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世界短編傑作集3
江戸川乱歩編
アンソロジー(国内編集者) 出版月: 1960年12月 平均: 7.00点 書評数: 8件

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東京創元社
1960年12月

No.8 7点 クリスティ再読 2023/02/13 11:53
3巻目は1925~29年の作品。一応長編黄金期に入るのだけども、短編はホームズ様式(というかソーンダイク博士風?)がまだ盛ん。2巻で顕著な科学トリック傾向も「キプロスの蜂」や「茶の葉」に覗われるが、バカトリック風の「密室の行者」「イギリス製濾過機」も登場...とこれをやや拡散傾向、と捉えるがいいんじゃなかろうか。

そうすると、ホームズ形式のクセに実話のリアリティを備えた「堕天使の冒険」に注目した方がいいし、あるいは名探偵をパロった皮肉な話の「完全犯罪」にそろそろ「名探偵小説」を相対化する視点が芽生えてきていると思うんだ。その相対化の総仕上げが実のところ「偶然の審判」を長編化した「毒チョコ」だった、というのはいかかなものだろう?

あ、作品的には「ボーダー・ライン事件」がモダン・ディテクティヴな佳作。「二壜のソース」が形式的には意外なくらいに「名探偵小説」なんだけども、ワトソンの妙が光って「名探偵小説」から逸走。こんな芸がすばらしい。

No.7 7点 蟷螂の斧 2016/11/30 21:53
「キプロスの蜂」アントニー・ウイン~(7点)車中で女性が死亡。猛毒のハチに刺されたあとが見つかる。発表は1925年で、当時ではかなりショックのあるトリックであったと思う。
「堕天使の冒険」パーシヴァル・ワイルド~(6点)あるクラブ。ブリッジで勝ちすぎるメンバーに疑惑を抱いた主人公。彼はいんちきを暴くが逆襲にあってしまう。実話に基づくものらしい。トリックよりストーリーが楽しめた。
「茶の葉」エドガー・ジェプスン& ロバート・ユーステス~(7点)トルコ風呂で男の刺殺体が発見された。直前、一人の男が風呂から上がり、他には誰もいなかった。そして兇器も発見されず。本作が有名なトリックの元ネタだったとは・・・。
「偶然の審判」アントニイ・バークリー~(9点)Aにチョコレートの試作品が届く。偶然居合わせたBは不要であれば欲しいという。Bは妻Cと賭けをして負けたのでチョコレートをプレゼントすることになっていた。「毒入りチョコレート」の元ネタ。登場人物が少ないのにどんでん返しがある。単純で素晴らしい。長編「毒入りチョコレート」は多重解決がメインとなり、本トリックがかすんでしまっている印象。長編は、多重解決(どうでもいい推論)アレルギーに陥った作品(苦笑)。
「密室の行者」ロナルド・ノックス~(8点)修行者が密室(体育館)の中のベッドの上で餓死。周りには食料があったのに。後発の小説で本作の名はよく目にしていたが、内容は知らなかった。ビックリ仰天。
「イギリス製濾過器」C・E・ベチョファー・ロバーツ~(4点)教授が密室(窓は開いている)で濾過器に入った毒で死亡。これがトリック?というレベル。
「ボーダー・ライン事件」マージェリー・アリンガム~(5点)チンピラが射殺される。死体の左右には夜警がいた。よって犯人は逃走できない。犯人は近くのカフェにいたが、そこからは射殺することはできない。どちらかというと脱力系。
「二壜のソース」ロード・ダンセイニ~(7点)男と一緒にいた少女が行方不明になった。男は家から外出することもなく、毎日薪をつくっているだけ。ダール氏(後発)の作品集を先に読んでいるため、「奇妙な味」に免疫ができてしまっている。よって驚きがなかったことが残念。
「夜鶯荘」アガサ・クリスティー~(6点)アクリスはディックに好意、しかしジェラルドと結婚。彼女は夢でディックがジェラルドを殺す夢を見る。著者らしいサスペンス。
「完全犯罪」ベン・レイ・レドマン~(6点)完全探偵(すべての犯罪を暴ける)と自称するが、実は最近の事件で犯人を誤って逮捕してしまったか?。屁理屈?論理的?なところが面白い。

No.6 7点 ミステリーオタク 2015/10/23 20:47
皆さんがいうとおり「密室の行者」が一番笑えたぜ
次がやはり「二壜のソース」かな
奇妙な味とはよく言ったもんだぜ

No.5 7点 斎藤警部 2015/09/10 09:41
「毒チョコ」に萌え切れない私も「偶然の審判」では大萌えです。本作だけなら10点満点もいいとこ。
他にも「茶の葉」「密室の行者」「二壜のソース」等々、輪郭のくっきりした勝負作が目白押し。粒揃い(やや大きめ)のアンソロジーですね。

No.4 6点 名探偵ジャパン 2014/08/28 10:13
密室ものの傑作と名高い「密室の行者」目当てで購入。
当該作は、珍トリック(こういうのをバカミスと言うの?)を駆使した傑作で、未だに語り継がれるだけのことはあると思った。
他の作品は、話には聞いていたが実作を読むのは初めてといったトリックのもの、すぐにトリックが分かってしまうものもあるが、歴史的価値として貴重な作品集。こういったものが絶版を免れ今でも書店で買えるというのは素晴らしいことだ。
「密室の行者」以外では、「二壜のソース」がよかった。
再三繰り返される「このソースは肉料理にしか合わない」という台詞。犯人が木を切っていた理由。そして最後の一行。どれも奮ってる。言うことなし。

No.3 6点 ボナンザ 2014/04/09 15:19
1,2に比べると時代が流れ中々こったものが出てくるようになったのがわかる。

No.2 7点 kanamori 2011/01/01 17:47
海外古典短編ミステリ・アンソロジーの第3巻。
収録作は、1920年代の後半いわゆる”黄金時代”の幕開けの時期の作品群で、先にこうさんが書かれているように、叢書の中で一番の名作ぞろいです。
有名なところでは、バークリー”毒チョコ”の原型「偶然の審判」、ダンセイニ”奇妙な味”の代名詞「二壜のソース」、アリンガム「ボーダー・ライン事件」、クリスティの傑作サスペンス「夜鶯荘」など。
しかし、個人的ベストは、なんといってもおバカなトリックのノックス「密室の行者」ですけども。

No.1 9点 こう 2009/01/03 02:04
 世界短編傑作集5冊の中では一番有名作が集まっていて出来が良いのでは、と思います。
 所謂古典短編集なのでトリックだけは既に知っているものが多いと思いますし一種「推理クイズ」様なものも多いですが、そのオリジナルに触れるというだけでも価値があるかな、と思います。
 バークリーの「毒入りチョコレート事件」の元ネタである「偶然の審判」も収録されています。「毒入りチョコレート事件」を読む前に一読されることをお薦めします。逆だと全く面白くないでしょう。
 作品もしくはトリックが有名なのは(だと思うのは)「キプロスの蜂」、「茶の葉」、「密室の行者」、「二壜のソース」、「ボーダーライン事件」といった所でしょうか。
 クリスティの「夜鶯荘」もシリーズ物ではないですがサスペンスとしてまあまあです。個人的にはウイリアムカッツの「恐怖の誕生パーティ」はこれを元ネタにしているのではないか、と思っています。
 恐らく大多数の方はほとんどの作品、トリックが「読んだことある」感じがすると思いますが、オリジナルに触れる価値は十分にあると思います。


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