皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] 九つの答 |
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ジョン・ディクスン・カー | 出版月: 1958年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 7件 |
![]() 早川書房 1958年01月 |
![]() 早川書房 1981年01月 |
No.7 | 5点 | クリスティ再読 | 2025/01/09 14:49 |
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ヘンテコな作品。ヤタラ長いし「9つの間違った答え」という趣向もピンとこないことから、敬遠してたのを思い立って読んだわけだが...導入から快調に飛ばして読んでいける。カーの冒険味の強い時代物の手法で、舞台が現代、といったテイスト。
憎々しいヴィランとレスラー上がりの執事、と言えば、ゴールドフィンガーとオッドジョブ!なんて連想をしながら読んでいたよ(苦笑)身元を偽装して潜入するのも妙に007。というわけで、楽しく読めるんだけども、中盤あたりから鈍重な印象を受けるようになる。 これは考えてみると、一つの場面でたくさんのことが起こり過ぎて、場面の一つ一つが長すぎる、ということの影響ではないのだろうか。そしてBBCの放送会館とかベーカー街の「シャーロック・ホームズ展覧会」といった、カーの個人的興味で「書きたい!」と思った時事的なネタを引っ張り過ぎるのが、ヘンなコダワリみたいに感じられる。「鈍重さ」の原因はこんなあたり? でさらに「九つの間違った答え」という趣向自体が、ややメタな狙いでもあるから、上記個人ネタとも合わさって「...あんたのご趣味だろ?」といったあまり芳しくない印象ももたらしているかもしれない。パズラー的な狙い自体は「まあそういうのもある」という程度。狙ってつまらないあたりで着地したかな?という感覚。 カタルシスがないなあ.... |
No.6 | 5点 | レッドキング | 2020/10/03 19:49 |
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フェル博士は出演せず、長い・・でも結構サクサク読めるミステリ。オカルトホラーではないがソフトにグロテスクで、爆笑ドタバタて程ではないが微笑くらいはさせてくれる。メインのなりすましトリックには騙された。読み返したら・・まあ確かに「ふぇあ」かな、あの叙述。すさまじくチープな不可能トリックも付いてる。で、タイトルの「九つの誤ったカイシャク」だが・・ほぼ、そんな疑い持たんかったわ。 |
No.5 | 6点 | 雪 | 2019/01/23 07:18 |
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アメリカに渡り今は一文無しの元英空軍少佐ビル・ドーソンは、なけなしの祖母の遺産を受け取るためにニューヨークのスローン・アンド・アンバレー法律事務所を訪れた。だがそこで彼は一組の男女とアンバレー氏の会話を聞きつける。
ビルに気付いたカップルの一人ラリー・ハーストは、彼に一万ドルの冒険を持ち掛けてきた。ラリーの身代わりとなり、イギリス在住の富豪の伯父ゲイロードに会って欲しいというのだ。恐るべき伯父は不仲な甥を家督相続人に指定するに当たり、自宅への定期の訪問を義務付けていた。だが幼少時からゲイロードの病的な虐待を受けてきたラリーには、それは到底不可能なことだった。 申し出を了承したビルは二人と一緒に〈ディンガラ酒場〉へと繰り出すが、そこでラリーは青酸カリを飲まされ倒れてしまう。ラリーの婚約者ジョイとも離れ離れになってしまったビルは、故郷への帰還と強敵ゲイロード・ハーストとの対決を誓うのだった。 1952年発表の現代を舞台にした「ゼンダ城の虜」の流れを継ぐ冒険ロマン。「ビロードの悪魔」の次作ですが、分厚さもそれに匹敵する作品。HPBであっちが439P、こっちが441P。HPB版の「アラビアン・ナイト殺人事件」はP数不明ですが、ひょっとするとこれがカーの最長編かもしれません。去年からの繰り越しで、読むのに結構苦労しました。 酒場での毒殺騒ぎの後、ビルは飛行機でイギリスへと向かうのですが機内で別れた恋人マージョリと再開。縒りを戻したカップルはラリーとジョイに化け、ゲイの下に赴きます。