皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
エラリー・クイーン論 飯城勇三 |
|||
---|---|---|---|
評論・エッセイ | 出版月: 2010年09月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
論創社 2010年09月 |
No.1 | 8点 | kanamori | 2010/11/21 21:09 |
---|---|---|---|
ファンクラブ会長の評論集だけあって、マニアックでディープ、かつロジカルな考察がぎっしり詰まっている。国名シリーズを読んだのが随分前なので、多少ついていけない所もありましたが。
主な論点は2つ。前半は、作家クイーンのミステリの特異性について述べている。 クリステイ、ディクスン・カーら「意外な真相」志向の作家と違って、クイーンは「意外な推理」を志向しているという考察はあまり目新しいとは思わないが、”読者への挑戦”は必ずしも犯人当てを求めているのではないという考察は面白い。 2つめの論点は、いわゆる「後期クイーン問題」。その中の「名探偵の存在を前提とした犯人が偽の手掛かりを用意した場合、作中探偵は真の解決に至れるか」という命題のほうを俎上にあげている。 笠井潔、小森健太朗両氏の説に真っ向から対峙した反論は、少々くどいけれど知的興奮を掻き立てざるを得ないロジックだ。結論の、”本格ミステリによる対人ゲーム”という主張には斬新さを感じました。 本書の性質上、クイーンの作品を中心に多くのネタバレ(ずばり犯人の名前まで)があるので、ある程度読み通しておく必要があります。というか、読んでないと「後期クイーン問題」の考察の面白さが分からないと思います。特に「ギリシャ棺の謎」を直前に再読しておくと本書の面白さが倍増するはず。 |