皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ ホラー ] ずっとお城で暮らしてる |
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シャーリイ・ジャクスン | 出版月: 1994年12月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 3件 |
学習研究社 1994年12月 |
東京創元社 2007年08月 |
東京創元社 2007年08月 |
No.3 | 8点 | ROM大臣 | 2021/10/05 14:50 |
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忌まわしい大量毒殺事件の起こった屋敷に隠れ棲む、生き残りの美人姉妹。好奇と嫌悪をこめて姉妹を白眼視する町の人々。財産目当てに屋敷に乗り込む青年。大好きな姉を迫害の手から守ろうと孤軍奮闘する主人公メリキャット。
本書はいわば、ひとつの屋敷とその住人が「魔のもの」と化してゆく過程を克明に綴った稀有なる物語であるのだが、陰惨な設定とは裏腹に、その語り口は不思議なほど晴朗で、それゆえにまた、背後にわだかまる狂気の底深さを実感させもする。 |
No.2 | 8点 | 八二一 | 2021/02/10 21:13 |
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読んでいて不安になる小説。幻想的で美しく、恐ろしい。人の悪意と狂気が渦巻いている。読んだ後には嫌な夢を見そうだ。 |
No.1 | 8点 | tider-tiger | 2016/03/20 12:54 |
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過去にブラックウッド家では忌まわしい毒殺事件が起こった。そのため、生き残ったメリキャット、伯父ジュリアン、姉コニーは未だに村人から忌み嫌われている。だが、メリキャットは病的な空想に彩られた狭い世界にコニーと一緒に居られればそれで幸せだった。ところが、美しくも病んだその狭い世界に従兄のチャールズが闖入、メリキャットのお城を変貌させようと試みる……
四十代半ばで亡くなった作家の最後の長編。とんでもないものを遺していった。傑作。 特に第七章は素晴らしい出来栄え。私はこの章が本作の最良かつ最狂の部分だと考える。この章は何度読み返したかわからない。 ~木曜日はあたしにとっていちばん強力な日。チャールズと決着をつけるにはふさわしい日だ。コンスタンスは朝、ディナー用のスパイスクッキーを焼くことにした。もったいない話だ。あたしたちのだれかが知っていたら、わざわざ焼くことはない、今日が最後の日になるのだからと教えてあげられたのに。~以上 第七章書き出し まあ一家の過去の事件に多少のミステリ要素はあるも、本作をミステリとして読むのは無理ですな。八点としておきます。 人によって物語の構図や印象について大きく異なる感想を持つと思われる。 結末にしてもハッピーエンドと捉える方もいれば、私のように身の毛もよだつバッドエンドだと感じる方もいるだろう。 この物語には狂気VS悪意、狂気VS善意の押し売りといった構造がある。 ややこしいのは悪意を持たれる側、善意を押しつけられる側が普通ではないところ。虐げられる善人の話などではもちろんないし、嫌な奴ばかりが出てくる話というのでもない。読んでいる側の立ち位置が揺らぐのだ。 作品内に渦巻く悪意に慄く人がいれば、狂気に圧倒される人もいるだろう。 解説(桜庭一樹)では狂気よりも悪意に重点が置かれていた。私の読み方とは異なるが、それでも彼女の下した結論には賛成せざるを得なかった。 すなわち、この作品は『すべての善人に読まれるべき、本の形をした怪物である』 対して当の作者は澄まし顔で「そんなたいそうなものじゃない。わたしはただ物語を書いただけよ」とでも言うのだろう。 ※シャーリィ・ジャクスン女史は短編『くじ』が猛烈な非難を浴びた時、「わたしはただ物語を書いただけ」と嘯いた。 ※シャーリィ・ジャクスンがどのような作家なのか、miniさんが『くじ』の書評において簡潔かつ的確に書かれているのでそちらを参照して下さいませ。 2016/10/29 以下を削除しました。 |