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日本推理小説論争史
郷原宏
評論・エッセイ 出版月: 2013年10月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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双葉社
2013年10月

No.1 6点 kanamori 2014/02/01 23:53
本書は、2011年〜12年にかけて「小説推理」に連載されていた推理文壇における過去の文学論争史を逆編年体(新しい順)に編成し考察したもので、著者は郷原宏氏。
佐野洋×都筑道夫の「名探偵論争」、乱歩、甲賀三郎×木々高太郎の「探偵小説芸術論争」、松本清張×高木彬光の「邪馬台国論争」などの有名どころが並んでいるが、野次馬的な見地で面白かったのは、やはり「匿名座談会論争」ということになる。

「間違いだらけの笠井潔」と題した”このミス”匿名座談会メンバーによるヨタ話が地雷を踏む結果となる。都筑道夫の評論に対する笠井氏との解釈論争から、「匿名による批評の是非」の方に論点が移ってしまい、覆面を剥がす泥試合になった。
匿名B(茶木)、S(関口)、O(大森)は自ら名乗り出たものの、A(新保?)とD(西上?)の対応が益々笠井氏の逆鱗に触れる。お互いに大人げないのだけれど、背景には”新本格派(探偵小説研究会)”VS匿名座談会メンバーの確執があったらしい。さらに勘ぐれば「本ミス」VS「このミス」ということかもしれないが。
高木彬光の「邪馬台国の秘密」を巡る論争も興味深い。発端は佐野洋の「推理日記」における事実誤認の指摘で、それは何とか改稿で問題が収まるかと思いきや、古代史は専門と自負する松本清張が参入し、”学説無断借用”の疑惑も出てきて雲行きが怪しくなる。”本格派の総師と社会派の巨匠の一騎打ち”は大袈裟だが、奇抜なロジック(詭弁?)で窮地を脱しようとする高木、地道に資料を揃え追い詰める清張という、自身の小説作法さながらwの対決は読みごたえがあった。(さらに、他人の学説の無断借用疑惑があり、どうみても高木に歩はないのだけど)。
著者は、最近このような論戦が見られないと嘆いているが、数年前の「容疑者Xの献身」を巡る”本格”論争について詳しく取り上げていないのは残念だった。


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