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[ 本格/新本格 ]
人間の顔は食べづらい
白井智之 出版月: 2014年10月 平均: 6.33点 書評数: 9件

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KADOKAWA/角川書店
2014年10月

KADOKAWA
2017年08月

No.9 7点 ミステリ初心者 2024/04/12 21:29
ネタバレをしております。

 前から注目していたものの、グロ表現があるということで敬遠しておりました。しかし、非常に端正な推理小説でしたw エログロ表現もあるのですが、それほど過剰というわけでもなかったです。直接的なグロよりも、クローンを作って食べるというSF設定のほうが面食らいましたねw ミノタウロスの皿とか、ゼノギアスを思い出しましたね(ちと違うか?)w

 論理的な多重解決系、叙述トリック的な仕掛け、どんでん返しがあり、推理小説的にも濃い内容でした。
 主に、誰が冨士山にクローン生首を送れたか?が主な問題になっていて、細かいアリバイ検証や仮説と否定が行われます。途中の河内ゐのりの説も、チャー坊の説も説得力があり、しかもその反証も論理的で素晴らしいです。ただ、個人的には細かすぎて当てられる気が全くしません…;; 100遍よんだとてわからないでしょうねw
 叙述トリック的な仕掛けとして、柴田和志と河内ゐのりは読者には1人ずつにみえるが実際は2人ずついるというような趣向の物がありました。正直、これは現在ではありきたりな叙述トリックなので、私でも感づきました。伏線やヒントも結構あり、とくに柴田周りではタバコを吸う・吸わない、人肉を食べる・食べない、よく似た人物が目撃される、写真が違う人だと言われるなど多くありました。フェアだと思います。河内ゐのりに関してはそこまで多く伏線を拾えてませんが、やっぱり柴田があれだと、河内ゐのりも2人いるのではないかと思うのが自然ですよねw
 最終的に、冨士山がクローンと入れ替わっていた驚きがありました。さらに柴田(チャー坊)と共謀した計画だったのは読めませんでしたw 共犯は好きではないのですが、どんでん返しとしてよかったですw 不思議と読後感が良いのもいいですねw

 総じて、ちょっときつめの特殊設定ですが端正な推理小説でよかったです。たの高評価作品も読みたくなってきました。

No.8 7点 みりん 2023/10/06 17:49
白井智之のデビュー作。これほどの作品が最終候補作止まりって恐ろしい世界ですねミステリ界は。

【ネタバレがあります】


病気で家畜が死滅した世界で非自然人であるクローン人間を食すこと(食人法)が許される世界。そのSF的世界観をベースに複数の怪奇事件と多重推理をたっぷり楽しめる本格ミステリ。そして最終的には物理の檻と人間社会の檻の2つを超える物語だったのですね。素晴らしい作品だと思います。
新型コロナウィルスという言葉が出てきた時にはこの作品の刊行年度が2014年であることに疑問符がつきましたが、そういえば元々あるウィルスだったんだな。わざわざ新型って付くんだから当然か…

No.7 7点 レッドキング 2023/06/05 23:50
面白かった。今まで「佐藤友哉舞城王太郎の類の作家」とヘンケン持って読まないで損した。「クローン人間」設定とグロ展開を煙幕にした、見事なる「生ける屍の死」「二の悲劇」「殺戮にいたる病」イイとこ取り。
(道尾秀介がこれ褒めたっての良く分かる・・彼自身、Brahms・Beatlesなみの良いとこ取り天才だからね)

No.6 6点 HORNET 2022/05/22 18:02
 まずこのぶっとんだ設定が作者ならではなのだが、その中で本格推理を堅持するのがこの作者の良いところ。
 正直、作中の「河内ゐのり」がどっちがどっちだったのか、最終的にはほとんど分からなくなってるけど…(笑) 解説で道尾秀介が書いているように、各キャラクターが憎めないのも本作品の良いところ。
 特殊な作風ではあるが、ある種の才を感じる作者である。

No.5 6点 虫暮部 2015/11/27 09:32
 基本設定は凄いツボ。しかし、登場人物の動きが不自然に感じられる箇所は多々ある。
 因みに、“柴田和志(通称チャー坊)”というのは“村八分”のヴォーカリストの名前そのまま。同バンドのギタリストは“山口冨士夫”。タイトルは“ヒカシュー”の♪人間の顔は面白い~、という歌をもじったものか。

