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乱歩と東京
松山巌著
評論・エッセイ 出版月: 1984年12月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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Parco出版
1984年12月

筑摩書房
1994年07月

No.1 7点 クリスティ再読 2019/01/01 22:56
さて新春は乱歩三連発としよう。二番手は1985年度協会賞評論部門も獲った、乱歩をモダン都市論の中で論じた名著である。バブルのトバ口にかかった1985年というこの時代でなければ書かれなかった評論、という印象を評者は強く持っている。出版も西武カルチャーを担ったPARCO出版、「超芸術トマソン」「建築探偵」といった流れの中で、自分たちが暮らす都市を一つのテキストとして捉え、もう一度別な視点で眺めよう、という知的流行のさなかで本書が出たわけである。ミステリというジャンルが「都市小説」という色彩をホームズの昔から湛えているわけなのだが、乱歩の小説の中に反映した都市の像を社会的に検証しているのが本書である。
評者だと本当に、ここらが青春だったね。80年代にはかろうじて窺うことのできた、本書が扱う建築の名残も今やすべて取り壊され、乱歩都市の記憶は本書の写真たちの中に色あせて「ある」だけのことだ。本書の評論の秀逸としては、「陰獣」を同潤会アパートと絡めて論じた箇所、「怪人二十面相」を少年たちの生活空間として論じた箇所、「二銭銅貨」と貨幣価値の話など、独立して楽しめる話題が多い。「屋根裏の散歩者」を論じてこんな感じである。

部屋を戸締りできるということは、探偵小説の主要なモチーフである密室が誕生したということである。翻ってみれば、登場人物のプライバシーを推理する小説が探偵小説であり、プライバシーが具体性を帯びたことこそ、探偵小説を生み出す基盤となったといえる。

ミステリもただ読んで愉しむだけでなく、さまざまな「楽しみ方」があることを示した「ミステリをどう論じるか」の方法論として画期的な評論だと思う。


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