皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] 東京結合人間 |
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| 白井智之 | 出版月: 2015年09月 | 平均: 5.75点 | 書評数: 8件 |
![]() KADOKAWA/角川書店 2015年09月 |
![]() KADOKAWA 2018年07月 |
| No.8 | 8点 | 斎藤警部 | 2025/12/25 02:40 |
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| 「どうせもう死人は出ねえだろうし、気楽にいこうぜ」
後期クイーン問題をブッ飛ばさずに、抱き溶かしてしまえ! 違う、幻の中で悶死させろ! ってな冗談だ、安心しろ!! “おれは唸り声をあげていた。 真相を知っている自分が聞いても、頭が痛くなりそうな理屈だ。” 白の字智の字ここまでやるか! 「結合人間」 「オネストマン」 「羊歯病」 を主軸三本柱とした特殊SF(?)設定のもと、特殊AV制作から特殊売春斡旋に転業した鬼畜三人組が、やむを得ぬ事情の暴風に押され、特殊求人で特殊俳優を調達の上、南の孤島での合法特殊ドキュメンタリー映画制作に乗り出す。 孤島には画家とその娘が住む。 連続殺人らしきものが起こるが、容疑者達の置かれた特殊条件ゆえに、摩訶不思議な論理的事象が発生する。 ミステリ展開の黒光りが凄まじく頼もしい魁作である。 ディープ偽装のディープな論理には溶かされた。 「全F」 「容X」 を連想させる大きなトリック群には大いに目を瞬いたが、そこで終わらせないのが白の字智の字の本領発揮ダンディズムだ。 「テレビで見てびっくりしたよ。 大変だったんでしょ?」 「生きて帰ってきてくれてありがとう。 ねえ、なにか言ってよ」 言うだけ野の字暮の字だろうが、メイントリックス(どれ?何?)も特殊設定ズもサブトリックスもバックパスを繰り出し疾走しながらガッツリ繋がって読者に大きく手を振っている。 このような生殖条件下でもしっかり◯◯◯◯◯◯+的ゆらめきと併存とをササヤカながら(?)叙述しているのは熱い。 言うまでもなく(以下略)。 何より構成の妙が爆発している! 愉しい酔いでヨタヨタしてしまう。 最後まで緊迫の手綱を緩めないその心意気ったら無え。 内包された叙述トリック(の片方!)さえ彼方に霞んで見える。 (もう片方のは ・・ ディープ過ぎてしばらく心臓つかまれたままだ) 更には、真犯人が誰かのみならず、真探偵が誰になるかの趣向、どちらも凄まじく意外でリンパ液の循環に良いに違いない!! 「あはは、そりゃあ殺すね」 まだあるのです。 こんだけ充実した動的ショート・エピローグがそうそうあってたまるか!! それでいて、このエピローグのお蔭でそれ以前のストーリーが虚しくなることなど全く無い、むしろ輝きを更に増す結果になってるってんだから、あきれてモノもステレオもASMRも言えませんや。 「実はあたしの知り合いにもう一人、事件の関係者がいるんだよね。」 ただ、多重解決の畳みかけは内容・形式とも充分に素晴らしいのですが、いわゆるダミー解決の途上で、こんだけぶっ飛んだ小説のくせに、妙に気安く容易く、甘い常識頼りの緩い(セコい)ロジック展開が幅を利かせる部分が目立ち、そこんとこ唐突にスリルを殺いでました。 最後にはそのへんの緩みもしっかり粛清されて見違える締まったボディに変身するんだけどね。 最後にちょっと減速したのが惜しかった処女作 「カオヅラ(人間の顔は食べづらい)」 とは減点要素の潜む場所が正反対でしたね。 こんだけぶっ飛んだパラレルワールドながら、その世界の人達が普通に赤羽に飲みに行きましょうとか言ってるのがおかしかったです。 まあ、こりゃ色々と映像化不可能な小説ですな。 して欲しいけど。 ネーミングセンスも(今回は特に色んな意味で)凄いんだけど、もしかして、スペイン系の名前の構造から(アレを逆にして)その先にアレをインスパイアされてたりして? あとやっぱ古代ギリシャのアレを逆にしてみたり、とかあるんですかね。 英語タイトルが “HONESTMAN” なのは、やはりあのオネストマン(嘘を付けない人)四すくみロジック展開に自信があるからでしょうか。 日本語タイトル “東京結合人間” の “東京” は “東京ディズニーランド” や “千葉県東東京市構想”(そんなものはない)的なアレでしょうか。 「重要証拠を落っことしちまった。 拾いにいくか」 「もういいですよ」 エンディング・テーマ曲はアイナ・ジ・エンド 「革命道中」 で決まりだと思います。 |
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| No.7 | 8点 | みりん | 2023/10/15 17:06 |
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| 「白井智之、二十四歳。末恐ろしい書き手である」と綾辻せんせーが帯で賞賛しているが、なんか妙に腑に落ちる。こういうの好きそう。
