皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格/新本格 ] 名探偵のはらわた |
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白井智之 | 出版月: 2020年08月 | 平均: 6.91点 | 書評数: 11件 |
新潮社 2020年08月 |
新潮社 2023年02月 |
No.11 | 7点 | ALFA | 2024/04/03 08:38 |
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「津山三十人殺し」や「阿部定事件」など、現実の怪事件をネタに展開した4編からなる連作中編集。
「転生」という比較的馴染みやすい特殊設定で、精緻なロジックを楽しめる。人気作「名探偵のいけにえ」より本格味でいい。 テンポのいい文体で、心理や情景描写の味わいは薄いがノド越しがいい。 |
No.10 | 7点 | 虫暮部 | 2024/03/28 13:36 |
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連作長編を上手く転がしてパターン化からしっかり逃れている。冒頭で事件を七つ挙げておいて四話で終らせたのもちょうど良い判断。あと何と言うか、登場人物に血が通っている感じがして良かった。
ところで「神咒寺」と言う名の寺は実在。恨みでもあるのか……? |
No.9 | 7点 | レッドキング | 2023/11/30 09:55 |
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ラストで突然に名探偵へ飛翔する助手:原田亘(はらだわたる≒はらわた)が主役の四中短編集。「阿部定事件」「津山三十人殺し」「帝銀事件」等、日本犯罪史上のレジェンド達の「魔界転生(!)」トンデモ設定に、目も眩むばかりに豊富なロジックの百花繚乱・・よくぞここまで・・。「阿部定事件」「津山事件」の史実を、フィクションで再構築して新事件に繋げる手管も見事。出て来るキャラはいつも同じ・・人物造形の抽斗小さい・・だけどね。
(※表紙画は、三話の「チェシャ」が、四話の猟銃を持ったコンセプトと思われ。) |
No.8 | 7点 | みりん | 2023/10/28 22:54 |
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津山30人殺しをモチーフにしたミステリはこれで3つ目ですが、どれも当たりですね。
【ネタバレがあります】 今まで読んできた白井作品は根っからの悪人が語り手であることが多かったのでこんなに真っ当なヤツは初めてな気がする。あと『名探偵のいけにえ』と話が繋がっているとかいないとか聞いていたんですが、いけにえの方をだいぶ前に読んだせいでどこが繋がってたんだ?って思い出せなくてモヤモヤしてます。読み直すか… 神哭寺事件 6点 心理アリバイトリック+オカルト特殊設定の導入。いつもより鬼畜猟奇趣味は控えめではある。 八重定事件 8点 だと思っていると、やって来ましたよ 受け渡しのシーンの絵面を思い浮かべるとシュールすぎる。 農薬コーラ事件 7点 少々ズルいミスリードと人間消失。子供の頃、親から外に放置されてる飲み物を飲むなと執拗に忠告されたのはこの事件のせいだったのか。 津ヶ山事件 7点 どこまで元の事件から改変を加えているのかは寡聞にして知らないが、こういう実際の事件に新たな解釈を施す試みは面白い。 ところで表紙の武装した女キャラはいったい誰やねん… |
No.7 | 6点 | mozart | 2023/10/10 11:15 |
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結構前に(「いけにえ」より前に)読みました。本作者はグロが売り(?)らしいので警戒しながら読みましたがやや肩透かし気味でした。ちなみにこれと「いけにえ」の二作しか読んでいないので「グロ上等」の境地には至っておりません。
内容については記憶の彼方に行ってしまった部分もありますが、その「特殊設定」がなかなか面白く本筋のメインパートに絡んでくるものの各話とも本格ミステリーとして機能しており好感を持てたことは記憶しています。読後感も悪くなかったです。 |
No.6 | 8点 | よん | 2023/08/21 14:48 |
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過去の大犯罪が現在に蘇った。男性性器切断事件や三十人殺しなど、昭和の大事件めいた事件が、現代において現代の人間によって繰り返されるのだ。その奇怪な事件に挑む名探偵を、助手的な立場の原田亘という青年の視点から描いているのだが、作者らしく紹介分以上にひねくれた物語である。
犯罪が現代に蘇る理由も、現代に蘇ったそれぞれの犯罪の関連も、名探偵と原田の関係も、想定外のアングルで想像を超越する。そこに丹念なアリバイ吟味や、人の手によるトリックが組み合わさり、意外で合理的な結末を経て、ほのかな成長の香りとともに着地するところが素晴らしい。 |
No.5 | 5点 | take5 | 2023/07/16 18:15 |
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読むべき本が貯まってきていて、
あわてて読んだからなのか? 日本重大事件史をなぞるのには良かったですが そこまで。 主人公の探偵との出会いも良かったですが そこまで。 新聞の書評で予約したのだっけ? 記憶がそこまで無くすみません。 |
No.4 | 7点 | パメル | 2023/01/12 08:12 |