だが指定されたホテルは既に怪しげな人物や警察に見張られ孤立状態。ゲイの召使いである元レスラー、ハットーにも苦杯を舐めさせられます。さらに正体を見破られたビルは、ゲイロードと生死を賭けた駆け引きをすることに・・・。 タイトル通り作品中には九つの質問が挿入され、読者が思いつきそうな考えは「それは誤った答である。第○の解答を捨てていただきたい」と返されます。意表を突くものもありますが中には蛇足なものもあり、有効に機能しているとは言えません。 かなり大胆なトリックが仕掛けられていますが、全体に筋運びが強引ですね。色々な趣向もこれほどの長編を支えるには不足気味。ハードボイルドに対抗した変化の試みだと思いますが、これ一作きりで再び歴史物に舞い戻ったのも出来映えに不満があったからでしょう。この頃は大部の作品を連発した時期に当たりますが、もう少しコンパクトに仕上げるべきだった作品。旧版表紙見返しに「独創的、画期的」「史上に不朽の傑作」とありますが、決して悪くはないにせよそこまでのものではありません。 |
No.4 | 7点 | ボナンザ | 2017/12/23 19:08 |
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それほど知られていないが、カーのノンシリーズものの傑作のひとつと言っていい。
犯人は勘のいい人ならピンとくるだろうが、作者の地の分のトリックなど楽しい仕掛けが満載。 |
No.3 | 6点 | nukkam | 2015/06/28 10:56 |
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(ネタバレなしです) 1952年出版の本書は、「好事家への小説」という副題がついているように、謎解きマニアを意識して書かれた本格派推理小説です(シリーズ探偵は登場しません)。物語の合間合間で作者から読者に対して仮説が9回にわたって提示され、その仮説は間違いで真相は違うところにあると警告されます。中でも9番目の仮説はいかにも謎解きマニアの読者を意識したものです。中盤からの殺人挑戦ゲーム以降の展開はカーが以前書いたラジオドラマ脚本の焼き直しにすぎず、先が読めてしまった...と思っていた私は第7の警告で見事に背負い投げを食らいました。トリックはかなり強引で無理があるように思いますが、非常に複雑なプロットとたたみかけるような場面変化の連続によってじっくり読むもよし一気に読むもよしの作品に仕上がっています。 |
No.2 | 6点 | kanamori | 2013/01/29 23:07 |
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偶然出会った大富豪の甥との契約で、彼になりすまし英国の”伯父”のもとに赴いた青年ビルが、命まで狙われる陰謀劇に巻き込まれるといった冒険活劇スリラー。ですが、作者の稚気溢れる趣向と、(たぶん当時の感覚でもアンフェア認定と思われる)かなり大胆で強引なトリックを施したゲーム性の強い本格ミステリでもあります。
原題の”Nine Wrong Answers”(9つの誤った答)が示す通り、物語の途中で作者が何度も顔を出して、「〇〇〇と考えるだろうが、それは誤りである」といったチャチャ入れがなんとも微笑ましい。 ただ、ポケミスで400ページを超えるボリュームはもう少しコンパクトにできるだろうし、途中の錯綜した活劇スリラー部分がやや冗長かなと思います。 |
No.1 | 7点 | 空 | 2009/01/21 19:57 |
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同時期にカーが書いていた歴史ものと似たテイストが感じられる、シリーズ外作品です。現代(1952発表作)が舞台のはずなのですが、いつのまにか時代も定かでない異世界の冒険活劇世界にはまりこんでしまったような感覚を味わわせてくれます。また、カーの歴史趣味も重要なファクターとして出てきます。
話が展開していく途中で、ミステリを読みなれた読者が思いつきそうなこと(?)を、八つの間違った答として注釈を挿入し、事件解決後に置かれた九つ目では、アンフェアな記述があるという主張は間違った答であるとしています。しかし、これは訳し方の問題だそうですが、実際にはアンフェアなところがあります。人称代名詞などを不自然にならないように訳すのは難しいのでしょうが。個人的には、本書の持ち味が冒険小説的なこともあり、厳密にフェアかどうかはあまり気になりませんでした。 |