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ヤオと七つの時空の謎 芦辺拓・編著 |
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アンソロジー(国内編集者) | 出版月: 2019年10月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
南雲堂 2019年10月 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | 2020/03/07 05:24 |
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(ネタバレなし)
本好きで剣道の心得がある女子高校生・ヤオが、ある日、世界の崩壊に遭遇。謎の声の主との接触を経たのち、日本のさまざまな過去の時代にある目的のたびに飛ばされる……という導入部を、本書の編著者の立場の芦辺拓がまず担当(執筆)。 続いて、獅子宮敏彦、山田彩人、秋梨惟喬、高井忍、安萬純一、柄刀一の6人が、各時代でのヤオが遭遇、あるいはに連する事件や騒乱を語り、最後にエピローグをまた芦辺がまとめる、オムニバス形式? の連作ミステリアンソロジー。特に書下ろしとは謳ってないが、雑誌初出データの記載がないから、たぶんそうなのであろう? なかなか面白そうな趣向で、さらにこの題名ゆえに、評者は当初、ヤオ本人または彼女が出会った歴史上の有名な人物たちがそれぞれの時代の不可思議な事件で探偵役となる、シオドー・マシスンの『名探偵群像』の変種みたいな内容の連作アンソロジーを予期した。 そうしたら、期待を下回って正統派の謎解きミステリは少なく、かなり拍子抜けした。日本史に強いというか、一定の見識がある人なら楽しめそうな作品もいくつかあるようだが、残念ながら評者はその対象ではない。 個人的には高井忍の『天狗火起請』(江戸時代の吉原周辺が舞台。密室殺人が生じて、意外な凶器とハウダニットがフーダニットに繋がる)みたいなので大半が埋まるかと楽しみにしていたのだが、そういうマトモなパズラーはこの一つだけであった。他の作家はみな、フツーのミステリというより、ヤオが向かった先の歴史についての側面の方に話作りの興味を傾注した感が強い(まあその上で、広義のミステリ味が皆無というわけでは決してないのだが……)。 あと、中にはほとんどヤオをチラリと見せるだけで本筋にからまないような作品も一、二あったり……。 ちなみに主人公であるヤオそのもののキャラクターは、作家によってかなり印象が異なるのだが、これ自体はこういう趣向の本なのだから、まあよしとは思っている。あ、元ネタはもしかして2019年の深夜アニメ版『江古田ちゃん』か?(笑) なお最後のエピローグは芦辺先生、キレイに決めたつもりであろうが、筆に勢いがなくもうひとつ効果が上がらなかった印象なのも残念。 もっと面白くなりそうな趣向の一冊ではあったんだけどな。読むこっちも(日本史に詳しくないという意味で)よくなかったか。 |