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[ 本格 ] 楽員に弔花を ロデリック・アレンシリーズ |
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ナイオ・マーシュ | 出版月: 2024年09月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 論創社 2024年09月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2024/11/29 13:39 |
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(ネタバレなし)
第二次世界大戦後(たぶん)のロンドン。元パリ大使館員で55歳の英国貴族パスターン・アンド・パゴット卿(ジョージ・セッティンカー)は、ヌーディスト活動やらヨガの修行やら、多方面に興味を示す奇人として有名だった。そんなパスターン卿がいま熱中しているのは、彼自身アマチュア(セミプロ?)のドラマーとして参加する楽団での活動だ。しかもその楽団のひとりでピアノ式アコーディオ奏者の伊達男カルロス・リベラは、パスターン卿の再婚相手である50歳の貴婦人「セシール」ことレディー・パスターン・アンド・パゴットの連れ子で18歳のフェリシテ・ド・スーズと恋仲のようだ。楽団のパトロンであるパスターン卿は組織の運営にも口を出し、楽団の指揮者兼バンドリーダーのブリッジ・ベアレスを悩ませていた。そんななか、劇場「メトロノーム」で開催された演奏会のさなか、余興の空砲として使われるはずだった拳銃の発砲音ののち、ひとりの人物が命を落とす。 1949年の英国作品。ロデリック・アレン主席警部ものの第15長編。 空砲とすり替えられていた実弾による殺人? という趣向みたいなので、なんだ、アレンものの長編第二作『殺人者(殺人鬼)登場』の部分的リメイクか? とも思ったが、さすがに今回はちょっとひねってある。あまり詳しいことは言わないけれど。 約360ページの本文はそこそこの厚さだが、おなじみ渕上氏の翻訳は快調で、そもそも今回はマーシュ作品のなかでも特に会話が多い印象なのでリーダビリティはかなり高い。ひと晩で読み終えてしまった。 十人前後の楽団周辺のメインキャラも、サイドストーリーの某重要人物も、証言を聞かれる使用人連中もそれぞれの劇中ポジションなりに書き分けられている。渕上先生は訳者あとがき&解説で、マーシュの弱点は英国ミステリにありがちな事情聴取、証言を聞き回るくだりの冗長さだが、今回は健闘しているという主旨のことを語っているようだが、その辺は同感。特に脇筋で描かれる正体不明の人生相談役「G・P・F」のストーリー上の運用がうまい。 ミスディレクションの鮮やかさも殺人トリックの創意も犯人の意外性もそれぞれそれなりのもので、佳作以上なのは間違いないが、じゃあこれが優秀作か? というと、トータルとしては(前述のようにキャラ描写の起伏による健闘は十分に認めるものの)中盤の証言聞き取りパートの間延びぶりからは逃れられなかった印象もある。 たとえばクリスティーとかなら同じような話を書いた場合、後半にもう一回くらい、大きな事件を起こして話に刺激を与えるんじゃないかな、とも思った。 それなりの力作で手をかけた作品なのは理解するが、全体の面白さを尺度にするなら、さらにもうひとつくらい何か欲しかったところ。うん、贅沢言ってるな(汗&笑)。でもマーシュの諸作のなかでは面白い方ではあるだろう。実質、6.6点くらい? |