皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] 死の序曲 ロデリック・アレンシリーズ |
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ナイオ・マーシュ | 出版月: 1959年03月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1959年03月 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | 2021/06/26 15:50 |
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(ネタバレなし)
第一次大戦後の、英国の片田舎ベン・クックウ。地主ジョスリン・ジャーニガムは、できれば自分の23歳の息子ヘンリを、彼よりずっと年上(40代後半)のオールドミスで資産家のアイドリス・キャンパヌウラと婚姻させようと思っていた。だが当のヘンリは、中年の貧乏牧師ウォルタ・コープランドの娘で19歳の美少女ダイナアと恋人同士だ。さらにアイドリス、そして彼女の友人かつジョスリンの従妹で48歳のエリイナ・プレンティスは、ハンサムな男やもめのコープランド牧師をめぐる恋仇でもあった。彼ら6人に土地の医師ビリイ・テンプレット、そしてその不倫相手の未亡人シイリア・ロスを加えた8名は村の教会のホールでアマチュア演劇を行おうとするが、やがて予想外の殺人が発生する。 1939年の英国作品。ロデリック・アレン首席警部シリーズの第8長編。 主要キャラはそんなに多くないが、とにかくカントリーものの定型のなかで大小の役どころの登場人物が丁寧に描きこまれる。翻訳もいいのであろうが、なんにせよまったく退屈しないで、一晩で読み終えた。地方ミステリ小説としての面白さは、P・D・ジェイムズかレンデルあたりの出来のいいときの食感にかなり近い。 中盤でちょっと凝った状況、殺人方法による人殺し事件が起きるが、そこに行くまでも特にかったるさは覚えない(個人的な感想かもしれないが)。惨劇の発生後は、さらにテンションが高まる。 事件発生後に、おなじみアレン警部(首席警部)が部下を連れてロンドンから来訪。 この直後に、(たぶん)容疑者をふくむ主要登場人物の内面を作者が神の視点での客観的描写で覗いてまわるという、英国ミステリの大家の何人かがやっているような外連味も導入。ここらのゾクゾク感はたまらない。終盤にはアレンが、ロンドンにいる恋人でレギュラーヒロインの美人画家アガサ・トロイへの手紙を書いて事件&関係者の情報を整理。名探偵はかなりのことがわかっているハズだが、その手紙の中身はかなりデリケート(もちろんここではまだ真相は明かされない)で、作者の不敵な趣向にもういちどワクワクする。 ……とまあ、こう書いていけば謎解きフーダニットの剛球パズラーとしてかなりの秀作、面白そう、なのだが、最後の真相&真犯人がなあ……。(中略)もなにもない(中略)な出来で。作者マーシュはどんな思いでこれを書いた、あるいはこの結末でよし、と思ったのだろ。次から自分の作品をつまらながって読者が減るとか、危機感を覚えなかったのかしら。だとしたらかなり天然だね。 気になって、読了後に近くにあった「世界ミステリ作家事典・本格派編」のマーシュの項を読んでみたら……そうでしょう、そうでしょう。まったく同感。 まあ最後の最後で腰砕けの感が強い一作だけど、それでもクライマックスまでは十分に楽しめた。そんなに悪い印象もない。評点はこんなところで。 ※ポケミスの100ページ目で、事件関係者がなにげなくホームズの名を口にした際に「わたしの面前では誰にもホームズを馬鹿にはさせません」と先輩名探偵への敬意を語るアレンが凛々しい(あくまで作中でもフィクション上の人物として、接しているのだろうが)。いいキャラクターだよね。 |
No.1 | 6点 | nukkam | 2015/07/12 07:29 |
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(ネタバレなしです) 1939年発表のアレン警部シリーズ第8作である本書はそれほど高い評価は得ていないようですが、容疑者数を絞り込んでコンパクトにまとまっており、代表作とされる「ランプリイ家の殺人」(1940年)よりも個人的には気に入っています。27章から構成されていますが、「唐草模様」というタイトルの入った第7、12、25章での容疑者たちのやり取りやモノローグがなかなか面白く、この中の誰が犯人だろうという読者の興味をさらに刺激しています。 |