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バカミスじゃない!?
アンソロジー(国内編集者) 出版月: 2007年06月 平均: 3.50点 書評数: 2件

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宝島社
2007年06月

No.2 4点 測量ボ-イ 2019/10/19 10:55
バカミスの定義っていったい何なんでしょうね。
人の主観により、解釈はだいぶ異なりそう。
そんなことを考えさせられる一冊。

No.1 3点 名探偵ジャパン 2018/03/19 23:01
『バカミスの世界 史上空前のミステリガイド』でおなじみの小山正が編んだ「バカミス・アンソロジー」とは言っても、既作品からチョイスしているわけではなく、各作家に「バカミス」をテーマに書き下ろしてもらった作品を収録しています(山口雅也作品のみ再録)。ベテラン辻間先をはじめ、鳥飼否宇、霞流一といったミステリファンおなじみの名前から無名の新人まで、バラエティに富んだ顔ぶれ。実に豪華なアンソロジーです。
と、そこまでは良かったのですが、この「テーマ(バカミス)を伝えて書き下ろしてもらう」という行為が完全に裏目に出てしまった感は否めません。依頼を受けた作家たちのほとんどは、「えっ? これがバカミス? いや、まっとうなユーモアミステリとして読めるじゃん!」という評価をもらうことを期待して書いた感がありありです。こんなスケベ心丸出しのミステリは「バカミス」とは呼べません。というよりも、収録されたほとんどの作品が「ミステリ」ですらありません。好意的に捉えて「広義の意味でのミステリ」ではあるのでしょうが、私は「バカミス」はバカミスである前に、れっきとした「本格ミステリ」であるべきと考えています。「ロジックが根幹を支えている知的な本格ミステリ」で「バカ」なことをやる(やってしまう)から面白いのです。ロジックも何もない、ただのドタバタで「バカ」をやっても、それは「ただのバカ」です。

私の個人的な見解ですが、全9作品のうち、「本格ミステリ」と呼べるものは、山口雅也と霞流一のものだけ。うち、「バカミス」といってよいものは霞流一だけという、大惨事に終わってしまっています。
どうしてこうなってしまったのでしょう。思うに、依頼された作家たちのほとんどは、先に書いた「スケベ心」が鎌首をもたげたとともに、バカミスのことを「バカなミステリ」だと勘違いしてしまったのではないでしょうか。逆。バカミスとは上にも書いたように「ミステリがバカ」なのです。「バカなものを書けばいいんだろう」と、とにかく変なものや笑わせるものを書けば、それが「バカミス」として通用する。そんな軽い気持ちではバカミスは書けません。本気で本格ミステリに取り組んだ結果、作者の意図とは別に完成作がバカミス化してしまった。もしくは、本気でバカミスを書くために大変な労力を使った。バカミスとは、そういった情熱がなければ書けない(書いてしまえない)ものです。

ただ、ひと言言っておきたいのは、編者の小山正はバカミスを愛し、〈序文〉を読んでもバカミスに対する造詣が深いことが分かる、真のバカミス信奉者です。私の勝手な妄想ですが、編者の小山は依頼した各作家から上がってきた原稿を読むたびに、「あちゃー」と頭を抱えたのではないでしょうか。「違う。俺の、世のバカミスファンが求めているのはこれじゃないんだ」と。ですが、まさか「違う。書き直せ」などと言えるはずもありません。企画は動き出している。もうこのまま突っ走るしかない。小山は内心、忸怩たるものを抱えながら編集作業を行ったのでしょう(あくまで私の個人的な見解です)。

本書の刊行は2007年。本作の存在を知ったとき私は、「こんなブツを十年も見逃していたのか!」と地団駄を踏む思いでした。それだけに、読み終えた今のこの空虚さといったら……。十年間、書評が書かれていない(どころか登録すらされていなかった)こともむべなるかなです。とても心揺さぶられる企画だっただけに、大変残念でなりません。今こそ、まっとうな、バカミス好きの、バカミス好きによる、バカミス好きのためのバカミスアンソロジーの登場を強く望みます。


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