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謎物語 あるいは物語の謎 北村薫 |
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評論・エッセイ | 出版月: 1996年05月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
中央公論社 1996年05月 |
中央公論新社 1999年05月 |
No.1 | 7点 | Tetchy | 2018/06/03 21:36 |
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稀代の読書家でもあるミステリ作家北村薫氏。彼は“日常の謎”系ミステリの開拓者でありながらも実は生粋の本格ミステリ原理主義者、つまりガチガチの本格ミステリ傾倒者であった。
そんな彼が語る“謎”についてのエッセイ。ミステリにおけるトリックから始まり、やがて物語自体が孕む謎について論は進んでいく。 読み進むうちに北村氏がかなり本格ミステリの格の部分に傾倒していることが解ってくる。 曰く、トリックが驚天動地のものならば小説としての結構はどうでもいいではないか。 曰く、トリックが思いついたら書きたくなるのが人情ではないか。 曰く、人の死なないミステリ、特に日常性の中の謎、などといったタイプの作品に出会うとうんざりする。 ん?最後の文章は本当に書かれているのである。本格ミステリの地平に“日常の謎”系ミステリという新たな地平を築いた本人が。もう飽きたとまで云っているのである。 また北村氏がかなりの読書家であることも本書から伺える。古今東西のミステリ、それもほとんどマニアしか読まなかったであろうミステリはもとより、作曲家の服部公一氏のエッセイからも紹介されているのには驚いた。どれだけ守備範囲の広い人なのかと。 読書とはやはり自分の世界を広げる、実に楽しい行為であることを確認できるのが本書である。そして人によって新たな解釈が生まれ、それが新たな物語を生み、そして書かれ、更にそれを読んだ読者によってそれが連綿と受け継がれていく。読書の海は、いや宇宙はどんどん広がっていくのである。そしてそれは読む量が多いほど解釈する種が増え、思考は広がっていく。 謎物語、つまり謎を持つ物語を読むことで読者は思考し、解釈する。そしてそれは物語自体の謎へとベクトルが向き、物語の本質へと突き進んでいく。 ああ、また明日も本を読もう。そして物語の謎に浸ろう。そんな気持ちにさせてくれるエッセイだった。 |