず誰が誰だかわかりにくい人物描写下手なJDCで、舞台の位置関係もわかりにくいので図面が必要ですね。(原書にはついてたのかも)
さて恒例の歌のコーナーです。(フェル博士には酒と歌がつきもの) 原文が手に入らなかったので調べが行き届いていませんが…
p83 ミュージックホールの流行歌≪ミイラは死んでも生きている≫ : 不明
p92 おれたちゃカーノの兵隊さん: Fred Karno’s Army 第一次大戦時に流行。Webに音源あり。
p99 ≪水夫のバーナックル ビル≫: Barnacle Bill the Sailor、p101「きれいな娘のいうことにゃ」がその歌詞。WebにHoagy Carmichael(1930)他あり。
p130 ≪やつは陽気な男だから≫: For He's a Jolly Good Fellowのこと?
p133 ≪獣たちは二匹ずつ歩いていったよ≫: The Animals Went In Two By Two(ノアの箱舟の歌)のこと?
p136 ≪月明かりの入江≫: Moonlight Bayのこと?
余談: 登場人物のセリフを借りて超有名作品(1934)の悪口が書かれています…

No.5 5点 nukkam 2016/07/30 05:05
(ネタバレなしです) 1936年発表のフェル博士シリーズ第7作の本格派推理小説です。タイトルからアラブ風とかペルシャ風の異国情緒を期待する読者がいるかもしれませんがそういう雰囲気は全くありません。カー全作品中でも屈指の大作で、「千夜一夜物語」のように語り手(3人の捜査官のリレー形式)による説明で事件のあらましがフェル博士に伝えられます。物語の大半はこの捜査官の「語り」に終始しており、クロフツ風に捜査をじっくりと書き込んでいるのが特徴ですが伝聞形式ゆえのまわりくどさという弊害も生じていて読みにくい面もありました。謎解き手掛かりのばらまき方のバランスが悪くて無駄なページが多いという印象も強く、実際の長さ以上に冗長に感じました。

No.4 3点 斎藤警部 2015/07/09 06:51
長いのは構わん、博物館という舞台装置も魅力だが、何しろ話が複雑すぎる上に詰まらんから読めないこと読めないこと! 頑張って結末に辿り着けば犯人は意外な人でも何でもないし、残念でしたお疲れ様! 構成の凝り様には新味があって、目次だけ眺めるには何やら愉しそうなんだけどね。。。 カーなのに、変に真面目に走っちゃった感が有る。 大きなこけおどしが欲しかった。

No.3 6点 kanamori 2010/06/24 19:21
フェル博士の安楽椅子探偵もの。
3人の警察関係者が夜を徹して不可解な事件の顛末をフェル博士に語り明かすというプロットがタイトルの由来です。
その事件は確かに奇妙な様相を呈していますが、怪奇性はあまり見られず、いったい何が起こっているのかという趣向は「帽子収集狂」の事件を連想しました。
同じ事件を別の角度から語る1部・2部の試みはちょっと面白いとは思いましたが、重複感も感じました。

No.2 5点 2008/12/13 12:21
カーの作品中たぶん最長のミステリは、奇妙なユーモアを漂わせながら、うんざりするという人がいるのももっともなくらいゆったりと進んで行きます。
殺人の不可解な状況に合理的な説明をつけていく第3の語り手ハドリー警視の捜査と推理は緻密で、説得力がありました。すべてが説明し尽くされたように思えますが、それで終わってしまってはフェル博士の出番がありません。そこで、作者はメタ・ミステリ的な構造をとって、別の犯人を指摘させています。ただ、その推理は安易な手がかりを基にしていますし、どんでん返しというほどでもなく、少々がっかりでした。

No.1 4点 Tetchy 2008/11/24 22:25
1つの事件について、三者三様の証言があり、そのどれもが微妙に違っている。その相矛盾した内容を基にフェル博士が真相を突き止めるという趣向だが、いかんせん長すぎ!
また事件がさほど魅力的でないのもあって、つまらない話を三度も聞かされる苦痛すら感じてしまった。
題名のアラビアンナイトは大して意味がなく、事件の舞台となる博物館にアラビアからの骨董品が展示されており、凶器がアラビア風の短剣であったことに由来する。
あっ、もしかしてこれはカー版国名シリーズ!?


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