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大ヒットした映画「死霊のはらわた」にオマージュを捧げた作品で、一つの謎にいくつもの推理が提示される多重解決型のミステリ。
召儺の儀式を行った結果、我が国の犯罪史にその名を刻んだ昭和の有名殺人鬼、七人が現代に甦り悪逆非道の限りを尽くす。その被害や日本全体に広がる。(題材に選ばれた現実の事件とは固有名詞やディテールが少しだけ改変されている)かくして前代未聞の殺人鬼狩りがスタートする。 主人公は、名探偵・浦野灸に心酔し浦野探偵事務所で助手として働く二十一歳の青年・原田亘(通称はらわた)。三年前から付き合っているみよ子は、東大文学部の四年生でヤクザの娘。その彼女の生まれ故郷である岡山県津ケ山市で、六人の死者が出る放火殺人事件が発生する。被害者たちは、炎上する寺からなぜ逃げなかったのか。警察から協力要請を受けた名探偵・浦野は、助手のはらわたをともなって現地へ向かう。 昭和の七つの事件の中でも、本書の中心になるのは津山(津ケ山)事件。冒頭には、現実の津山事件の犯人・都井睦雄が犯行直後に書き残した文章の一部「思うようにはゆかなかった」が引用され、作中でも事件の経緯が詳細に検討される。」つまりこれは、数々の小説が題材にしてきたこの大量殺人事件にまったく新たな角度からアプローチする事件ミステリでもある。 現代に甦る殺人鬼は、地獄で閻王にスカウトされ、亡者に責め苦を与える仕事をさせられている人鬼たち。甦るといっても肉体ごと復活するのではなく、生きた人間に憑依するので、外見からでは誰が人鬼なのかわからない。しかも、人鬼は体液の接触を通じて別の人間に乗り移ることも可能だという。この状況下で、名探偵と助手は首尾よく七人を見つけ出せるのか。人鬼特定のために駆使される華麗なロジックが読みどころ。 |
No.3 | 7点 | メルカトル | 2022/07/21 23:08 |
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稀代の毒殺魔も、三十人殺しも。名探偵vs.歴史的殺人犯の宴、開幕。推理の果ては、生か死か――。悪夢が甦る――。日本犯罪史に残る最凶殺人鬼たちが、また殺戮を繰り返し始めたら。新たな悲劇を止められるのはそう、名探偵だけ! 善悪を超越した推理の力を武器に、「七人の鬼」の正体を暴き、世界から滅ぼすべし! 美しい奇想と端正な論理そして破格の感動。覚醒した鬼才が贈る、豪華絢爛な三重奏。このカタルシスは癖になる!
『BOOK』データベースより。 いつものグロさがほとんどないのでどうも物足りなさを感じてしまいます。とは言え、構成そのものはかなりヘヴィー級ではあります。昭和の実際に起こった殺人事件の犯人の魂が乗り移り、過去と同じ事件を繰り返し、それに呼応するようにかつての名探偵であった古城倫道が蘇り、鬼畜達と対決していくというのが本筋。そして探偵の下僕である亘も助手として活躍しています。 問題は最初の事件で、これが又登場人物多目で相当入り組んでおり、ここをしっかり理解していないと十分に楽しめないと云う事になりかねません。最後の『津ヶ山事件』は津山三十人殺し事件の経緯を克明に著しており、この有名な事件に興味のある方はその再現度に頷かれる事と思います。 個人的には阿部定事件を準えた『八重定事件』が最もらしい作品として、好感が持てました。アリバイトリックが秀逸で、そこまでしなくてもと思いながらも、いつもの安定感と隣り合わせの危険度が最高潮に達した感がありました。 しかし残念ながら最初に「記録」として挙げられた七つの事件の全ての犯人を成敗している訳ではなかったのが心残りです。それと個人的には浦野の活躍がもっと読みたかったなと言うのが正直なところです。 |
No.2 | 7点 | まさむね | 2021/02/21 20:04 |
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第一話「神咒寺事件」を読み進めますと、作者お得意のグロテスクな表現もなく、ノーマルな短編なのかと思わせられつつ、最後には、本作を貫く驚きの特殊設定が示されます。各話のタイトルから、我が国の実犯罪をテーマにした短編が続くのだろうと想定はしていましたが、ちょっと戸惑いましたかね。
ベストは何といっても最終話の「津ヶ山事件」。勿論、モチーフは津山事件(津山三十人殺し)。この事件については、個人的に別書籍で読んだりして知識もあったため、大変に興味深く読ませてもらいました。練られています。正攻法の本格モノと言ってよいのではないかな。 |
No.1 | 8点 | HORNET | 2020/12/13 18:19 |
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原田亘、通称ハラワタは、幼い頃危機を救ってくれた名探偵・浦野灸の助手として働いていた。彼女のみよ子の父親がヤクザの組長という悩みを抱えつつ、今日も浦野について事件の捜査へ。事件は、みよ子の生まれ故郷・津ヶ山で起きた放火事件。そこでは77年前、向井鴇雄という青年が未明に30人の村人を殺して回ったという凄惨な事件があったところだった―
作者と題名から、お得意のグロ路線が想像されたが、「はらわた」は主人公の通称というだけのことだった。とはいえ、日本犯罪史に残る数々の凶悪事件をモチーフにしながら、ゾンビめいた特殊設定も交えつつ、あくまでロジカルな謎解きにまとめあげている筆者の力量は圧巻。「津山30人殺し」「阿部定事件」「帝銀事件」などの昭和史に残る事件を写し取った設定自体が大いに興趣をそそるだけでなく、ユーモラスな雰囲気を交えつつもミステリの本筋は失わない内容に脱帽。 面白かった! |