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名探偵登場 4 早川書房編集部 プリーストレイ博士、アルバート・キャンピオン、スザン・デア、サム・スペード、ヨンケル氏、ポジオリ教授、エラリー・クイーン、メグレ、ミス・マープル、アボット夫妻 |
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アンソロジー(国内編集者) | 出版月: 1956年06月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1956年06月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2024/02/07 11:49 |
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創元の「世界短編傑作集」への早川ポケミスでの対抗馬が「名探偵登場」。「名探偵登場」が1956~1963に刊行で、創元の1960~1961より少し先んじているが、創元は「世界推理小説全集」版(1957~1959)がベースなので、本当にライバル的な関係と言っていいだろう。で、こっちは作者ベースではなく名探偵ベースでの全6巻。だから名探偵の出ない「密室の行者」とか「オッタモール氏の手」が収録できないが、代わりにクリスティはポアロとマープル、ハメットはオプとスペードで2作収録がある。
とはいえ乱歩選の創元の方がずっと定着していて、ポケミス「名探偵登場」の方がマイナーという印象。さらに作品も創元とカブりがちだし、他の短編集で読める作品が多いこともあって、「お買い損」なアンソロ....でも「名探偵登場6」だと創元が手薄な軽ハードボイルド系の作品が多いとか、そういう特色もある。 とくにこの「名探偵登場4」はというと、カブリの多い巻になる。評者も5/10が既に書評済。それでも再読に耐える作品が収録されているからまだいいや。 ・ジョン・ロード「逃げる弾丸」 他に収録ががないレア作。まあ最近でこそロードは紹介されているが...「アイデア勝負作家」と言われるけど、まあそういう短編。 ・アリンガム「ボーダー・ライン事件」 創元3(新5)で読む人が多いだろう。評者も好きなモダン・ディティクティヴな名作。 ・ミニオン・エバハート「スザン・デア紹介」 レア作。いわゆる「もしも知ってさえいたら(HIBK)派」。まあでもこれ、今でいえばロマサス。女性主人公の主観描写てんこ盛りで、昔だからのんびりしている。いかに今のロマサスが進化しているか、って思っちゃう。 ・ハメット「スペードという男」 創元なら「ハメット短編集」か創元4.3本しかないサム・スペード登場短編の一つ。評者にとってハメットとはオプ物短編。スペード短編は大した出来とは思ってない。 ・ポースト「大暗号」 創元だと「暗号ミステリ傑作選」に収録あり。アブナー伯父ではなく、パリ警視庁のヨンケル長官物。暗号物だけど一種のバカミス的味わい。 ・ストリブリング「チン・リーの復活」 河出の「ポジオリ教授の冒険」に収録。大名作揃いの「カリブ諸島の手がかり」に続く時期のものだけど、軽めの仕上がり。これもバカミス的なとぼけた味わい。 ・クイーン「チークの巻煙草容器」 「クイーンの冒険」収録。お得意の「手がかりの欠如」ネタで、まとまった「らしい」作品。 ・シムノン「メグレの煙管」 講談社「メグレ警視のクリスマス」収録。規模的には中編で、メグレ物短編をアンソロで何を選ぶ?と聞かれたら、普通に挙がる作品だと思うよ。読み応えあり。でもこれ日影丈吉訳で、そういう愉しみもあるなあ(リュカがみょうに下世話w) ・クリスティ「管理人と花嫁」 創元だと短編全集3、ハヤカワなら「愛の探偵たち」に収録。評者大好き後年の某名作の元ネタ。あれは「名探偵小説」じゃないからいいんだけども、元ネタはミス・マープルがアームチェアするパズラー。 ・フランシス・クレイン「青い帽子」 レア作。夫婦探偵としてたまに言及されるアボット夫妻物。いやこれカントリー風の味わいのある洒落た行動派ミステリで、キャラ描写もしっかりしていて面白い。日本人にはピンとはこない、アメリカ人の「偏見!」かもしれないものだが「へ~~」という笑える面白味があるオチ。未読作だと一番良かった。 このアンソロの選考基準に、ユーモア感みたいなものを感じたりする。意外。 ちょっと気になったのは、「シメノン」「エラリー・クイーン」表記。ハヤカワなら「シムノン」「エラリイ・クイーン」だと思うんだがなあ。社内で統一しないのかな。 |