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[ 本格 ]
殺人鬼登場
ロデリック・アレンシリーズ 別邦題『殺人者登場』
ナイオ・マーシュ 出版月: 1957年01月 平均: 5.67点 書評数: 3件

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六興・出版部
1957年01月

新潮社
1959年01月

グーテンベルク21
2020年06月

No.3 6点 人並由真 2020/04/26 02:43
(ネタバレなし)
 その年の6月14日。ロンドンのユニコーン座で上演される『鼠(ラット)と海狸(ビーヴァ)』の舞台。だがその本番中に、主演俳優のひとりが殺害される。正体不明の犯人は被害者を射殺すべく、舞台で使う小道具=空砲の拳銃に実弾を詰めておいたようだった。知己である新聞記者ナイゼル・バスゲートに誘われて、たまたまこの演劇を観にきていたロデリック・アレン(本書ではロドリック・アレイン表記)は、そのまま殺人事件の捜査に乗り出すが。

 たしかにnukkamさんのおっしゃるとおり、前作『アレン警部登場』より、人物描写は総じてこなれた感じがする。
 ただしその一方で、ミスディレクションにも小説の旨みにもならないとことんムダな登場人物が実に多い。さらに古い翻訳がよみにくい上に、個々の登場人物には大したキャラクターも与えられず薄っぺらい。そのせいか前半は、非常にかったるかった。

 とはいえ六興版の151ページめでアレン(アレイン)がギョッとするような行動をとってから少し話が弾み、山場の展開はそこそこ盛り上がった。ちなみに、油断していたこともあるけれど、犯人は結構スキを突かれた感じがあるし、終盤の探偵側のイジワルな知略なんかもけっこうお気に入り。

 この次のアレンシリーズの第三目が、秀作『病院殺人事件』(別冊宝石に訳載)なんだよな。まあ読んで面白かったのは大昔だから、改めて読んだら印象が変わる可能性もあるけれど(どうせなら、文庫とかでその『病院殺人事件』の新訳が出ないだろーか)。

 ちなみに今回は初訳版の六興キャンドル・ミステリーを書庫から引っ張り出してきて読んだけれど、この本は目次の周辺に22人分の人名が並んだ登場人物一覧を掲載。実際に自分でメモをとりながら読んだら、名前があるキャラだけで40人くらいいる。まあそれはとりあえずいいんだけど、問題は別のところ。
 この本にはサービスで、叢書特製の紙の短冊状の栞(しおり)が挟み込まれている。ところがその栞の裏に本文の目次の登場人物一覧をさらにコンデンスして、11人だけ名前を列記。その11人の中からアレン(アレイン)と部下の捜査陣、被害者がさっぴかれるわけだから、残りの主要人物の頭数が激減。つまり<真犯人であろう人物>も、ぐんと範囲をせばまれてしまう!(万が一、この中に犯人がいなければ、それはそれでアレな編集だしな~・笑。)
 大昔の編集さんって配慮が足りなかったんだねえ(まあ今の編集者たちも、問題があるときはあるけれど)。

 最後に、六興版の117ページで、アレン(アレイン)がソーンダイク博士のことを話題にしたりして(あくまでフィクション上の名探偵としてだろうけど)、ちょっとビックリ。特に、科学捜査とか倒叙ミステリの探偵とかいう文脈とかでもなく、本当にただ単に名探偵の代名詞的にポロッと出て来たので。
 いやまあ<ホームズのライバルたち>のなかでは筆頭クラスにメジャーな方なんだろうけど。
(というかソーンダイク博士の最後の長編って1942年だから、実はまだこの『殺人鬼登場』の1935年の時点では、余裕で現役なのか。なんかスゴイわ。もしかしたらマーシュはその意味で、面識や交流のある大先輩に忖度したのか?)

No.2 5点 斎藤警部 2017/10/25 21:38
物語は「意外な被害者」から発動! ここでグイッとつかまれたんだが、そこ以外は全般的に古式ゆかしくも軽~ぃ調子でぶっ通し、最後まで使命感(俺には、日本で埋もれたこの小説を掘り返す義務がある! 的な)も無く、ほんのわずかな倦怠を引き摺りながらもスタスタ読み終わってしまいましたよ、ってな感じで。詰まらなくはないですだよ。たしかに犯人設定は意外っちゃ意外なんだが、その暴露に行き着くまでの経緯ってか伏線なりレッドヘリングなりロジックってか何だか、あと最後に犯人に仕掛られけたトラップもね、グッと来ないんですよ、浅くて、ちっとも驚けないしミステリ的な感動もないんだもん。。まあその分ちょっとしたメロドラマ要素で当時の読者のご機嫌を伺ったってとこか。そうそう、ユーモアはやっぱり悪くないですよ! んだども現代日本のミステリ者に必読って事もなかろう、が、前述した「被害者の意外性」に限って言えば個人的に読んで良かったと思います。そいや「目つきに関する証言」だったか、あれはちょっとグッと来たな。私が読んだのは大叔父から譲り受けた旧ゥ~い新潮文庫(第二版、白帯紛失)なのですが、奥付を見ると初版からの間に結構な年月が経っており、当時(昭和三十年代)からあんまり日本人受けしてなかった事が偲ばれます。訳が旧過ぎるんでしょうが「シャネル第五号」ってのは笑いました。なんかマリリンとコント55号が時空を超えてコラボしてるみたいで。 「辻褄の合わない調子で鳴り止む電話のベル」ってのも妙に心に残った訳文。大久保康雄。

しつこいけど、この犯人設定、たとえば調子いい時のアガサだったら、大き過ぎて見えないくらいの豪快なツイストを噛ませて見事に最後まで目くらまし、いやポイントは単に真犯人に気付く/気付かないじゃなくて、如何に真犯人暴露に深みを見せるか、その結果として驚かせるか、そこんとこ上手くやって傑作に仕上げてたんじゃないかな、なんてねえ。まあ本作はジャンル的に軽本格で、そんな重い内容を求める事も無いんでしょう。ただ私の個人的好みにジャストフィットと行かないだけ。

No.1 6点 nukkam 2014/08/14 11:20
(ネタバレなしです) 1935年発表のアレンシリーズ第2作で、演劇の世界を背景にしているところは演劇プロデューサーとしても名高いこの作者ならではです。「安全なはずの小道具が凶器にすり替わっていた」事件を扱った本格派推理小説です。登場人物の心理描写が前作の「アレン警部登場」(1934年)から格段に進歩しており、アリバイと動機調査というオーソドックスかつ地味なプロットながら、だれることなく物語が進行します。最後はまさに「劇的な」犯人指摘場面が用意されています。ところで本筋とは関係ないのですが、「アレン警部登場」の犯人名を作中でばらしてしまっているのが非常に残念でした。


ナイオ・マーシュ
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