【ネタバレあります】 プロローグから挨拶代わりの痛覚刺激型グロ描写。読んでるこっちもあそこがいてぇ。 ノーマルマンが2人だという前提から導かれるドミノ倒しロジックは発明的じゃないか?まあ… 大多数の作家がトリックのために特殊設定を作っているのに対して、白井智之は更なるグロを描写するために特殊設定を作ってるんじゃねぇかと疑っていた。が、著者の猟奇趣味で包み隠された奇想極まるトリック。まさに鬼畜設定パズラーにふさわしい。正直なんでこんなに評点が低いのか分からんくらい凄かった。まあ例によって私は1ミリも気付けませんでしたが、ミステリを読み慣れている方にはバレバレっぽいのが減点要素なのかな?乱歩の『孤島の鬼』のような不気味さもあって大変気に入りましたね。 結合人間のビジュアルに想像力を掻き立てられるが、文庫本表紙みたいに横に並んでいるのかな?だとすると身長が伸びるのはどういうことなんやろね。 |
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| No.6 | 7点 | レッドキング | 2023/07/18 20:21 |
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| 第二作。なんたるBいやC級タイトル。SFパラレル設定いいことに、とんでもグロ描写( 綾辻「殺人鬼」か)のやりたい放題と思わせ、何気に、王道の孤島かつ密室物。それ以上に、なんちゅうNiceなロジック!・・SF縛りとは言え。
※ 「X」は犯人。6人(A・B・C・D・E・F)の中の2人が「X」。うち4人(A・B・C・D)の中で、もし、Aが犯人であれば、 Bは「X」で、Bもまた犯人となるが、この場合、CもDも連鎖的に「X」となり、「X」は2人という前提が崩れる。 よって4人の中に「X」はおらず、したがって、残りのE・F2人が「X」で、E・Fが犯人・・・素晴らしい。 こんな、ミステリ的感銘、麻耶雄嵩「木製の王子」逆家系図以来よー。しかも、惜しげもなくダミーに使い捨てて・・ |
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| No.5 | 2点 | yoshi | 2016/03/11 22:01 |
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| 最初の設定だけで、結合によう人物消失トリックじゃあるまいなと思い、
まさかた思いながら、エログロ苦手だが我慢して最後まで読んだら、 そのまんまだったのでがっかり。 「人間の顔は食べづらい」の時も実は同じ感想。 あれもクローンを使った入れ替わりをやりたくて、クローンを食料にする世界を構築したという印象を受けたものだったが、今回も人物消失がやりたくて、セックスの代わりに結合が行われる世界を構築した感じ。 |
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| No.4 | 6点 | 虫暮部 | 2016/02/01 10:35 |
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| この奇想は買いだ。ちゃんとミステリになっているし、面白かった。中学生が書いた小説みたいだと自虐的な台詞を登場人物に言わせているが、結合人間のヴィジュアル・イメージのおかげで一味違った絶海の孤島モノになっていると私は思った。しかし気持悪い。もう一度読めと言われても御免被る。 | |||
| No.3 | 4点 | abc1 | 2015/12/06 10:38 |
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| 拉致した少女の目を潰すシーンなどは相当グロくて吐き気がした。
それを我慢して我慢して最後まで読んで、報いられたとは思えなかった。 もうこの作家はいいや。 |
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| No.2 | 5点 | まさむね | 2015/11/07 21:57 |
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| うーん、「結合人間」という特殊設定を活かしたと言ってよいものかどうか、微妙です。序盤のグロさに嫌悪感を持つ方もいらっしゃるでしょう。最終的に本格度は高いと思うのですが、終盤の捻りも含めて、何かスカッとしない。
作者のデビュー作「人間の顔は食べづらい」を超えることはなかったなぁ…という印象かな。 |
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| No.1 | 6点 | メルカトル | 2015/10/10 19:41 |
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| プロローグは手に汗握るほどグロい。そりゃもう、この先どうなるんだろうと心配になるほどえげつない。で、序盤は独自の特異な世界観を見せつけられて、なにこれ?と思いながらも、グイグイと引き込まれる。そして、なんだかんだで取り敢えず、一件落着的な感じですっきり。
さらにその後の展開が期待されるが、いわゆる孤島もので既視感アリアリ。どこかで読んだことある感が満載で、しかもやや退屈。結合人間やオネストマンといったネタが全然生かされていないではないかと憤慨してしまうのであった。 そしてエピローグ、ここに来てやっとなるほどと首肯できる解決が明示され、再度すっきり。 全体としては、グロ+まったり+異様な世界+ちょっと意外なラストといった感じ。 |
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