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死者は語らず 「宝石」傑作選集Ⅰ 本格推理編
中島河太郎 編
アンソロジー(国内編集者) 出版月: 不明 平均: 7.00点 書評数: 1件

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No.1 7点 斎藤警部 2024/03/20 16:17
五つの時計■■鮎川哲也   
「大切なお客さんが待っているんだし旨い酒があるし、それに可愛い奥さんもいるからな。十分ばかり邪魔をして帰ってきた。」 
本格推理不滅の象徴。 完璧の化身。 滋味の麹壺。 いい酒、いい音楽、いいニシンの燻製。 文章の節々に覇気と余裕と緻密な配置。 スリルもサスペンスもスロースターターと見せつ、直ぐ点火。 母娘の情愛に絆される場面など有。 堅牢なロジックと涙が出る程の味わいが不可分に結託し、同席で流しそうめんを啜っているよう。 “甘い疑念”潰しも抜かりなく伴走。 何気にエロい実践の説得力たるや。 しかもその持続の妙たるや。
「いや、それとこれとはある程度関連性もありますが、本来別のものなんです。しかしどうにかアリバイを崩すこともできました。」
アリバイ偽装と暴露の極意を『ナんとカ講義』ナんテ大掛かりな光り物でなく、さり気なくも深い耀きの地の文で披歴。 警察内部の犯罪オン犯罪という構造だが、社会派など眼中の大外刈りで颯爽と。 しかし本作の鬼貫は本当に、腹の底から良いな。 君の魅力に、俺もアタイも落ちそうになったぜ。。 更にはラスボス?蕎麦屋のギラつく魅惑の坩堝よ! 締めも言うこと無し! いっそ全文暗誦したい。  10点

風の便り■■竹村直伸  
幻想か、怪奇か、愛なのか。 届く筈のない、精神を病んで入院中の父親から娘への優しい手紙。 その背景には、タイミングの妙が何とももどかしい謎めいた毒死事件。 巨大過ぎる切なさへの、吹雪さえ呑み込む切実な予感。 物語の芯らしきものが罪悪の峡谷へと沁み渡り、うなりを上げる。  ノンキだと・・!?  何故そこで、それを我が子に託す?!  超自然と論駁推理とを結ぶ焦点の在り処には果たして何が。。。  真相はミステリとして特に目新しいものでもないが、そこへ至る道筋のまぁスリリングなこと! 「ハナミズキ」 のエンドレスリピートをバックに読みたくなるのは前半まで。後半はがらっと顔色が変わる。  7点

泥まみれ■■島田一男 
家出癖のある、二十も歳の離れた弟が、遠方にて、遠い親戚筋の女と心中を図り、死亡。 因縁蟠る中で兄は或る復讐を心に誓う。 自然と抒情豊かな物語背景に、島一節のちょぃと熱い所が炸裂。 凄まじさと癒しの行き交うエンディングにはどことなく風太郎風の味わいが。  7点

E・Pマシン■■佐野洋
この真犯人/真相意外性は結構なパワー持ってるよ。 アパートでのガス中毒死に続いた予告殺人。 SFチックな犯罪解決ロボット顛末のオチには流石の左翼魂。 ところで真相暴露のヒントなった或るワードの特性、現在ではちょっと微妙ですかね。。  7点強

吸血鬼考■■渡辺啓介
こんな洒落た羊頭狗肉は許せる。 英国カントリーサイドの大邸宅を舞台に、ちょっとした歴史ロマンと現在の淡い恋愛模様、そして秘めた友情物語が交錯。 ゲーム風展開に及ぶシーンも好き。  6点
 
臨時停留所■■戸板康二
標題が誘う軽いミステリ興味は、ミステリと言うより文学的反転へと帰着。 仄かな旅情を含みつつ、激しい部分もありながらやさしいオチで幕を引く、田舎の人情小品。  6点

消えた家■■日影丈吉
戦中台湾怪奇譚。 軽い数学パズルに絞められる話。 油の軽いフレンチフライ。  5点

おたね■■仁木悦子
「二十二年です」 “日ごろから数えてでもいるのか、おたねはすぐ答えた。” 
これぞ勝利の歌。。。 とも言い切れない物語の襞の深さや佳し。 人を泣かせるのに機械的物理トリックも使いよう。。 と思えばそこには心理のダメ押しが! こりゃ唸った。。 偶然再会した昔の使用人の重い告白を聞く。  8点

毛唐の死■■佃実夫
旧い事件を歴史学者の様に解き明かさんとする図書館司書。事件の被害者は徳島県在住の著名なポルトガル人。 調査の過程はひたすらに地味だが、解決篇となる最後の酒のシーンでは感動押し寄せる忘れ難き一篇。  7点

付録「宝石」の歴史■■中島河太郎
同誌の飛躍と艱難、光と影の道筋を、具体的作者・作品名やエピソードを愉しく散りばめ綿々と証言。 往時の空気が良く漂う。 嗚呼「抜討座談会」。。  8点弱


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