No.4 4点 yoshi 2015/03/29 00:46
あらすじに「クローン」という言葉があることから、
当然ある種のトリックが予想され、
実際に読んでみると、舞台設定が既視感ゼロの秀逸なものなのに、
中盤から既視感ありまくりの地味な推理合戦になり、
結局メイントリックは予想の範囲を一歩も出ていなかったという、
評価が難しい作品でした。

No.3 7点 まさむね 2015/02/07 21:49
 ヒトクローンを工場で生産し,食用とすることが合法化された日本が舞台。しかも食べられるのは,自分の遺伝子から作られたクローンのみ。工場からは首を切断したうえで出荷される…何ともスゴイ設定です。グロい表現も少なくありませんし,現実感とか,モラル感に突っ込みたくなるとの意見もございましょう。
 一方で,ミステリとしての質は相当に高いです。探偵役が不明な中での推理の応酬,終盤の反転,ロジックの冴え,伏線の配置…素晴らしい。横溝正史ミステリ大賞の最終候補に残り,有栖川有栖氏と道尾秀介氏が絶賛したとの評も素直に頷けます。
 あの点については設定上当然に考慮すべきだった…と読後に悔いた訳ですが,それ以上に,そこをグロさを含めた全体構成に溶け込ませた手腕に感心いたしました。(ちなみに,個人的には登場させた意義,というか強調的に描いた意義が良く分からない登場人物がいるのですが,何か深い意図があるのでしょうか。単に驚かせたかっただけ?…って疑問がなければ,さらに加点したくなるところ。)
 今後の活躍に期待したくなる作家であることは間違いありません。作者は千葉県出身の東北大学法学部卒とのことで,伊坂幸太郎サンの後輩に当たります。早く次回作を読んでみたいですね。

No.2 6点 kanamori 2014/12/02 18:35
人間のクローンを食肉とするため飼育する近未来の日本。クローン生産工場で働く柴田和志は、顧客の国会議員あてに発送した首なしクローン肉のケースの中に切断したはずの生首が混入してたことから、脅迫事件の重要容疑者となるが、それはあくまでも壮大な悪夢の始まりに過ぎなかった----------。

かなりのキワモノ設定でグロい描写もあることから、完全に読者を選ぶタイプの怪作です(Amazonのレビュー評価が総じて低いのも分からなくありません)。
しかし、本格ミステリとして見ると(粗いところもありますが)非常によく練られており、その筋の方々が投票するほうの年末ランキングでは、上位に入るのは間違いないように思われます。
本格ミステリとして評価したい点を挙げるとすれば、中盤の生首の混入方法を巡る容疑者同士の推理合戦や、終盤のクイーンばりに犯人を特定するロジック展開、意外な”名探偵”登場からのどんでん返し等々で、さらに、この設定であれば真っ先に考慮すべきメイントリックにもヤラレタ感がありました。
ただ、この人物はいったい何のために登場させたのだろう?といった細かい疑問点もありましたが。
どちらかといえば、横溝正史賞ではなくメフィスト賞に応募すべきだったかもしれないと思えた作品。

No.1 7点 メルカトル 2014/11/19 22:40
疫病のため肉食が不可能となった日本で、公に人のクローンを工場で培養し、首を切断し出荷するという産業が興された。無論、食用である。当然他人のそれではなく、購入した本人のクローンだ。
そんな荒唐無稽な舞台設定のなか、その計画を押し進めた国会議員のもとに、本来梱包されないはずの生首が紛れ込むという事件が発生した・・・
本作は、第34回横溝正史ミステリ大賞最終候補作であり、白井氏のデビュー作である。多少荒削りで全体的にまとまりに欠ける面もあるが、個人的には大変気に入った。なぜこれが大賞に選出されなかったのか、それは他にもっと相応しい作品が応募された、受賞作としての品位というか品格に欠ける、或いはその両方が挙げられる。おそらく二番目の理由だと思うが、大賞を受賞しても決しておかしくない傑作だと私は考える。
これは大変な大型新人が現れたものである。次回作も大いに期待したいところだし、本作を上回るような作品に出会えることを願ってやまない。


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