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二冊の同じ本 最新ミステリー選集1 <愛憎編> |
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アンソロジー(国内編集者) | 出版月: 2018年07月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
No.1 | 8点 | 斎藤警部 | 2019/04/24 23:40 |
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日本推理作家協会編。同理事長なりし松本清張氏が名実ともにシーンのリーダーらしい気合い溢れる「まえがき」を執筆。シリーズ名に「最新」とありますが、昭和四十年代の事。ミステリとしても小説としても高水準の一冊 by カッパ・ノベルス。
「二冊の同じ本」 松本清張 8点 ぎりぎり日常の謎、の体で何処まで引っ張るのか。。。と思えば! ラストの締め付けられるよな痛みはやはりこの人らしい。 「永臨侍郎橋」 陳舜臣 8点 最後の手紙に”行き違い”の趣向は好きだ。その手紙の中で明かされる更なる深いナニもまた良し。ストーリーの紆余曲折を随分と押し込んだもんだが、まず能く発酵したと言えよう。しかし、アリバイ材料に漢詩の朗読とはな! 「『わたくし』は犯人」 海渡英祐 8点 ん〜〜ん、ぉフレンチ! 現代日本の感覚では反転真相のエグ味にもう一刺し欲しい人も多かろうが、これはこれで雰囲気押し切り勝ちなんじゃあないですか。 「醜聞」 結城昌治 7点 ミステリ視点の意外性はかなぐり捨てたかの様だが、、心に残る冤罪サスペンス。 「青い蝶・赤い猫」 佐野洋 5点 初読時(かなり前)と変わらぬ”洋ちゃん、これちゃんと詰めてないだろ”感が芬々。ハイレベルな本選集の中でボコンと一段落ちる。もっとイイのを入れて欲しかったねえ、洋ちゃん。 「詩集を買う女」 多岐川恭 7点 またもおフレンチ。もう幾何かの残酷さがあったら連城の域。締めの台詞がいい。 「酒場の扉」 戸板康二 6点 手垢の付いたオチ、かと思うとショートショート流儀の駄目押しツイスト、で片付けてしまうにはちょっとばかし深い人間ドラマ。 「眠れる美女」 永井路子 8点 地味に展開し最後は派手に化ける歴史政治経済ミステリ。或る意味 ●●術殺人事件に通ずるトリックかも知れない。 「ロカビリアン殺人事件」 大谷羊太郎 8点 青木ってリトル・リチャード系シンガーだったんだ! いいぞ、パンチのきいたゴーゴーリズム! 社会考察的さり気ない伏線の決まり具合、お見事! (作者自身が属していた)芸能界ならではの動機推察機微、とそこからの推理派生には唸った! 処女非処女って、何をそこまでこだわるの。。と思ったら、そういうことだったのね。。。。青木の生活描写がも少しあれば、もっと好きだ。 「ガラスの棺」 渡辺淳一 10点 やっべーー、そうこなくちゃ! これぞ”イヤ奇妙な味”の完璧形! 医師をいい奴に描いてるのが神髄ではないですかね、この作者独特のフェミニンな味の。 「蝶の牙」 島田一男 8点 先生の曲者スペクトラム具合がよく現れてる。ひょっとして’ツソ〒”しう●●’が本作のインスパイア元か。。” 老いてなお”系のエロシーンはどうも好きになれんが。 「双頭の蛇」 黒岩重吾 8点 よく考えたら何の捻りもない哀しき阿呆共の顛末なんだが、その文筆の熱量にやられた。ミステリの意外性は更に希薄。それで構わん。ストイックに過ぎるラストは、主人公の零落する未来を暗示するものか。。 わざわざ<愛憎編>と銘打っただけあり、結末で明かされる意外にエグい心理要素にグッと来る作品多し。その手の昭和作品(四十年代モノ)がしっくり来る方にお薦めします。 |