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[ 本格 ]
震えない男
ギデオン・フェル博士シリーズ 。別題「幽霊屋敷」
ジョン・ディクスン・カー 出版月: 1959年01月 平均: 4.62点 書評数: 8件

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東京創元社
1959年01月

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2023年04月

No.8 4点 クリスティ再読 2023/06/27 23:58
創元の新訳で。
出だしとか意外に雰囲気がいいんだけども、幽霊屋敷に訪問してからは話が終始グダグタ。なんか間伸びしている。トリックはねえ、どうこう論評するようなものじゃないように思う。お約束みたいなものとして笑って済ますべきだろう。で、問題は終盤の真犯人をめぐるプロットの綾なんだけども...

17章で物理トリックが解明、19章末尾でドンデン、20章でさらに...で終わり。
本当に最後の最後で波乱があるんだが、いやこういう仕掛けをするんなら、もっと書きようがあるだろう?というのが正直な感想。ネタとしては「ミステリの宿題」みたいなものなんだから、大いにやるべきネタだと思っている。
しかし、カーは何でこんなもったいない使い方をするんだろうね。定型的なミステリの書き方この時期妙にこだわりすぎて、つまらなくなっているとしか思いようがない。

最後の真犯人の件、タイミングが難しいから無理筋だと思う...そういうあたりの粗さが、思いつきっぽく感じられるのが敗因じゃない?

No.7 4点 レッドキング 2021/04/18 16:19
「幽霊屋敷」を購入した裕福な男が催す幽霊パーティー。「見えない手」がシャンデリアを揺らし、女の足首を掴み、壁に掛かった銃を宙に浮かして殺人を起こす。「それをやっちゃあ、おしめえよ(これ使っちゃあ、どんな「密室殺人」もありだ)」て位のスーパー機械トリック出しちゃって、本来3点だが、操りネタも面白いんで1点加点。

No.6 5点 nukkam 2020/06/12 21:56
(ネタバレなしです) オカルト演出を織り込んだ本格派推理小説を得意とした作者のことですから幽霊屋敷を舞台にした作品もあるだろうと思ってましたが、1941年発表のフェル博士シリーズ第12作の本書がそれでした。ちなみに作中時代は1937年で第二次世界大戦の少し前ですがプロットの中で上手く時代性を活用しています。いくつもの謎が提示されますが大きなのは2つ。1つは17年前の1920年に老人がシャンデリアの下敷きになって死んだ事件ですが、状況証拠から判断すると彼が椅子を置いてその上からシャンデリアに飛びつき、ぶら下がりながらぶらんこのように身体をゆすっていたのではというシュールな推理が披露されます(真実ならなぜそんなことを?)。もう1つの(メインの)謎は壁にかかっていたピストルが誰も触れていないのに空中に浮かび上がって被害者を射殺したというものです。ハヤカワポケットブック版が半世紀以上前の古い翻訳というのも問題ですが、ちぐはぐな会話や質問に質問を返してはぐらかしたりと物語のテンポがよくありません。肝心の射殺トリックはユニークではありますがあのトリックで銃を空中に浮かせる、弾丸を発射させる、相手に命中させるを全て実現可能と計画するのはあまりにも無理筋ではと頭の中で疑惑の渦がぐるぐる...(笑)。とはいえ最後にとんでもない秘密が明かされるなどなかなか凝った謎解きの作品ではあります。しかしこのタイトルは何とかならなかったのでしょうか。「震えない男」とは被害者を指していますがほとんど印象に残りません。「絶対に偶然を当てにしない男」の方がよほど個性的です。

