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[ 本格 ]
殺しのコスト
ヘンリー・スピアマン教授シリーズ
マーシャル・ジェボンズ 出版月: 1988年12月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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ハーベスト社
1988年12月

No.1 5点 nukkam 2025/10/06 15:54
(ネタバレなしです) マーシャル・ジェボンズは2人の米国人経済学者ウイリアム・ブレイト(1933-2011)とケネス・エルジンガ(生年不詳)の合同ペンネームで、マーシャルもジェボンズも実在した経済学者の名前を採ったものです。ハーバード大学の経済学部教授のヘンリー・スピアマンを探偵役にした本格派推理小説を全4作(最後の1作はブレイトの死後の2014年出版)発表しました。本書は1973年発表のシリーズ第1作です。スピアマン教授夫妻が休暇でヴァージン諸島のセント・ジョン島を訪れて事件に巻きこまれるという設定で、意外にも風景や衣装の描写に力を入れていてトラベル・ミステリー要素も濃厚です。とはいえスピアマン教授は人当たりはよさそうですが人々の「市場行動」を観察して楽しんだり、10章では愛を「相互依存的な効用関数」と定義づけしたりと学者意識の強さを隠せず、個人的にはちょっと離れていたいです(笑)。7章では早くもビンセント警部に「誰が犯人かを経済学理論を基に確信している」と宣言しています。本気にとらなかったのかビンセント警部はその場は犯人が誰かを聞いてくれませんが、後の推理説明場面で確かに謎解き伏線が既にあったことがわかります。経済用語が乱発されてはいますができるだけ読者に理解できるようにかなり気配りしており、それでも私には難解でしたけど経済学を推理に応用して謎解きする本格派としてユニークな作品です。なおハーベスト社版の巻末には「解説に代えて」と経済学者の長尾史郎(1941年生まれ)によるパスティーシュ短編が付いています。本書の事件の最中に「市当局が魚の売買を禁止して魚が買えなくて困っている」とスピアマン教授が相談を受けるという内容で、経済学的に分析していますが問題解決には乗り出さない(出せない)ところが学者らしい(失礼!)です(笑)。


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マーシャル・ジェボンズ
1988年12月
殺しのコスト
平均:5.00 / 書評数:1
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平均:5.00 / 書評数:1