No.5 4点 弾十六 2018/11/11 20:47
JDC/CDファン評価★★★★☆
フェル博士 第12作。1940年出版。HPBで読了。
なにせエリオット三部作(曲った蝶番、緑のカプセルの謎)の一つなので、非常に期待して読んでたのですが、事件現場の目撃者の証言(p72)で、あっこれは駄目なJDCだ!とガッカリ。でも意外と持ち直すのが早くて、まともな探偵小説?と思ったら、やっぱり変てこな物語でした。動機も手段も上手くいく可能性も登場人物の心理もかなり無理があります。あまりにヒドいので誰かに読ませたくなりますね!
歌はたった一曲だけ。
p180「浜辺に坐ってみたいのよ」(I Do Like to Sit beside the Seaside): ミュージックホール由来でI do like to be beside the seasideという有名曲があります。作詞作曲John A. Glover-Kind (1907)
銃器関係では古式ピストルのコレクションが登場。
p46 車輪式引金(wheel lock): ホイールロックは回転式発火装置
p46 ナポレオン時代の騎兵用ピストル(Napoleonic cavalry pistol): フリントロック式のもの。Webに画像あり
p47 雷管(percussion cap): パーカッション式は1820年頃の発明なので「ウォータールー」以前のピストルのコレクションならホイールロック式かフリントロック式ですね。
唯一の現代銃は登場人物(英国人だと思います)の所持品のa .45 army revolver(p57): 英国陸軍ならWebley拳銃(正しくは.455口径、JDCは「ウェブリー45口径」と書いたことあり)、可能性は低いが米国陸軍の45口径ならM1917。流石に骨董品のColt Single Action ArmyやRemingtonのNew Model Armyではないと思われます。
p122 毛状引金(hair-trigger): ヘアトリガーは「ほんのちょっと触れたら発射する状態の引金」のことですが「毛状引金」という訳語は初めて見ました。

ところでp146の会話はこんな感じに訳したいと思いました。
“You don’t take many chances, do you?”(運はあてにならないと思ってるんですね)
“My boy, I never take any chances”(私は決して幸運をあてにしないのですよ)

No.4 5点 ボナンザ 2017/05/23 21:58
まずまずの良作ではないか。トリックは確実に馬鹿ミスの部類ですが、二転三転する真相など、カーらしい遊びもあって本格好きなら読んでおいて損のない内容です。

No.3 6点 了然和尚 2015/04/06 14:11
本作の評価は2段返しの2段目の結論の評価によると思うのですが、十分本格として手がかりが示されており、私は好きです。(この採点ではネタバレありですが、さすがにこの結末は自重しておきます)なんか、シンプルな見取り図がついてるなとは思いましたが、重要な手掛かりでした。
大仕掛けの機械的トリックについてですが、トリックそのものよりフェル博士によって放火されて隠滅してしまうというのが、また私好みです。最近の小説やドラマは遵法精神が旺盛すぎて、このような暴挙は認められないとか言われそうですが。
難点を言えば、ポケミスは読みにくい! 2段で活字が小さくぼやけていて、苦戦しました。他の大御所に比べてカーの未文庫作品は多すぎるようです。本作も新訳、文庫版でもう一度読んでみたい。

No.2 4点 あびびび 2011/10/21 15:12
窓際でタイプライターを打っていた男が殺される。その部屋には彼の妻がいたのだが、「銃が勝手に撃った!」と。その機械的トリックはどうも怪しい。命中率などを考えてしまう。

さらに幽霊屋敷と呼ばれるこの館に入ったある女性が、「ドア付近でくるぶしを手で掴まれた!」と悲鳴を上げる。これは怪奇的ムードに拍車をかけたが、最後の最後で実は嘘だったと…。

その女性は主人公と言うべき語り部?の連れだけに、「そんなあほな!」と。

No.1 5点 kanamori 2010/06/13 16:39
フェル博士が古い屋敷に招かれた客人の密室殺人に挑むという著者定番のストーリー。創元推理文庫からは「幽霊屋敷」の邦題で出ていますが、ともに絶版のようです。
機械的密室トリックはちょっと推理するのは難しそうで、証言者の嘘が関与している点もマイナス要素です。
面白いのは、フーダニットに関してプロット上のある仕掛けをしているところ。これは、バークリーの某作を思い浮かべました。


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